質問主意書

第80回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質八〇第一四号

  昭和五十二年四月十九日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員小野明君提出教師が児童生徒の教育に専念し、行き届いた教育が行える条件の整備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小野明君提出教師が児童生徒の教育に専念し、行き届いた教育が行える条件の整備に関する質問に対する答弁書

一について

(一) 学校は、次代の我が国を担う青少年を教育する場である。各学校において生き生きとした教育活動を展開するためには、各学校において規律を守り秩序ある生活を創りあげると同時に、教員や児童生徒の創造的な活動を励まし、適切に指導することが必要であり、これら二つの人間関係が調和を保つて、学校運営が行われることが大事であると考えている。
(二) 国立及び公立の学校の教員の給与については、公務員の給与決定の根本基準にのつとつて、すなわち職務と責任に応じて定められるべきものであり、現行の教員の給与体系においても、教員の職務の特殊性は考慮されていると考える。
 公務員の給与については、中立的第三者機関たる人事院の勧告に基づき措置することが政府の基本的建前であり、教員の給与体系の在り方について、今後とも人事院の勧告を尊重する考えである。
(三) 教員は、次代の国民を育成する教育を公教育として自発的、創造的に行う使命を有することはいうまでもないが、学校教育においては、校長、教頭の指導の下に、全教職員がそれぞれの役割分担に応じてその職責の遂行に努め、一体となつて教育に当たることにより、その成果を挙げられるものであると考える。
 このようなことから校長、教頭等には、企画、管理、指導等の職務にふさわしい能力と適性が強く要求されているところであり、教育委員会においては、管理面と指導面のバランスを十分配慮して、その判断と責任において適任者の任用と育成に努めているところである。
(四) 小・中学校の学校規模については、学校教育法施行規則において、十二学級以上十八学級以下を標準とし、土地の状況その他により特別の事情のあるときは、この限りでないとされている。
 人口の地域的急増により学校の新増設を行う場合においても、設置者はこの省令の規定に十分留意し、教育効果の低下を招くこととならないような配慮の下に必要な措置を講じているものと考える。
(五) 政府は、従来から、中立的第三者機関たる人事院の勧告を尊重することを基本的建前としてきたものである。
 第三次教員給与改善のための一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案は、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法に基づく人事院勧告を受けて提出したものであり、当該改正法案の一部を撤回する考えはない。

二について

(一) 公立義務教育諸学校の教職員定数については、現在、昭和四十九年度を初年度とする第四次の五か年計画を進めており、養護教諭及び事務職員については、原則として学校数の四分の三の学校に配置し得るよう改善を行つているところである。
 また、昭和五十一年度及び五十二年度においては、教職員定数改善の一部を後年度に繰り延べることとしたが、この措置は、教職員の需給状況及び国・地方を通ずる財政事情等を勘案してとつたものであり、既定計画どおり実現できることを目途に今後とも努力してまいりたい。
(二) 先般の教育課程審議会の答申において、ゆとりのある、しかも充実した学校生活を目指して教育課程の改善がなされるべきことが指摘されており、学校給食についてもその趣旨に沿つて適切に運営されるよう指導してまいりたい。
 また、学校栄養職員については、昭和四十九年度を初年度とする公立義務教育諸学校の教職員定数改善の第四次の五か年計画により増員を図つており、食堂等の施設・設備の整備についても逐年拡充を図つているところである。
(三) 学校管理下の事故による被災者の救済には十分配慮する必要があるが、学校の設置者や教員に過失がない場合等を含め、学校における事故のすべてについて、国や設置者が全面的に災害補償を行う制度を設けることは、他の諸制度との均衡上、慎重な検討を要する問題であると考える。
 なお、日本学校安全会の災害共済給付については、従来から改善を行つてきたところであるが、今後とも給付額の引上げを含めその充実を図つてまいりたい。
(四) 校長は、学校経営方針、教職員の校務分掌等の全般的企画、学校の教育課程管理、教職員の服務の監督等の人的管理、施設設備の物的管理等極めて広般かつ多様な職務に従事しており、各学校においては、校長の指揮の下に、教頭がその仕事を助け、全教職員が一体となつて教育活動が活発に展開されていると考える。
 なお、政府としては、校長、教頭等が安んじてその職務に専念することができるよう、なお一層教育諸条件の整備に努めてまいりたい。

