質問主意書

第82回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一七号

福田内閣による成田空港の強行開港に係わる諸問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年十一月二十五日

秦 豊   


       参議院議長 安井 謙 殿


   福田内閣による成田空港の強行開港に係わる諸問題に関する質問主意書

 福田赳夫首相が成田開港をしやにむに急ぐ理由として挙げておられた数千億円の投資を生かすこと及び「過密に起因する羽田空港の非常事態」を解消することの二つの要因が政策として妥当であるかどうかについて、これを質すため二度にわたり質問主意書を提出したところ、内閣答弁書(内閣参質八〇第五一号及び同八一第五号)の送付を受けた。しかし、福田首相の成田開港強行策が手続き及び要件なども含め適正かつ妥当であるかについて、なおいささかの疑念なしとしない。
 そこで以下、先の二つの答弁書を前提として、最近の我が国をめぐる経済情勢をふまえ、再度福田首相の御見解を賜りたい。

一 経済が政治の根底にあるという原則を忘れ、成田空港建設ごときにうつつをぬかしたためか、昨年末に福田内閣が成立してから、我が国の国際収支が黒字基調の中で増加の一途を示し、円為替相場も昨年末の一ドル二九三円からひたすら上昇をつづけ、とりわけこの二ケ月の間に二六〇円から二四〇円へと急騰している。

(1) 何故適正な円高対策を怠り、内政最優先課題などとして、成田開港強行騒ぎに夢中になつたのか。
(2) 福田内閣成立時に、今日の円高の事態は予測し得なかつたのか。しからば何故か。
(3) 右において予測し得たとするのであれば、どのような対策(政策)が「強行」され、かつ失敗したのか。原因とともに示されたい。
(4) 現下の円急騰は、国内経済にどのような影響をもたらすとしているのか。
(5) 右の円急騰の原因は何か。その全てを項目別に示されたい。
(6) 円急騰ということは、福田内閣の経済政策に対する外国からの不信の表明、対日不信の表明ではないのか。
(7) 円急騰を手をこまねくしかすべもなく、放置してきたことは、我が国の国際的な位置にどのようなディメリットをもたらしたのか。
(8) 右の円急騰の原因を解消するための対策(政策)として実現可能なものにどのようなものが用意できるのか。(4)の項目毎に示されたい。
(9) (8)の円急騰対策をどのような形で実行するのか。
(10) 円高対策は内政問題ではないのか。何故円高対策を内政最優先の課題とはしなかつたのか。
(11) 内閣改造がいわれているが、内閣改造により円急騰問題が解消できるとするのであれば、この段階まで内閣改造をせず、円急騰を放置した理由は何か。
(12) 例えば、成田開港ごときもののために「金にいとめはつけさせない」などの大みえしかきれない感覚の持主では、大蔵大臣という国の経済・財政に係る要職がつとまらないということなのか。それにしてもこれは単に大蔵大臣だけが負うべき責任ではなく、大蔵省全体が負うべき責任ではないのか。

