質問主意書

第85回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

宮城県沖地震及び地震災害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十三年十月二十日

藤原 房雄   


       参議院議長 安井 謙 殿


   宮城県沖地震及び地震災害対策に関する質問主意書

 去る六月十二日東日本を襲つた宮城県沖地震は、仙台市を中心に死者二十七名、負傷者一万余名を数えるに至り、各種の都市施設の損壊と商工・文教・農業等の施設被害により市民生活は多大の不安に脅かされた。
 なかでも住宅被害は今次災害の大きな特徴であり、軟弱な沖積層からなる住宅地等において地盤亀裂、崩壊の現象が頻発し、これによる被害戸数は十七万余戸の多きに達している。
 災害に強いといわれた杜の都でのこの事態は、近代化が進む都市における防災面の欠陥を物語る貴重な警鐘であり、これらの反省の上に、今後の防災施策に万全を期すことが緊要である。
 こうした視点から、次の諸点について政府に対し質問するものである。

一 仙台市の進展にともない、昭和三十年代に開発造成された緑ケ丘・旭ケ丘等の住宅地の亀裂・崩壊が顕著であつたが、これらは宅地造成事業を防災面から規制する「宅地造成等規制法」の制定以前の造成に係るもので、設計・施工の面で不備があつたと指摘されている。また、これらの地区はかつて亜炭を採掘した廃坑が各所にあり、これが今次災害に影響を与えたとも指摘されている。
 この際、全国的に防災規制が制度化される以前に造成された住宅地の実態調査を行うとともに、危険箇所について実効ある予防施策を講ずる等、住宅地の防災環境の整備に徹底を期す必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

二 宅地被害とともに、鉄筋・鉄骨の建築物をはじめ木造建築物、さらに建築附属物の傾斜・倒壊が、相次ぎ、地震にもろい建築行政の一面が如実に暴露された。これらは、軟弱地盤に建てられた建築物被害が大半であつたが、このことから建築基準法に基づく各種の技術基準を、防災面より強化すべきとの指摘が高まつている。特にこのたびの高層マンションの被害は初めての問題だけに政府の適切な対処と今後の対策が強く望まれている。耐震設計の技術基準を見直し、それらの既存建築物への遡及適用を図るとともに、建築申請の確認にあたつては敷地部分の地質との関連における耐震性の確認等、きめ細かな行政措置が必要と考えるが、政府の見解を伺いたい。

三 建設省の宮城沖地震被害調査報告によると、鉄筋コンクリート造りの場合、床を支える面積が大きい建物ほど、被害が多く出ていた。また、四十六年以前の建築基準法施行令に基づいて設計されたものの中には、柱の帯筋がいい加減で、施工技術上の手抜きが目立つた。
 鉄骨造りの場合は、柱の基礎部分や柱とはりとを接合している部分、ボルト部分に被害が多かつた。建築基準法施行令の基準には合つていても施工技術の甘さがさらけ出された、と指摘している。
 このような指摘に対し政府はどのような対策を考えているか見解を伺いたい。

四 丘陵地帯における住宅地の基盤亀裂、崩壊等の危険から、住民の生命、財産を保護する為の抜本対策は、対象が都市地域の故に権利調整と事業要件の整備に手間どり遅々として進んでいないのが実情である。
 集団移転の必要にせまられている地域の早期事業化とともに、ガケ地近接危険地域に係る住宅の円滑移転の実現の為、これら事業の採択基準を緩和し、都市地域においても緊急施策として対応し得る制度改正が必要と考えるが、政府の見解を伺いたい。

五 激甚な住宅被害の発生にも拘らず、損害保険会社による地震保険制度が、被害者救済の目的を果たしていない事態も、大きな問題となつている。
 すなわち住宅の倒壊等全損の場合のみが保険金支払いの対象となつている現行制度を改め、半壊及び土台崩れ等による部分損の場合も、保険金支払いの対象となるよう制度改正を図るとともに、この改正効果を宮城県沖地震に遡及適用する必要があると考えるがどうか。
 さらに住宅は、国民一人一人の一生の財産だけに、その被害対策として保険制度のみで救済できないならば新たな制度を考えるべきと思うが、政府の見解を伺いたい。

六 住宅被害はその多くが、個人災害であり、災害援護資金の貸付け制度は数少ない個人災害救済の措置だけに、被災世帯から大きな期待が寄せられている。しかし現行の貸付け基準では、住宅全壊の場合九十万円、半壊の場合五十五万円に過ぎず、住宅の復旧費を充足することは全く困難な実情である。このように、今次災害が個人災害の面で特に激甚があつたこと、経済情勢の変化が著しいこと等にかんがみ、災害援護資金の貸付け限度額の引き上げ、貸付け基準の緩和等について再度改正し、遡及適用を図ることが必要と考えるが、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。