質問主意書

第82回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

日本硝子(株)の不当労働行為ならびに団体交渉拒否等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年十一月十一日

目黒 今朝次郎   


       参議院議長 安井 謙 殿


   日本硝子(株)の不当労働行為ならびに団体交渉拒否等に関する質問主意書

 労働者の団結権、団体交渉権、争議権は、日本国憲法及び労働組合法により基本権として保障されている。しかし今日、多くの労働争議が労働基本権の保障をめぐつて争われており、その解決が遅れる原因は、不当労働行為救済制度が十分に機能し得ないためと考えられる。
 東京都中央区銀座七の九の二〇 日本硝子(株)と総評化学一般労連全日本硝子製壜労働組合(以下全硝労という)日本硝子労働組合連合会との間に於ては、長年にわたつて紛争が続き、特に昭和四十八年一月、全硝労・小野委員長を解雇したのをはじめ、全硝労日本硝子労働組合連合会との団体交渉拒否、同労連加盟組合員に対する賃金、昇格の差別を行つており、これらの事業案は地方労働委員会より、それぞれ救済命令が出されているにも拘わらず、会社側はこれに従わず再審申立てを行つて、いたずらに事態の解決を長びかせるのみか、益々悪化の傾向をみせている。かかる状態に至つたことは、同社の筆頭株主である野村証券(株)グループが日本硝子(株)に対して役員を送り込み、合理化を強行せんとして労働組合の分裂、破壊策動を行つている結果であり、全硝労が野村証券(株)に対し話合いを求めても、同社はこれを拒否している。この状態を放置するならば、今後最悪の事態の発生も憂慮される。
 よつて次の事項について質問するので、政府の考え方を明示されたい。

一 野村証券(株)グループが保有する日本硝子(株)の株は何%か。

二 株主として経営陣に役員を派遣した場合は、その企業運営について野村証券(株)としても責任を有するものと解するが、監督官庁の見解はどうか。

三 融資の条件として企業に合理化を強要することは、昭和五十二年十月十九日参議院予算委員会におけるわたしの質問に対する石田労相の「少くとも銀行等が金融をいたします場合に人減らしを条件として金融をするといううわさをちよいちよい聞きます。(中略)少くともそういうことのないような通牒は発するつもりでございます。」の答弁の精神にも反するものと理解するが、大蔵省、労働省の見解はどうか。またかかる事態に対してはどのように対処する方針か。

四 野村証券(株)より派遣された役員は下部職制を指揮して、全硝労所属の労働者に対し、野村証券(株)よりの融資停止による賃金遅配をほのめかしつつ、金硝労脱退を強要する不当労働行為を行つた。かかる行為について大阪府、神奈川県の各地方労働委員会が不当労働行為として救済命令を行つたにも拘わらず、その命令を実行しないことは、労組法第二十七条第五項に違反するものと考えるが、労働省の見解はどうか。またこれに対する制裁はどうか。

五 日本硝子(株)は、全硝労日本硝子労働組合連合会との団体交渉に於て、地労委、中労委等に於て係争中の事案については団体交渉の対象外として交渉を拒否しているが、むしろ自主交渉に於て紛争を解決することが、正常な労使関係を作るための第一義的な方策であるにも拘わらず、あえて第三者機関に判断を求めつつ紛争を続ける無知、無能な経営者に対して、労働省は如何なる行政指導を行う考えか。労組法第七条第二号に抵触するものと解するがどうか。

六 地方労働委員会に於て、証言したことの故をもつて解雇することは不当であり、その結果、昭和五十年六月二十七日、神戸地裁尼崎支部より「寺井組合員の地位保全」の仮処分命令が発せられたにも拘わらず、日本硝子(株)はこれを実行しない。かかる行為は法治国家に対する挑戦と思うが法務省、労働省の見解はどうか。

七 紛争を早期、かつ自主的に解決するために、野村証券(株)及び日本硝子(株)は直ちに全硝労と話し合い、団体交渉を行うべきだと考えるが労働省、大蔵省の見解はどうか。

八 日本硝子(株)は不当労働行為救済制度を逆に悪用して、紛争の解決を遷延せしめているが、かかる行為に対して厳しく歯止めをかけるべきだと解するがどうか。

  右質問する。