質問主意書

第84回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質八四第一四号

  昭和五十三年三月十四日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員前島英三郎君提出身体障害者にかかわる年金制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員前島英三郎君提出身体障害者にかかわる年金制度に関する質問に対する答弁書

一について

 障害年金は、障害による所得の喪失又は減少に着目してなされる年金給付であるので、老齢による所得の喪失又は減少に対し所得を保障する役割を持つ老齢年金や他の社会保障施策との関係を考慮しつつ、今後の年金制度の基本的な在り方を検討する中で、その望ましい在り方について考えてまいりたい。

二について

(1) 障害福祉年金は、年金制度の中にあつて拠出制障害年金を補完する経過的又は補完的な年金給付であると考えているが、障害者福祉対策は、年金、各種手当等の所得保障施策及び在宅援護、施設入所等の社会福祉諸施策が相まつて推進されるべきであるという観点に立ち、障害福祉年金の在り方についても今後検討を進めてまいりたい。
(2) 福祉年金の額については、昭和五十二年八月から、拠出制年金の物価スライド率九・四パーセントを上回る十一・一パーセントの引上げを実施したが、更に、昭和五十三年度において拠出制年金の物価スライド率七・六パーセント(見込み)を上回る十パーセントの引上げを図ることとしている。
 福祉年金の額の大幅な引上げは、拠出制年金とのバランス、財政上の制約からみて困難である。

三について

 年金制度においては、制度に加入している者の相互連帯により、一定の保険料拠出要件を満たし、かつ、一定の障害状態に在る者に、障害年金を支給することとしている。
 障害年金の支給要件については、その緩和に努めてきたところであるが、制度に加入していない者にまで救済措置を及ぼすことは、年金制度としては困難である。
 なお、障害者福祉対策として、在宅の重度障害者に対する福祉手当の支給を初め、障害者の必要に応じ、在宅援護及び施設入所の両面から各種施策を講じてきているところであり、今後ともこれら施策の充実を図つてまいりたい。

四について

(1) 障害福祉年金の本人所得制限については、昭和五十二年度において受給者の所得の動向を勘案し、夫婦世帯の場合、年収で百五十三万円の限度額を百六十四万四千円に引き上げたが、更に、昭和五十三年度においては、大幅に緩和し、夫婦世帯の場合、その限度額を年収で二百万二千円に引上げを図ることとしている。
(2) 御質問のように個々の受給者の生活の状況を厳密に考慮して給付を行う制度は、一定の要件に該当した者に所定の給付を行う年金制度にはなじみ難いと考える。現行の所得制限の方法を改めることは考えていない。
(3) 福祉年金は、本来、他の公的年金の支給を受ける者には支給しないことを建前としている。
 しかしながら、現実には他の制度から低額の年金しか受けていない者がいることを考慮し、一定の限度額までの併給を認めているところである。
 昭和五十三年度においては、恩給等の動向を勘案し、その限度額を三十三万円から三十七万円に引上げを図ることとしており、現行の併給制限の方法を改めることは考えていない。

五について

 生活保護の障害者加算は、障害者の特別の需要に着目して基準生活費の一定割合の額を加算するものであり、この加算額は基準生活費の引上げに連動して自動的に引き上げられる(昭和五十三年度においては十一パーセント引上げの予定)ことから、障害者の最低限度の生活の確保が図られているものと考えており、現行の加算方式を改める考えはない。