質問主意書

第82回国会(臨時会)

答弁書


第八十二回国会答弁書第一七号

内閣参質八二第一七号

  昭和五十三年一月十三日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員秦豊君提出福田内閣による成田空港の強行開港に係わる諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出福田内閣による成田空港の強行開港に係わる諸問題に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 新東京国際空港(以下「新空港」という。)は、増便等に対処し得なくなつている東京国際空港(以下「羽田空港」という。)の現状及び資金の投資効果の観点からみて早急に開港させる必要があるため、その開港を図るための施策を推進してきたが、円高対策についても、当面する重要な課題として対処しているところである。
(2) フロート下での相場形成は原則として市場の需給にゆだねることとしているが、予想を上回る我が国国際収支の黒字及び米国貿易収支の赤字などを反映して今日の円高となつたものである。
(3) 為替レートの推移は予測し得るものではないが、常に、相互依存を深める国際経済の中で、国際的視野の下に、経済運営を図つているところである。
(4) 輸出産業特に輸出関連中小企業に対する影響があり、また、輸出数量の減少等を通じ、投資活動、経済成長等にデフレ的影響をもたらす懸念がある。
 一方、物価面に対する影響をみると、卸売物価は、円高により我が国の輸入の大宗を占める原材料等の価格の低下もあつて、極めて落ち着いた状態で推移している。このような卸売物価の鎮静化は、漸次、消費者物価へも波及し、その一層の安定に寄与するものと考えられる。
(5) 最近の円高の動きの中には、一部思惑的なものもみられるが、このような円高相場は基本的には我が国の国際収支が引き続き堅調であり、他方、米国の景気が比較的好調に推移していることとともに、石油輸入の増大もあつて、その貿易収支はかなりの赤字となると予想されることを反映したものであると思われる。
(6) 円相場は為替の需給関係によつて決まつてくるものであり、外国からの不信の表明というようなものではないと考えられる。
(7) 我が国としては、フロート下での相場形成は、原則として市場の需給にゆだねることとしているが、相場の乱高下は避け、急激な変動をなだらかにしていくこととしている。これは国際的な合意に基づくものである。
(8) 政府は、対外均衡を図るため、基本的には着実な景気の回復を通ずる輸入の拡大を図る外、東京ラウンド交渉への積極的取組等一連の対外経済対策を推進することとしている。
(9) 景気対策、対外経済対策については、数次の経済対策閣僚会議において、関係省庁の緊密な連絡の下に、その検討、推進を図つているところである。
(10)及び(11) 景気の着実な回復を図ること等により対外均衡の回復を図り、急激な円高を回避することを、内政最優先の課題の一つとして取り組んでいるところであり、これまでも、「総合経済対策」や「対外経済対策」を講じ、更に、先般、「十五か月予算」の考え方の下に、公共事業等に重点をおいた本年度第二次補正予算及び来年度予算の編成を行つたところである。
(12) 現在の羽田空港が航空需要に対応しきれなくなつていること、及び新空港への既往の投資が長い間活用されるに至つていないことからみて、新空港を早期に開港する必要があるので、そのために必要な措置を進めてきたところである。

二について

(1) 現在継続中の日米航空協定の改定交渉(以下「本件交渉」という。)が長期にわたつている原因としては、本件交渉が締結以来四半世紀を経過した現行の航空協定の抜本的な見直しを行つた上これを改定しようとするものであることが挙げられるが、更に、現在、国際航空体制が世界的に過渡期にあり、チャーター便の運営に関する政策等の在り方につき各国で検討がなされている状況にあることもその一因となつている。
 これまでの交渉を通じ、日米双方の立場は明確になつてきているが、なお双方にかなりの意見の隔たりがあり、今後も引き続き粘り強く交渉を行つていく考えである。
(2)、(7)及び(9) 現下の日米経済関係をめぐる経常収支等の問題と本件交渉との間には、直接の関係はなく、米側も本件交渉において、このような点を問題にしていない。
(3) 本件交渉は我が国が申し入れ、米国がこれに応じたものであるが、米国としては、この機会にチャーター便の運営に関する包括的な取極の締結及び低運賃の導入を実現したいとの考えをもつているようである。
(4) 昭和四十一年度から昭和五十年度までの各年度の日米間定期路線における旅客数等は、次の表のとおりであり、供給過剰傾向は改善されつつある。

