質問主意書

第84回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

寒冷地における義務教育施設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年十二月二十三日

藤原 房雄   


       参議院議長 安井 謙 殿


   寒冷地における義務教育施設に関する質問主意書

 戦後の学制改革から三十年を経た今日、学校教育において、なお多くの問題が見られる。なかでも学校施設は、毎年整備促進がなされているとはいえ、児童・生徒にとつて適切な教育環境というには、ほど遠い劣悪な校舎建物がいまだに使用されているのである。児童・生徒に、より良き教育環境の下で授業を受けられるようにすることは、父母をはじめとする国民の強い願望である。
 なかでも、酷寒な地域における義務教育施設は未整備のまま取残され、極めて劣悪な教育環境の中に児童・生徒達が放置されているともいえる状況下にある。酷寒期はもとより、酷暑期においても、児童・生徒が長時間授業を受けるにたえられない実情にある。このため未整備校舎改築の促進は、関係者からの強い要請となつているところである。例えば北海道の帯広市では、小学校の五十一パーセント、中学校の六十五パーセントが木造校舎であり、その老朽化の著しいものもある。このために教室の保温は極めて悪く、始業の約一時間三十分前にストーブに火を入れ授業に備えても、なお酷寒期には教室内の温度は氷点下十八度以上に昇らない状況であり、ときには授業開始一、二時間目は授業が行えないほどになるなど、その影響は深刻なものである。
 その対策として地方自治体では、木製窓枠のアルミサッシ化、教室・廊下等の二重張り、その他壁等の補修を行つているが、いずれにしても根本的な解決とはなり得ない場合が多いのである。したがつて適切な教育環境確保の見地にたち、酷寒な地域にあるこれら老朽木造校舎の速やかな解消・改築を図るべきであると考えるので、次の事項について、政府の明確な見解を求めるものである。

一 「寒冷地」(冬期平均気温零下五度以下をいう。以下同じ)の義務教育諸学校等(小・中・盲・聾・養護学校)の施設の実情について

(一) 「寒冷地」の校舎及び屋内運動場について

 鉄筋・鉄骨・木造それぞれの構造比率はどうなつているか、また木造のうち構造上危険な状態にある建物の割合について伺いたい。

(二) 「寒冷地」の木造建物においては、どのような暖房施設、設備が整備されているか伺いたい。また暖房効果を高めるために、二重窓、断熱材、窓のアルミサッシ化等の補修工事も行われていると思うがその実情を示されたい。
(三) 「寒冷地」の学校における冬期の室温の実情について伺いたい。とくに木造建物の室温の状況、また(二)のような補修工事を行つた木造建物の室温の状況も伺いたい。また暖房を行つても室温が氷点下以下の学校の状況及びそうした環境が子供の学習、教育、健康に与える影響についても見解を示されたい。

二 「寒冷地」の学校の望ましい室温について

(一) 「寒冷地」の学校における冬期の室温は、どのくらいが適当と考えるのか、また最低限どのくらいに保つべきと考えているか伺いたい。
(二) 「寒冷地」に学校を建築する場合、どのような配慮をすべきと考えているか、また適切な学習環境を確保するために、学校施設設計指針の改正を行うべきと思うが見解を伺いたい。

三 「寒冷地」の義務教育諸学校等の施設の改善策について

(一) 危険建物の改築について

(1) 昭和四十八年度から五十二年度までの第四次五か年計画の結果をみると、改築の事業量よりむしろ新たに構造上危険と判定される面積の方が多く、危険面積は増加の傾向にあると思われる。そこで第四次五か年計画の内容とその評価を伺いたい。
(2) 現在、構造上危険な状態にある建物の面積はどれくらいか、またそれらについては速やかに解消を図らねばならないが、昭和五十三年以降の新しい年次計画の内容を示されたい。
(3) 耐力度四五〇〇点以下の構造上危険な状態にある建物の改築を速やかに行うとともに、国会でもしばしば論議されているように、構造上危険な建物と判定する耐力度点数の引き上げを図るべきと思うが見解を伺いたい。
(4) 構造上危険な状態にある建物と判定された場合、「寒冷地」の建物を優先して改築の対象とする等の配慮をすべきと思うが見解を伺いたい。
(5) 改築に対する国庫負担割合の引き上げについては、衆・参両院の文教委員会(第七十一回国会)の附帯決議でも実現すべきとされているが、これについて見解を伺いたい。
(6) 現在、国庫負担の対象となる改築は、構造上危険な状態にある建物に限られているが、子供により良い教育環境を保障するという立場から、新たに、寒冷、酷暑、騒音その他の公害等に悩む学校で、建物の改築によらなければ基本的な解決が図られない場合についても、国庫負担による改築の対象として加えることを検討すべきと思うが見解を伺いたい。

(二) 「寒冷地」の建物の新・増・改築を行う場合には、必要面積の算定、集中暖房施設の面積、建築単価等について配慮していると思うが、それらの現状と今後の拡充策を示されたい。

(三) 建物の補修について

 暖房効果を上げるための応急的な措置として地方自治体の負担で、断熱材、二重窓、窓のアルミサッシ化、換気装置等の工事が行われているが、これらに対する国庫補助の実現について見解を伺いたい。

(四) 燃料費等の補助について

 燃料費や暖房施設の更新費については、地方交付税における寒冷補正の際に積算されているが、その現状と拡充策について、またそれらに対して国庫補助制度を新設することについて見解を伺いたい。

  右質問する。