二 円高対策と航空政策について

(1) 現在継続中の日米航空協定の改訂交渉が回を重ねても成立せず、行きづまつている原因は何か。
(2) 現下の日米の経済関係は、日米航空協定の改訂交渉にどのような影響を与えているのか。
(3) 日米航空協定を改訂せんとする米国側の意図はどういうところにあるのか。
(4) パンアメリカン航空会社が一部の航空料金のダンピングを実施せんとしているが、太平洋横断線は供給過多の状態にあるのか、合せて過去十年間について太平洋横断線の需要と供給の関係につき示されたい。
(5) 日米航空協定を改訂せんとする我が国の意図はどういうところにあるのか。
(6) 日米航空協定を改訂せんとする我が国の意図の一つに不平等性の是正ということがあるのであれば、その不平等の具体的な内容を示されたい。
(7) 日米航空協定にみられる不平等性を是正することは、米国に対する輸出超過を是正することにつながるとしているのか。しからば、その理由は何か。
(8) ところで現在羽田空港から日本航空が北米大陸及びハワイ・グァムなどへ乗り入れている定期便の週間便数及びこれを含め日本航空が諸外国へ向け乗り入れている定期便の週間便数の最近の認可実績を示されたい。
(9) 日米航空協定の改訂交渉の中で、米国は我が国の対米出超を問題としているのか。そうであるならば、我が国はこれにどのように対応しているのか。
(10) 対米出超に対処するのに、農産物の緊急輸入によるのか、それとも例えば日本航空の旅客・貸物を米国の航空会社にゆずりわたすのかの二者択一の場合、いいかえれば、対米出超の帳じりを農民にさせるのか、日本航空に貢献させるのかの二者択一を仮定した場合、政府はどちらをとるのか。その理由は何か。
(11) 羽田空港における便数制限が、結果としてであれ、日本航空の権益を守つていたということが全くなかつたといえるのか。
(12) 成田開港は、日米航空協定の改訂交渉でどのような意味をもつのか。メリットとディメリットの両面を示されたい。
(13) 現在継続中のIATAとの成田空港関係の空港使用料等に関する料金交渉が回を重ねても成立せず、行きづまつている原因は何か。
(14) 円急騰はIATAとの右交渉にどのような影響をもたらすか。またその理由は何か。
(15) 成田空港関係の空港使用料等の料金は、新東京国際空港公団(以下「公団」という)の独立採算ベースを前提として決定されるべきものなのか。またそのようにして決定されるのか。
(16) IATA加盟航空会社の中で、特別着陸料の支払いを拒否している会社があるが、どのような理由によるのか。
(17) 成田開港強行騒ぎの中で、仮りに開港日時の決定をそれなりの「儀式」で行つたとして、その開港日時迄にIATAとの料金交渉が成立しなかつた場合、日本航空だけで成田開港を強行するのか。
(18) 航空法九十九条に基づくNOTAMで成田開港の予定期日を通知しても、その後再びNOTAMで変更通知することは、何ら違法性は発生しないのか。不法性についてはどうか。
(19) NOTAMで指定した成田開港日時を再びNOTAMで、例えば、無期延期と変更するのは、日本の国際的な位置にどのような影響を与えるか。

三 成田空港建設に係わる投資効果について

(1) 福田首相のいわゆる「投資が生かされないまま眠つている」という数千億円の国費の内訳を示されたい。
(2) 各年度の決算に基づき、昭和四十一年度から昭和五十一年度に至る公団の各年度毎の支払い金利、長期負債に係る償還金及び資本金(政府出資金)は、それぞれどれ程か。
(3) 現在迄に投下された成田空港建設のための資金が有効需要を創出して経済活動に貢献していることは明らかであると答弁されるが、

(イ) 現在迄に創出された右有効需要の総額はどれ程か。
(ロ) 右有効需要の創出が経済活動にどのような貢献をなしたかを具体的に示されたい。

(4) 成田空港の建設については、位置を決定するに際しての閣議決定「新東京国際空港位置決定に伴う施策について」等に基づき、地元住民対策、騒音対策、アクセス対策等の諸施策についても十分な配慮を払い、推進してきたと答弁されるが、

(イ) 「十分な配慮」とは、誰れからみて「十分な配慮」なのか。地元民からか、地元自治体からか、その他誰れからか。
(ロ) 推進してきた右諸施策が完了した段階で成田開港を実現するという意味なのか。
(ハ)それともどの程度完了した段階で開港とするということなのか。その場合「十分な配慮」はどうなるのか。

(5) 国鉄の経営が悪化した主要な原因の一つとして、高度経済成長に伴う経済社会構造の変革により生じた輸送構造の変化に適切に対応し得なかつたことを挙げられているが、

(イ) 高度経済成長は、何時から始まり歴史的にどのように展開してきたのか。
(ロ) 経済社会構造の変革の具体的内容を示されたい。
(ハ) 輸送構造の変化の具体的な内容を示されたい。

(6) 右(5)において、国鉄が輸送構造の変化に適切に対応し得なかつた原因は何か。その全てを項目別に具体的に示されたい。
(7) 右(6)の各原因に対する責任の所在はどこにあるのか、それぞれの項目毎に示されたい。
(8) 右(5)、(6)、(7)について、航空運送事業は、輸送構造の変化に対応し得ていたのか。しからば何故か。

  右質問する。