図 表

(5)及び(6) 日米航空関係の現状は、米側が米国内十一地点から日本に乗り入れているのに対し、日本側は、米国内七地点にしか乗入れを認められておらず、また、米側が日本に乗り入れる場合には何ら制限なく日本以遠に運航できるのに対し、日本側が米国に乗り入れる場合には米国以遠への運航につき諸種の制限が設けられている。更に、輸送力についても、米側企業が我が国企業の輸送力を大幅に上回る輸送力を提供しており、実質的に不均衡な状態にある。このため、我が国としてはこのように米側に有利となつている航空権益の不均衡を是正することを本件交渉の目的としている。
(8) 昭和五十二年十二月一日において、日本航空が羽田空港から米国(ハワイ、グァム及びサイパンを含む。)に乗り入れている定期便の週間便数は五十九便であり、また、これを含め、日本航空が同空港から諸外国に乗り入れている定期便の週間便数は、百三十六便である。
(10) 対外均衡に資するため、基本的には、景気の着実な回復とこれによる輸入の拡大により対処しているところであり、御指摘の二者択一の問題になつているわけではない。
(11) 羽田空港における便数制限は、航空交通のふくそう緩和を図り、その安全を確保するために行われているものであり、この措置により増便ができない等の状況は、日本航空についても外国航空会社と同様である。
(12) 我が国は日米間に存する航空権益の不均衡是正を目的として本件交渉を行つており、新空港の開港はこれと直接の関係はないと考えている。
(13)から(15)まで及び(17) 新空港の使用料金については、新東京国際空港公団(以下「公団」という。)において、独立採算制を前提として算定し、現在、IATAと交渉を行つている段階であり、その早期解決に努力しているところである。
 なお、これまでの交渉過程において円高が問題とされたことはないと聞いている。
(16) 特別着陸料は公共用飛行場の施設の使用料の概念の範囲に含まれず、その設定は運輸大臣の権限に属しないことなどを主張して支払を拒否しているものである。
(18)及び(19) 新空港は、昭和五十三年三月三十日に供用を開始すべく諸般の準備を進めているところであり、供用開始の期日を変更することは考えていない。
 「なお、一般論としていえば、航空情報は、航空機の乗組員に対し、航空機の運航に必要な情報として提供するものであるから、いつたん提供した航空情報の内容に変更があつたときは、その変更内容に関する情報を提供すべきことは当然である。

三について

(1)及び(3) 昭和四十一年度から昭和五十一年度までに新空港の建設のために投下された資金の額は、国の直轄事業費約四十九億円、公団の建設費約二千五百億円である。この投下資金により創出された有効需要の総額は具体的には把握していないが、投下資金が民間からの必要な資材の購入等を通じて経済活動に貢献していることは明らかであると考える。
(2) 昭和四十一事業年度から昭和五十一事業年度までの各事業年度の政府出資金等の額は、次の表のとおりである。

図 表

(4) 新空港は、地元等の理解と協力を得て、昭和五十三年三月三十日に開港することが決定されているが、今後も引き続き、地元の意向も十分配慮の上、地元住民対策、騒音対策、アクセス対策等の諸施策を鋭意推進することとしている。
(5)から(7)まで 昭和三十年代に入つて始まつたといわれている我が国の高度経済成長の過程において生じた臨海工業地帯の発達、エネルギー資源等の海外依存度の上昇、第二次産業製品の増大、所得水準の向上等に伴う旅行需要の高度化及び多様化等により鉄道輸送の特性を発揮できる分野が縮小するに至つた。
 このような変化に対して国鉄が適切に対応し得なかつた主要な原因としては、鉄道特性を発揮できる大量輸送の分野を中心とした国鉄の効率的な輸送体系の形成が十分に行われなかつたこと及び争議行為の多発等によつて輸送の安定性を欠いたことが挙げられる。
(8) 高度経済成長に伴う所得水準の向上等により国民が要求する交通サービスの水準が高度化し、航空輸送への志向が強まる中で、航空運送事業は、これに対応すべく機材の大型化、ジェット化等を進め、需要動向の変化に対応してきたものと考える。