質問主意書

第81回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質八一第五号

  昭和五十二年九月六日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員秦豊君提出福田内閣による成田空港の強行開港をめぐる諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出福田内閣による成田空港の強行開港をめぐる諸問題に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 新東京国際空港公団(以下「公団」という。)の昭和四十一事業年度から昭和五十一事業年度までの各事業年度の投下資金等の額は、次の表のとおりである。

図 表 1/2

図 表 2/2

(2) 新東京国際空港(以下「新空港」という。)に係る国の直轄事業は、昭和四十五年度及び昭和四十六年度は一般会計からの歳出により、昭和四十七年度以降は空港整備特別会計からの歳出により行つており、各年度ごとに投下した資金の額は、次のとおりである。

昭和四十五年度                 約十五億五千万円
昭和四十六年度               約十八億三千三百万円
昭和四十七年度               約十二億三千二百万円
昭和四十八年度                約二億三千九百万円
昭和四十九年度                        -
昭和五十年度                   約三千九百万円
昭和五十一年度                  約三千二百万円

 なお、昭和四十四年度以前は、新空港に係る直轄事業は、行つていない。
(3) 昭和五十一事業年度までに公団が投下した資金のうち一般管理部門に係る経費(約六十五億円)は、公団の資産として計上されていない。
(4)、(5)、(6)、(12)及び(13) 新空港は、航空輸送需要に対応し得なくなつている東京国際空港(以下「羽田空港」という。)の状況からみて早急に供用を開始する必要があるため、多額の資金を投入してその建設を推進してきたものである。したがつて、現在までに投下された新空港の建設のための資金が有効需要を創出して経済活動に貢献していることは明らかであるにしても、新空港が供用を開始してその機能を果たすことによつて初めてこれまでになされた投資の目的が達せられることとなると考えている。
(7)から(11)まで 新空港の建設については、新空港の位置を決定するに際しての閣議決定「新東京国際空港位置決定に伴う施策について」等に基づき、地元住民対策、騒音対策、アクセス対策等の諸施策についても十分な配慮を払い、推進してきたところである。今後とも、地元住民等の理解と協力を得て、これら諸施策を推進し、新空港の開港を実現することとしている。

二について

(1) 日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の昭和五十一事業年度の決算における欠損金等の額は、次のとおりである。

イ 一般勘定における欠損金(単年度)      約九千百四十一億円
ロ 繰越欠損金

(イ) 一般勘定               約九千七百四十二億円
(ロ) 特定債務整理特別勘定         約二兆五千四百四億円

ハ 長期負債に係る債務残高

(イ) 一般勘定             約五兆四千五百八十二億円
(ロ) 特定債務整理特別勘定         約二兆五千四百四億円

(2) 国鉄の経営が悪化した主要な原因としては、高度経済成長に伴う経済社会構造の変革により生じた輸送構造の変化に適切に対応し得なかつたこと、労働集約的な事業であるため高度経済成長過程における人件費の高騰の影響を直接的に受けたこと、適正な収入を確保するための運賃改定を適時適切に実施し得なかつたこと等が挙げられる。
(3) 国鉄の経営の改善については、国鉄自身において徹底した経営努力を行うとともに、運賃改定により適切な収入の確保に努め、併せて政府においても適切な援助を行うとの方針の下に、これまで数次にわたり所要の計画を策定し、実施してきたところである。
 今後とも、一昨年末の閣議了解「日本国有鉄道再建対策要綱」及び本年一月の閣議了解によるその一部修正に基づき、有効な施策を鋭意推進してまいりたい。
(4)から(6)まで 他の交通機関が著しく発達したこと等により、国鉄の運賃・料金の引上げはかなりの程度の利用減を伴う状況にある。このように国鉄は他の交通機関と厳しい競争関係に立つているが、政府においては、国鉄を始め各交通機関がそれぞれの交通特性に応じた輸送分野を分担することが望ましいと考えており、国鉄は、鉄道特性を発揮できる大量輸送の分野において効率的な輸送体系を形成することにより、今後とも基幹的交通機関としての役割を十分果たし、国民の期待にこたえていく必要があると考える。
(7)から(10)まで 新幹線が東京-大阪間に開通した昭和三十九年十月、大阪-岡山間に開通した昭和四十七年三月及び岡山-福岡間に開通した昭和五十年三月からそれぞれ一年間の、御質問の区間に係る航空旅客数の月別の変動(対前年同月比)及び新幹線開通時の航空運賃等については、別表一のとおりである。
 なお、名古屋-大阪間には、航空路線はない。
(11)及び(13) 国鉄の再建に関する諸般の施策のうち、第八十回国会に提出し、現在衆議院において継続審査中である「国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案」は、国鉄自身の自主的な経営判断に基づいて適時適切に運賃改定を行うことができる仕組みを設けることにより適正な収入の確保を図るとともに、投資対象事業範囲を拡大することにより関連事業の充実を図ること等を内容とするものである。また、本年度予算における国鉄に対する助成の強化は、長期負債の一部について利子補給及び償還資金の無利子貸付けを行うことにより財政圧迫要因の除去を図るとともに、工事経費、地方交通線の運営費等に対する補助を行うことにより事業経営上の負担の軽減を図ることとするものである。これらの施策は、ともに国鉄の再建の達成に多大な効果のあるものと考える。
 なお、御質問の「鋭意」とは、国鉄の再建のための施策を推進する政府の努力を強調したものである。
(12) 国鉄の再建に当たつては、今後国鉄において徹底した経営改善に努めるとともに、これを促進するため、政府も所要の援助を行うことが必要であり、これらの措置とあいまつて、適時適切な運賃改定が行われることによつて、真の再建が達成されるものと考える。

