質問主意書

第85回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

硫黄島の復興計画と旧島民の帰島に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十三年十月十四日

二宮 文造   


       参議院議長 安井 謙 殿


   硫黄島の復興計画と旧島民の帰島に関する質問主意書

 戦禍の地・硫黄島は、昭和四十三年六月二十六日、小笠原諸島の日本復帰に伴い、東京都小笠原村の一部として発足した。しかるに、戦後三十三年、復帰後十年の歳月を経た今日においてもなお、旧島民の生まれ故郷、墳墓の地へ帰りたいという素朴な願いはかなえられず、また、小笠原諸島復興計画においても、硫黄島は、その対象から除外されている。
 第二次世界大戦中の昭和十九年七月初旬、米軍の第一回小笠原諸島攻撃に際し、軍の命令により働き手を軍属として残し、急拠本土に強制疎開をせざるを得なかつた旧島民は、その後、異郷の地にあつて、苦しい生活を余儀なくされながらも、帰島運動を営々として続けている。
 帰島を熱望する旧島民の「未だ疎開中である私どもにとつて、今次の戦争は終つていない。日本国民として、日本の領土である生まれ故郷になぜ帰つてはいけないのか。私どもの故郷を想う気持をもう少し汲みとつてほしい」という訴えは理屈を超えて説得力を持つている。
この際、政府は旧島民の心情に想いを至し、早急に硫黄島復興計画を策定し、帰島の早期実現を図るべきであると考えるので、次の事項について、政府の明確な見解を求めるものである。

一 小笠原諸島復興計画は、昭和四十五年三月三十一日閣議決定の上、五箇年間の復興事業に着手し、その後、昭和四十九年六月十八日改定十箇年計画として実施期間を昭和五十三年度まで延長したが、この間、硫黄島の復興の方途については全く考慮されていない。政府は硫黄島の復興計画を策定するとともに、それを積極的に推進すべきであると思うが、その対象から除外してきた理由は何か伺いたい。

二 硫黄島復興計画策定のため、これまで政府はどのような実情調査を行い、また、その結果に基づきどのような検討を行つてきたのか。その内容及び硫黄島の将来計画に関する基本的見解を伺いたい。

三 硫黄島は遺骨の収集、不発弾の処理が未済であり、また、地盤隆起等のため、帰島が不可能であるとされているが、防衛庁の配慮により、昭和四十五年六月一日、一泊二日の島内視察を許された旧島民は「立入禁止区域は、米軍のローラン基地、防空壕(硫黄島防衛のための戦略基地で、その構築が膨大で、内部構造が迷路のため)で、その他は全島自由に歩き回ることができ、帰島は可能だ」と主張している。島の現況並びに政府の判断を明確に示されたい。

四 小笠原諸島復興特別措置法改正の際、附帯決議において、遺骨収集と不発弾処理等について早急に調査を行い国の責任において解決を図ることが望まれているが、遺骨の収集状況、残存遺骨数と今後の収集計画、また、不発弾の処理状況、推定埋没量、今後の処理計画はどうなつているか伺いたい。

五 疎開当時、硫黄島には千二百人程度が生活し、主産業は農業で、主にサトウキビ栽培に従事していた。現在、米軍、自衛隊が賃借している用地を除外しても約二千ヘクタールの耕作可能地が残るといわれており、政府の強力な助成のもとに、熱帯果樹又は花卉園芸の振興を図ることにより、生活が十分可能であると考える。農用地の造成及び農業経営の可能性として、どのような見通しを持つているか伺いたい。

六 漁業者の帰島、定着は可能であるか。また、硫黄島周辺の漁業資源の現況及び遠洋漁業基地としての開発の可能性について見解を示されたい。

七 旧島民の帰島が可能となつた場合、何人程度が収容できると考えるか。また、そのためには、住宅、飲料水、教育施設、診療施設等の生活基盤の整備が伴わなければならないが、どの程度の社会資本の投下を想定しているか。

八 旧島民の帰島に対する最大の関心は交通問題である。疎開当時の交通は、日本郵船株式会社の定期船が東京から年六便、父島からの離島航路が年十二回であつたことを考えると、今日、東京から父島まで週一便の定期船があり、今後、離島航路の再開により十分交通の確保が図れると思うがどうか。また、同島の開発に必要な交通輸送手段として、空港の整備、特に防衛庁硫黄島飛行場の民間機との共用の可能性、あるいは拡張の適否などについて、どのように考えるか伺いたい。

九 港湾施設の建設は技術的に可能か。その場合、港湾の規模はどの程度のものがよいと考えるか。また、その港湾は避難港、あるいは中継基地としての役割を果たせると考えるか伺いたい。

十 硫黄島の土地の用途区分及び土地所有権移転の状況はどうなつているか。また、土地の境界復元の見通しについて、どう考えているか伺いたい。

十一 硫黄島産業株式会社が所有している旧農地について、旧小作農家から「旧小作地に係る賃借権の帰属がはつきりせず、法的に確定して貰いたい」との強い要望があるが、これに対し、どう対処する考えか伺いたい。

十二 「小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律」の第十二条の規定に基づく土地の使用及び防衛施設庁が賃借している用地の損失補償費の年度別推移は、どうなつているか伺いたい。

十三 小笠原諸島における島別、年度別の地盤隆起の状況はどうなつているか。また、その原因及び危険度について、どう分析しているか伺いたい。

十四 硫黄島の観光資源、特に自然景観のレクリエーション的利用の将来見通しについて、見解を伺いたい。

  右質問する。