三について

(一) 昭和五十一年度及び五十二年度においては、教職員定数改善の一部を後年度に繰り延べることとしたが、この措置は、教職員の需給状況及び国・地方を通ずる財政事情等を勘案してとつたものであり、既定計画どおり実現できることを目途に今後とも努力してまいりたい。
 また、学級編制については、現在、昭和四十九年度を初年度とする第四次五か年計画を進めており、複式学級、特殊学級の学級編制の改善を行つているところである。
 学級編制の在り方については、今後の児童生徒の増加傾向等を考慮しつつ、更に引き続き慎重に検討してまいりたい。
(二) 小学校においては、児童の発達の特性からみて、教師と児童との人間的な接触を密にしながら、その成長と発達を総合的にとらえて適切な指導を行うことが必要である。また、教育内容も必ずしも教科ごとに専門の教師が担当しなければならないほど専門化していないので、現在、小学校においては、一人の教師が全教科を担任することを建前としている。しかし、音楽や図画工作などの技能を必要とする一部の教科については、必要に応じ特定の教科のみ担任するいわゆる専科教員を置いている。
 なお、指導の効率を高めるため、教師の特性を生かした協力的な指導が行われるよう学習指導要領にも定めているところである。
(三) 小規模中学校の免許外教科担当の実情を考慮し、昭和四十九年度を初年度とする公立義務教育諸学校の教職員定数改善の第四次の五か年計画において、その解消を図るよう教員の定数加算の措置を進めているところである。
(四) 公立学校の教職員の週休二日制の試行については、これらの教職員についての週休二日制を実施するとした場合における問題点のは握及び必要な対策の検討に資することを目的として、本年四月から週休二日制の試行を実施することについて指導しているところである。現在、各都道府県においては教職員と他の一般職員との均衡、父母及び地域住民の意向等を考慮しながら検討しているところである。
 公立学校の教職員についての週休二日制の実施については、国立大学の附属学校の教職員を含む国家公務員についての試行の結果及び公立学校の教職員についての試行の結果について慎重に検討した上で対処したい。
(五) 教員は、その職務の特殊性から、教育公務員特例法にも規定されているように、絶えず研究と修養に努めなければならないものである。その趣旨にかんがみ、教員がその使命を自覚し、自主的に適正な研修活動に努めることは極めて重要なことであるが、これと併せて、必要に応じ教育委員会等が研修の機会を積極的に提供することもまた必要である。政府は、教員の研修の充実を図るため、従来から各種研修会の実施、教育研究団体等の助成、教員海外派遣の拡充等に努めてきたところであり、今後とも、教員の研修の充実について一層努力してまいりたい。
(六) 教員が自発的に適正な研修活動を行い得るような条件整備を図ることは極めて重要なことである。政府としては、従来から都道府県の教育研修センターの設置について助成してきたところである。
(七) 学校を建築するに当たつての職員室の基準については、特に定めていないが、各地方公共団体において学校建築の際十分配慮していることと考える。

四について

(一) 学校教育は、学習指導要領等教育課程の基準に従つて、各学校や地域の実態等に即して行われるものであり、その中において教員の創意、工夫が十分いかされるものである。
 現在、各学校においては、校長、教頭を中心として全教職員が使命感にあふれ、情熱を傾けて教育を行つているものと考えている。
(二) 現在、都道府県に置かれる教科用図書選定審議会の委員の一定数は校長及び教員から選任することとなつており、また、各採択地区に置かれる教科書調査員には教員を委嘱するなどして、教員の意見を採択に反映できるようにしている。
 また、各教員が教科書について研究できるように、各都道府県において、一定期間教科書展示会を開催するとともに、常設の展示施設として教科書センターを設置している。
 以上のように、現行制度は教科書に対する教員の研究意欲を喚起できるようにしており、現行制度を改める考えはない。
(三) 学校は、組織的な学校運営により児童生徒を教育する機関であるから、一定の秩序を保つことが必要であり、学校を管理する教育委員会あるいは教員を監督する校長の指揮の下に、教員がその分担する職務を整然と遂行することにより、よく教育の成果が期待できるものであると考える。
 また、PTAは、子どもの健全な成長を願つて学校、家庭及び地域社会での教育を結ぶ存在として、その適切な活動の展開が望まれるところであり、都道府県や市町村の教育委員会と協力してPTAの指導者研修やPTAの地域活動等の一層の充実を図るよう努めている。

