質問主意書

第82回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質八二第八号

  昭和五十二年十一月十八日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員戸叶武君提出工業所有権制度の国際化に伴う準備状況及び在外派遣体制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員戸叶武君提出工業所有権制度の国際化に伴う準備状況及び在外派遣体制に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 主要会議については、次の表のとおりである。

図 表

 優先権主張を伴う我が国から外国への出願については、次の表のとおりである(表中は件数)。

図 表

 出願に要する経費は、各事項ごとに各国で同一でなく、また、願書のページ数、内容等により、国際手数料も一定しないため比較できない。条約に基づく出願件数については、近年における我が国から外国へ対してなされた出願件数等にかんがみ、昭和五十三年度においては、同年十月から翌五十四年三月の半年で千五百件程度と予想している。アメリカ、イギリス、西ドイツについては、我が国からの問い合わせに対し、アメリカが、当初四千五百件程度と回答している外は回答は得られず、我が国において、これらの国について予想することは、現在のところ困難である。
 一九六八年のパリ同盟執行委員会において、主要署名国が特許協力条約の発効に必要な経費を分担することとされ、その額については当該署名国においてなされた出願件数等が全署名国のそれらに占める割合等に基づいて定められた。この結果等に基づき、仮に、来年十月に我が国が加盟した場合、我が国の特許協力同盟に対する来年の支出額は三十二万四千九百九十三スイスフランとされている。一九七八年におけるアメリカ、イギリス及び西ドイツの支出額はそれぞれ三十五万三千百九十五スイスフラン、十六万九千十二スイスフラン及び二十三万千五十五スイスフランである。
(2) ストラスブール協定には、本年八月一日現在、二十四か国が加盟し、各国とも技術の交流を促進するため、共通の特許分類を使用している。このうち、西ドイツは、国際特許分類のみを使用し、アメリカ及びイギリスは、自国特許分類と併用している。また、ソヴィエト連邦は、詳細は不明であるが、同国の発行する公報に国際特許分類を付与している。
 出願公開制度及び審査請求制度については、審査要処理期間の短縮及び未処理案件の累増を防止するため、既に東西ドイツ及びオランダにおいて採用されている。
 特許協力条約への加盟は、技術の国際交流の促進、発展途上国に対する特許制度の分野での援助等国際協力の拡充に資するとともに、我が国からの外国出願を容易化して外国における特許権の確立を促し、もつて技術立国及び貿易立国としての我が国の発展に資するものと考える。
(3) 工業所有権審議会制度改正部会中間報告(以下「中間報告」という。)は、国際予備審査について規定する条約第二章につき特許庁の事務負担、国際的動向等を考慮した場合、当面留保することもやむを得ないと考える、としているが、その後、発展途上国への審査協力という観点から条約第二章の重要性が世界的にクローズアップされてきたことから、現在、工業所有権審議会において再検討が行われている。
(4)(イ) 条約第二章についてアメリカは留保しており、イギリス、西ドイツは留保していない。ソヴィエト連邦については、現時点では批准書を寄託していないので、どう対応するか不明である。
 現在アメリカが留保している理由は、国内の審査システムと国際予備審査システムとの相違等のためといわれている。なお、最近では、アメリカは第二章留保の解除を検討していると伝えられている。
   (ロ) 中間報告の当該箇所の意味するところは御趣旨のとおりである。
   (ハ) 出願審査の請求料は、当初、特許庁の収支見通し、審査のコスト、諸外国の例等を総合的に勘案し、一件につき八千円と定められたが、その後の物価変動等を勘案し昭和五十年から一件につき一万六千円に引き上げられたものである。
   (ニ) 中間報告が取りまとめられた後、主要国の特許庁及び世界知的所有権機関に対し調査を行つているところである。
   (ホ) 中間報告で示されている結論を踏まえて、更に所要の検討を続けているところである。

二について

(1)(イ)語学等を中心として、内部研修や外部委託研修の活用を図つてきたところであり、昭和五十三年度においてもその必要性を勘案し、引き続き適切に対処してまいりたい。なお、昭和四十九年度から五十一年度までの工業所有権研修所予算は、次の表のとおりである。

図 表

 特許庁職員の在外研修実施については、従来から各種政府留学制度等の活用により、積極的に推進しているところであるが、今後とも各種制度の一層の活用につき検討してまいりたい。
   (ロ) 関係省庁間で現在協議中である。

(2)(イ) 各国は、その属する同盟等に対する分担金の支払を通じて間接的に世界知的所有権機関の経費を負担しているが、現在、同盟等に対し各国が支払うこととなつている一九七七年における分担金総額は、次のとおりである。

西ドイツ      八十七万千六百十スイスフラン
日本        八十六万五千四百九十   〃
イギリス      八十二万二千七百三十四  〃
アメリカ      八十一万三千五百六十七  〃
フランス       七十万二千八百六十   〃
ソヴィエト連邦   六十六万八千五百五十二  〃
カナダ       四十六万四千七百十三   〃
スウェーデン     四十万五千三百三十一  〃
オランダ      三十八万五千百二十三   〃
オーストラリア   三十六万九千九百九    〃

 各国が支払う分担金の算出方式は、例えばパリ同盟については、パリ条約において定められた当該国が属する等級の単位数が同盟加盟国の単位数の総数に占める割合により定められる。
   (ロ) 本年六月三十日現在における職員の比率は、次の表のとおりである。

図 表 1/2

図 表 2/2

   (ハ) 我が国から派遣される正規職員数に増加があるか否かについては、現時点では不明である。

(3) 諸般の情勢を踏まえ、その必要性について検討したい。