質問主意書

第82回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

信濃川河川敷問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年十一月二十五日

上田 耕一郎   


       参議院議長 安井 謙 殿


   信濃川河川敷問題に関する質問主意書

 信濃川河川敷の廃川敷処分と廃川敷地の公共利用問題は、本八十二臨時国会でもくり返し問題となつてきた。私の要求により参議院建設委員会に建設省の調査報告書「信濃川河川敷の廃川に関する現地調査について」が、十一月二十一日付で提出され、また私も十一月十六、十七、十八日にわたり長岡市役所、新潟県庁、北陸地建、長岡工事事務所などで現地調査をおこなつてきた。この問題の解明と解決は、国会の審議過程からいつても、世論の動向からいつても、緊急の課題となつている。
 以上の観点から次の諸点について質問する。

一 建設省の現地調査報告について

1 報告書によると、室町産業分の土地について、長岡市は「十分検討のうえ、すみやかに回答したい」とあり、新潟県も「なお検討のうえ、すみやかに県の意向を申し上げたい」とある。市と県の回答はいつ頃までにおこなわれるのか。
2 十一月二日の参議院決算委員会で、国あるいは県、市で全部公共用地にせよとの私の質問にたいし、園田官房長官は、「いまの御意見も参考にして検討いたします」と答えた。県、市の回答が消極的であつた場合、県、市にたいする行政指導をふくめ、どのような措置をとるつもりか。
3 十一月二日の参議院決算委員会で、坊大蔵大臣は私の質問にたいし「大蔵省としては、最も公共性の方向にこれを使つていくということにしたい」と答え、田中理財局長は「行政目的があつて特定の省庁においてその土地の利用計画が立てられ、予算要求としてその土地の購入費が出てきた場合」国が買うことができると答えている。建設省の行政財産として公共利用計画をたてることを考えているか。

二 建設大臣の廃川処分告示について

1 建設省は、今回の廃川敷処分の重要な口実として、長岡市の小林孝平市長の要請をつねにあげてきた。ところが小林市長がおこなつた十月二十七日の要請の際、その理由としてあげている各派代表者会議の了承、および町内会長会議の圧倒的支持は事実に反することが明らかとなつている。しかも今回の私の調査により、市長が提出した別添資料「信濃川河川敷用地の利用計画書」の記述にも重大な虚偽が含まれていることが明らかとなつた。
 利用計画書には、「長岡市は信濃川河川敷について、これが長岡市の都市計画上極めて重要な用地でありますので、その利用について、かねてから検討して参りました」とあり、「その結果……次のようにこれを利用して参りたいと計画しております」として、計画事項を列記しているが、十一月十七日、日本共産党調査団にたいする皆川保広長岡市企画開発部長の言明によれば、「河川敷問題は市長と助役だけで話し合つており、担当部長はなんら検討したことがないし、計画についても相談を受けていない」といつている。
 利用計画書の記述が事実かどうか調査する必要を認めないか。
2 事実に反する小林市長の要請をいれて、建設大臣が専決処分をおこなつた責任をどうとるか。
3 また建設大臣は、国会答弁で長岡市の町内会長会議の支持をくり返し専決処分の理由の一つとしてあげてきた。ところが、十一月二十五日の答弁で大臣決裁は十月二十一日であつたことが明らかとなつた。町内会長会議は翌十月二十二日であつて、その支持なるものをもつて決裁理由とすることは物理的に不可能である。大臣答弁は国会をあざむいたものではないか。

三 露堤締切りにからむ疑惑について

1 信濃川河川敷の露堤を連続堤に変更した昭和四十三年七月の決定とその経過については、もつとも大きな疑惑が提起されてきたところである。十一月十七日に長岡工事事務所の忠田稔副所長、十一月十八日に北陸地建の近藤静夫河川部長は、日本共産党調査団にたいし、四十三年七月に連続堤への変更が決定し、四十三年度に延長工事が開始された以上、前年の四十二年六月項までに長岡工事事務所から北陸地建にそのための概算要求が出され、建設省に提出されていたと思うとのべた。したがつて当然、変更のための技術的検討は、少くとも昭和四十二年当初頃から開始されていたであろうと認めた。だとすると、昭和四十一年十月二十日の「本堤にする意思はない」との橋本建設大臣の答弁の直後に、大臣答弁に反する締切り計画の技術的検討が現地ではじめられたことになる。この経過は、これまでの政府答弁をくつがえすものであり、変更経過について新たな疑惑を深めたものと思うがどうか。経過を明らかにしていただきたい。
2 長岡工事事務所、北陸地建での調査では、行政管理庁の行政監察で問題となつた「原議」および「伺い文」の紛失は、ほとんどありえないことが明らかとなつた。昭和五十一年六月三日の衆院予算委員会小委員会に提出された報告書のなかで、建設省は、文書紛失の理由について、「計画書の頻繁な使用によりおもて紙が脱落したこと及びおもて紙の部分を別綴にし、その別綴が紛失したことによるものと推定され、故意に毀棄したものとは考えられない」という見解をのべている。しかし、現地での証言によれば、おもて紙は、頻繁な使用にたえる厚紙の表紙をつけて綴じ込まれており、破れた場合には裏打ちするほど重視されていること、おもて紙だけを別綴することはありえないということである。建設省の弁明は、根拠がないが、どのような根拠で、あのように推定したのか。

四 予算委員会小委員会の結論について

 十一月二日の参議院決算委員会、及び十一月二十五日の参議院建設委員会で、建設大臣及び河川局長は、信濃川河川敷問題をめぐる行政管理庁と建設省の見解不一致問題にかんする衆院予算委員会小委員会の審議について、「建設省としては結論が出たと考えている」旨の答弁があつた。しかし、衆院予算委員会にもうけられた小委員会について、一省庁が結論をくだす権限をもつていないことは、三権分立の原則からも、あまりにも当然のことである。しかも、昭和五十一年十一月二日衆院予算委員会において白濱仁吉委員長はつぎのように報告している。
 「この際、御報告をいたします。信濃川河川敷問題につきましては、前国会において小委員会を開き、調査をいたしました。さらに今国会においては、理事会でその取り扱いについて協議いたしたのでありますが、結論を得るに至りませんでした。」国会として結論が出ていないことは、委員長報告によつて明白なことであり、建設省の答弁は、憲法によつて「国権の最高機関」と定められた国会の権限を無視した、重大な越権行為であると思うがどうか。

  右質問する。