質問主意書

第84回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一号

内閣参質八四第二一号

  昭和五十三年六月二十七日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員秦豊君提出政府の核政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


参議院議員秦豊君提出政府の核政策に関する質問に対する答弁書

一について

1 今回の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)は、原子力開発利用の円滑な推進を図るためには、原子力発電所からの使用済燃料を再処理し、計画的かつ安全に処分するとともに、プルトニウム及びウランを回収して限られたウラン資源の有効利用を図ることが資源小国たる我が国にとつて不可欠であるとの考え方に立ち、使用済燃料の再処理を計画的に推進する体制を整備し、もつて自主的な核燃料サイクルの確立を図ろうとするものである。
2 米国は、核の拡散に対する懸念から商業用再処理を延期することとしており、関係各国に対してもこれに同調するよう期待している。しかしながら、米国もすべての再処理を否定しているわけではなく、例えば、昨年の動力炉・核燃料開発事業団の東海村再処理施設の運転開始に当たつては、日米間の建設的な話合いの結果、双方満足し得る合意に達することができた経緯もある。また、昨年秋、米国をはじめ、我が国、西欧諸国等の参加の下に、国際核燃料サイクル評価(INFCE)が発足したところであり、このような場を通じ、原子力平和利用と核拡散防止との両立を図る方策を探求するための国際的努力が進められているところである。
3 我が国としては、再処理をめぐる諸問題については、今後とも、米国をはじめとする関係各国との緊密な話合いを二国間ないし多数国間で行うことにより、国際協調の精神の下に、我が国の立場が十分に反映された形で解決を図りたいと考えている。

二について

1 改正法案では、再処理事業者の指定に当たつては、

(1) 再処理施設が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。
(2) 原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
(3) その事業を適確に遂行するに足りる技術的能力及び経理的基礎があること。
(4) 災害の防止上支障がないこと。

を確認した上で指定することとしている。
2 この場合、再処理の特殊性からみて事業者の乱立は、好ましくないので、許可制ではなく、指定制を採用したものであり、再処理事業を遂行する上で最も好ましい事業主体を指定することを考えている。
3 具体的には、電力十社を中心とした民間関連業界が一体となつて、再処理を目的とする新会社を設立することとしており、改正法案の成立後、速やかに設立手続に入ることとなつている。この新会社は、設立後直ちに土地選定に着手するとともに、再処理工場の建設に向けて基本設計の検討を進めることとしており、再処理事業の指定の申請は、この検討の終了後、行われることとなろう。

三について

1 原子力開発利用が平和の目的に限り行われることについては、原子力基本法において規定されているところであり、国は、常にこの精神に従つて行政を行うことが義務付けられている。
2 他方、日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団については、それぞれの設立のための法律において、原子力基本法に基づき設立されるものとする旨規定され、これに従つて所要の監督が行われているところであり、これら法人の行う業務は、国の監督の下に常に平和の目的以外に利用されるおそれがないように進められている。
3 平和目的確保のための具体的な規制は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づき行われているが、同法に基づく再処理事業の指定に当たつて、再処理施設が平和目的以外に利用されるおそれがないことの基準は、日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団の場合には適用がない。これは、三についての2で述べた理由によるものであつて、特にこれら法人について規制を緩める主旨ではない。
4 具体的に事業を行う段階での平和目的確保のための規制(報告徴収、立入検査等)は、特殊法人に対しても、また民間企業に対しても同じく適用される。

四について

1 昭和五十三年六月現在利用し得る最新のデータによれば、我が国の核物質保有量は、次のとおりである。

図 表 1/2

図 表 2/2

2 昭和五十年以降における我が国のプルトニウム年間生成量は、次のとおりである。

昭和五十年    一、一八九キログラム
昭和五十一年   一、八四八キログラム
昭和五十二年   一、三〇二キログラム
昭和五十三年     六三二キログラム(昭和五十三年四月までの生成量)