三について

(1) 昭和二十九年から昭和五十一年までの各年ごとの羽田空港における定期便着陸回数及び旅客数は、別表二のとおりのである。
(2) 羽田空港においては、その処理能力を超えないよう便数制限を行う等の措置を講ずることにより、航空交通のふくそう緩和を図り、その安全を確保してきたところである。
(3)及び(4) 新空港は、増便等に対処し得なくなつている羽田空港の現状及び資金の投資効果の観点からみて、早急に開港させる必要がある。
 なお、御質問の「等」とは、臨時便及び不定期便を意味するものである。
(5) 昭和五十二年八月一日において、羽田空港に乗り入れている外国航空会社名及びその週間乗り入れ便数は、別表三のとおりである。
(6) 新空港の開港後に増便を要請することとして、差し当たりは増便の要請を自制している国等も多いものと想定されるが、現在、フィリピン(三便)、マレイシア(二便)並びにスイス、ベルギー及び中華人民共和国(各一便)からは具体的な便数を示して増便の要請がある外、米国、英国等からも増便の要請がある。
(7) 我が国に対して新たに航空協定の締結を要請している国は、次のとおりであるが、その希望する乗り入れ便数等については、各国との具体的交渉がほとんど行われていないため不明である。
 アフガニスタン、オーストリア、バングラデシュ、ブルガリア、カンボディア、チリ、チェッコスロヴァキア、エティオピア、フィジー、フィンランド、イラク、イスラエル、ジョルダン、ケニア、ラオス、ルクセンブルグ、マダガスカル、モーリシァス、ナウル、ニュー・ジーランド、パナマ、パプア・ニューギニア、ポーランド、ルーマニア、サウディ・アラビア、スペイン、スリ・ランカ、タンザニア、ウガンダ、ウルグァイ、ユーゴースラヴィア及びザイール
(8)、(9)及び(12) 羽田空港においては、同空港に発着する航空機のふくそう状況を考慮して、国際便及び国内便についてそれぞれの発着回数の限度等を定め、関係者に特段の協力を要請しているところであるが、同空港を使用する国内線については慢性的な供給不足の状態にあるので、御指摘のように減便を行うことは困難であると考える。
 右のような事情から、国際線の新規乗り入れ及び増便については、受け入れ難い状況にある。
(10) 空港整備法においては、第一種空港は新空港及び国際航空路線に必要な飛行場であつて政令で定めるものを、第二種空港は主要な国内航空路線に必要な飛行場であつて政令で定めるものをいうとされている。
(11) 第一種空港に関する事業は、空港整備法における第一種空港の意義にかんがみ、公共の利害に重大な関係があると認められるため、公共用地の取得に関する特別措置法の適用対象事業とされているものである。

四について

 航空と鉄道は、我が国の輸送体系において必要不可欠な交通機関であり、新空港の開港と国鉄の再建は、ともに重要な課題であると考えている。
 国鉄と航空との競争関係については、両者がそれぞれの交通特性に応じた輸送分野を分担するという考え方で対処すべきものと考えており、新幹線鉄道についてもその特性を発揮し得る分野において整備を図つていく考えである。
 なお、現在建設中の上越新幹線及び東北新幹線の区間においては、鉄道特性を十分発揮し得る輸送需要が現に存在しており、在来線の輸送能力も既に限界に達している現状からみて、輸送力増強対策が早急に必要とされているところである。

別表一

別表二

別表三