質問主意書

第82回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七号

特許権等の迅速・適確な付与ならびに特許情報問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年十月三十一日

森下 昭司   


       参議院議長 安井 謙 殿


   特許権等の迅速・適確な付与ならびに特許情報問題に関する質問主意書

 工業所有権制度の国際化、特許情報産業の進展に伴う特許行政の重要性は、最近、各界からとみに指摘されているところであるが、この数年の国会における多少の要望にもかかわらず特許権等を迅速・適確に付与する体制ならびに権利・技術の両性格をあわせ有する特許情報を産業政策的に対処していく体制において、特許行政に、末だ、十分でない憾みがあるものと思われ、かかる懸念から、以下の点につき質問する。

一 特許情報問題について

(1) 第七十七回国会(参議院)において、特許情報サービスに関する世界企業であるダーウェント社(イギリス)の動向が(財)日本特許情報センターとの関係で論議され、政府は、特許情報に関する国際企業の進出に対処するため、右センターの強化拡充を図ることに、関係省庁間で十分に協議をし、努力をいたす所存である、旨答弁している。しかしながら、最近、ダーウェント社の特許情報サービスを超大型電子計算機により、オンラインサービスを可能とするSDC社(システム・デベロップメント・コーポレーション 米国カルフォルニア州)の日本進出が認可待ちの状況であると伝えられる。政府は、第七十七回国会における右答弁の趣旨にかんがみ、どのように、かかるダーウェント社・SDC社の進出に対処しようとしているか。また同センターをどのように強化拡充を図らんとしているのか。具体的に答弁されたい。
(2) さらに、第七十五回国会(衆議院)における特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議「特許情報の激増に対処し、その効率的利用を図るため……特に公開公報の内容及び発行の態様につき早急に再検討を加え、必要な法的措置を速やかに国会に提案すること。」に対する政府の御趣旨尊重の答弁、或いは同国会(参議院)の同法律案に対する附帯決議「特許情報の増大・国際化の進展に対処するため、発明の要約の整備等の対策を速やかに検討するとともに、特許分類付与の精度向上のために、万全の措置を講ずること。なお(財)日本特許情報センターは、新規性調査機関として、必ずしも所期の目的に合致していない実情にかんがみ、そのあり方を再検討し、必要な強化拡充措置を講ずること。」に対する政府のまたなる御趣旨尊重の答弁にかんがみ次に質問する。

(イ) 公開公報の発行の内容及び態様について再検討したかを検討内容と共に答えられたい。
(ロ) 右(イ)に伴う必要な法的措置についての検討内容はどうか。
(ハ) 発明の要約の整備等の対策についての検討内容はどうか。
(ニ) 特許分類付与の精度向上のために講じた万全の措置についての検討内容はどうか。
(ホ) 同センターのあり方についての再検討の内容はどうか。
(ヘ) 同センターの抄録作成状況、特にその作成が遅れがちなことについての検討した内容はどうか。
(ト) 特許庁公報(昭五二・七・二〇付 年報二九巻)、審判処理促進措置の実施にあたり、産業界等に対してした要請事項中、(3)アブストラクトとは発明の要約相当のものか。また、アブストラクトがなぜ処理促進方策となるのか。
(チ) 同センターに特許庁の審査官が手元で管守し審理に使用している現存審査資料(特許公報等)に同一のものを備えることについて政府は検討しているか。
(リ) 同センターの受託業務中、発展途上国へ送付されている、いわゆる英文抄録の作成量、及び同抄録の主な対象技術分野(特許分類で)を示されたい。また、特許情報の有効的利用を促進し、特に、中小企業等の利用の便宜を図る目的で、政府は、地方における閲覧体制の整備等、特許情報サービスの強化拡充に、どのように対処してきたか、具体的に答弁されたい。

二 迅速・適確な権利の付与について

(1) 右迅速な権利の付与が目標としている、審査・審判の処理達成所要年月(審査においては審査請求日から査定に至る日まで、及び審判においては、出願日及び審判請求日から審決に至る日まで―但し、特許・実用新案のみでよい。)ならびに、現在の平均要処理期間。
(2) 審判に係属中の査定不服審判(特百二十一条、実三十五条)にかかる全事件数、及びそのうち、昭和四十六年以前に出願されたものの数。
(3) 特許・実用新案・意匠・商標の事件であつて、東京高等裁判所に係属中のものの数、及び当該事件のうち、特・実において、昭和四十六年以前に出願されたものの数、及び実において昭和三十九年以前に出願されたものの数。
(4) 出願公告後特許をすべき旨の査定に至る平均所要月数(但し特五十五条の場合を除く)。
(5) 登録課における、いわゆる設定登録業務・移転登録業務・年金納付業務・騰本業務・閲覧業務の特・実・意・商別各平均所要月数(又は日数)。
(6) 審査・審判の処理促進のための措置とはどのようなものか。
(7) 右適確な権利の付与のための措置とは何か。
(8) 審査基準の説明会、「一日特許庁」の開催回数(最近三年)及びその内容ならびに開催地選定基準。
(9) 事務の機械化は、昭和三十九年から始めているが、以来、十三年、当初斯界の先駆といわれた登録業務の電子計算機化も未だその実用に入つていないときく。なぜこのように遅延したのか。
(10) 電子計算機の導入以来、登録業務の機械化のために要求した予算額経年表、及び各年毎の電子計算機適用実績一覧表。
(11) 最近の大型計算機導入の理由、及びその機種選定の理由。
(12) 特許審査資料機械検索(以後「機検」という)のために要求した予算額経年表、及び各年毎の実績一覧表。
(13) 機検において、現実の審査に使用された検索回数(最近五年)、及びそれによつて処理(拒絶理由通知・公告決定)された特許及び実用新案の件数。
(14) 特許法百九十五条の別表十四号で定める区分「原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付を請求する者」の単位及び額が、一件につき二百四十円である理由、及び右区分中の書類の交付につき実用になつていないにもかかわらず、過去十余年間、額面が定められていた理由。
(15) 特許法二十七条二項の「磁気テープ」は、磁気ディスクを含むか。また、道路運送車輛法六条の「電子情報処理組織」との異同。
(16) 磁気テープで調製された特許原簿の信頼性、保存性、利用性について、どのようなメリット・デメリットがあるのか、また、デメリットについては、その対処法をあわせて答弁されたい。
(17) 事務の機械化、特に、登録事務の機械化に伴い予定している政省令等の改正項目の全てについて答弁されたい。
(18) 電子計算機にミスが絶対にないと断言できるか。ミスがあつた場合、特許登録令四十一条の過失であるとみなしてよいか、また、ミスの予防保全体制はどのようになつているか。
(19) 昭和三十九年と昭和五十一年の登録課の事務量(設定・移転・年金納付・謄本・閲覧)と登録課人員対応表。
(20) 現在の電子計算機室は、特許法二十七条一項に規定する特許庁か。
(21) 磁気テープで調製された原簿は、特許登録令施行規則二十八条の「氏名」「名称」「住所」「居所」を含むのか。
(22) 右迅速・適確な権利の付与に関連して、特許・実用新案の出願・審査請求の適正化という行政指導を実施しているようであるが、その効果はどのようなものか。
(23) 商標審査資料機械検索システムの現状はどのようになつているか。

  右質問する。