質問主意書

第81回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

日豪砂糖協定等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年八月三日

鈴木 一弘   


       参議院議長 安井 謙 殿


   日豪砂糖協定等に関する質問主意書

 日豪砂糖協定は、昭和四十八年から四十九年にかけての世界的天候不順による農作物の不作等が砂糖の国際相場を天井知らずに上昇させることとなり、国内において、いわゆる「砂糖パニック」が引きおこされた事態に対処し、昭和五十年七月から五十五年六月まで、年間六十万トン、総計三百万トンを固定価格で原糖輸入することによつて、安定した砂糖の供給を確保しようとしたものである。
 しかし、砂糖の国際相場は、昭和五十年に入ると下落の一途をたどり、協定締結時には、協定価格の三倍近かつた国際相場も、協定発効時の昭和五十年七月には、逆に協定価格の半値に落ち込んだ。
 このため、国内相場も採算コストを大幅に下回る水準となり、以来、精製糖業界は、豪州糖の重圧(原料高・製品安)を受け、軒並み赤字操業を余儀なくされている。
 このような事態に対処するため、精糖業界は、数度にわたり、協定価格の見直しを中心に豪側と交渉を重ねてきたが、事態に進展はみられず、ついに豪州糖引取り拒否を表明せざるをえなくなり、豪州糖は横浜港に到着したものの、陸揚げできないという異常事態に立ち至つている。更にこの問題は、単なる砂糖協定をめぐる問題にとどまらず、広く日豪間の貿易や友好関係にまで悪影響を及ぼしかねない様相を深めている。
 政府は、日豪砂糖協定を積極的に推進し、今日の状況をもたらしたことについて、速やかに施策を講じ、その責任を取るべきであると考える。
 よつて以下の諸点について、政府の責任ある答弁を求める。

一 日豪砂糖協定は、たしかに民間協定ではあるが、日本側駐豪大使と豪州側パターソン北方開発庁長官との間で、協定の確認が行われており、わが国政府も協定に関連して政令改正を行うなどその推進に深く関与してきた。
 しかし、政府は、協定締結後、事態が急速に悪化の一途をたどつたにもかかわらず、これが民間協定であるとして、交渉を民間にまかせ、積極的な対応を怠つてきた。
 こうした政府の姿勢が事態をこれほどまでにこじらせた一因となつている。
 したがつて政府は、価格改定等を含めた協定の見直しのために、政府間交渉を重ねる等、事態の収拾に最善を尽すべきである。
 政府はこの責任をいかに認識し、また今後どのような方針で臨むのか、具体的な見解を伺いたい。

二 精糖業界は今三月期決算までに、業界総資本額の七倍近い累積赤字を記録し、崩壊の危機に直面している。特に自己資本の小さい中小企業は、倒産寸前の経営状況に立ち至つている。
 政府は、こうした中小企業に対して、特別融資等万全の対策を講ずるべきだと思うが、その考えがあるかどうか伺いたい。

三 昨年から明治製糖川崎工場の閉鎖と二百五十名の首切り、新光砂糖工業の破産申請と全員解雇、東海精糖の倒産と全員解雇、三井製糖の人員整理など、経営悪化及び合理化の強行により精糖業界における従業員の雇用不安が重大な問題になつている。
 こうした事態に対し政府は、労働者の生活権を保障する立場から緊急に対策を講ずるべきであると思うがどうか、

四 砂糖の自由化以降、三井物産・三菱商事・伊藤忠・丸紅・日商岩井等の大手商社は、原料輸入、製品販売等による利益獲得のため、精糖会社の系列化を強行し、現在では、市場シェアの七割をこれら五大商社系列が握るに至つた経緯があるにもかかわらず、これら商社は、事態の深刻化に伴い、経営危機に陥つた中小精糖会社の切り捨て等、自己保身を優先させた危機回避策を講じつつある。
 よつて、政府はこうした大手商社の勝手な行動を規制し、商社が中小精糖会社の経営の再建に責任をもつて当るよう強力に指導すべきである。
 この点について政府の見解を伺いたい。

五 砂糖の安定供給のためには、その国内生産を振興し、著しく低落している自給率の向上を図らなければならないと考える。
 また北海道のビートや、鹿児島・沖繩のさとうきびは、道・県の主要作目として多数の農民の生活を支えてきた。
 しかしながら、これらの支持価格は再生産を可能ならしめるだけのレベルにはとうてい至つていない。
 そのため国産糖生産量は減少の一途をたどつており、農業経営は破壊の渕に追いやられている。
 よつて政府は、現行のパリティ方式による最低生産者価格の算出方法を改め、速やかに生産費所得補償方式を導入すべきであると考えるが、政府の見解を伺いたい。

六 日本の砂糖の消費者価格は先進諸国の中では、最も高いものになつている。その大きな原因は、一キロあたり、四十一円五十銭の関税と、十六円の消費税が徴収されているからである。
 国民の生活必需品である砂糖に、何故、日本だけが世界に例を見ない高額の税金を課さなければならないのか伺いたい。

  右質問する。