五について

(一) 児童生徒急増市町村における不足教室・仮設校舎の解消については、昭和四十八年度から急増市町村の小・中学校校舎の新増築事業に係る補助率を三分の二(一般の市町村は二分の一)としているほか、仮設校舎の解消のための校舎の新増築事業については従来から優先的に補助しているところである。また、急増市町村については、特に、小・中学校用地取得費に対する補助も行つている。昭和五十二年度予算においては、これらの急増市町村関係の予算を大幅に増額したほか、急増市町村の指定要件の緩和も行つたところであり、今後とも急増市町村における公立文教施設の整備促進に努めてまいりたい。
 危険改築対象範囲の拡大による危険校舎の全面解消については、毎年予算の増額に努めているところであるが、なお相当期間は健全校舎から危険校舎になるものが相当量あるので、当面現行の基準によりつつ危険校舎の解消に努めてまいりたい。
 屋内運動場・水泳プール未保有校の解消については、毎年補助金額の増額を図り、その整備に努めてきたところであるが、引き続きその整備の充実に努めてまいりたい。
 特殊教育振興計画に基づく特殊教育諸学校の整備については、毎年度所要の財源措置を講じているほか、特に、昭和五十四年度からの養護学校の義務制化に備え、昭和四十七年度には養護学校未設置県の解消のため新設校の補助率を三分の二に引き上げ、昭和四十八年度からは未設置県に限らずすべての都道府県立の新設養護学校建物の補助率を三分の二に引き上げている。昭和五十二年度からは、昭和五十五年度までの時限的措置として政令指定都市が設置する新設養護学校についても都道府県並みに取り扱うこととしている。
 幼稚園の整備については、幼児教育の重要性と幼稚園教育に対する国民の強い要請にかんがみ、入園を希望するすべての四歳児及び五歳児を就園させることを目標として幼稚園の整備を進めており、毎年公立・私立幼稚園施設整備費補助、幼稚園就園奨励費補助、私立幼稚園運営費補助についてその拡充に努めている。
(二) 公立高等学校新増設に係る財源措置については、昭和五十一年度から高校生急増問題に対する緊急対策として、新たに一定の要件の下に高等学校建物の新増設について国が三分の一を補助することとし、昭和五十二年度予算においては、百八億五千八百万円を計上しているほか、昭和五十二年度地方債計画において、高校分六百四十四億円を計上しており、これらの措置により高等学校新増設の円滑な実施が図られるものと考える。
 高校用地取得費の国庫補助制度については、義務教育施設においても一般的には実施していない事情にあるところからこれを補助の対象とすることは考えていない。なお、用地取得費については従来から起債により措置してきたところである。
(三) 学校設置者が学校建物の整備に当たつて、教育方法の変化等にも対応できるよう配慮することは大切なことであると考えており、学校建物の計画に当たつては、画一的に陥ることなく慎重な検討を行うよう学校設置者に対し指導しているところである。
 このような見地から、従来から、学校建物の望ましい建築計画及び融通性のあるシステム建築による学校建設の実施方策について調査研究を行つており、また、一部の地方公共団体においても学校建築に関する調査研究がなされている。
 今後とも関係地方公共団体等とも連絡をとりながら必要な調査研究を続けるとともに、将来の教育方法の変化に対応できる学校建物の整備について、地方公共団体等に対して指導してまいりたい。
(四) 私立学校振興助成法に基づいて私立高等学校等に対する経常費助成費補助を年々拡充し、私立高等学校等の教育条件の維持向上と父母負担の軽減を図つてきたところである。
 特に、昭和五十二年度予算においては、厳しい財政事情下にあつて私立高等学校等経常費助成費補助金は、前年度予算に比べ六十六・七パーセント百二十億円増の三百億円を計上し、私立高等学校等の生徒等の負担の軽減を図るため、日本育英会の育英奨学事業の拡充や幼稚園就園奨励費の拡充を図つてきたところであり、今後とも、これらの施策の充実に努めたい。

六について

(一) 文教諸施策の検討、立案が、教育の現状を科学的に調査した結果等を踏まえてなされる必要のあることは御指摘のとおりであり、そのような観点に立つて、指定統計等、種々の調査を計画し、実施しているところである。今後とも、学識経験者等の協力を得て、教育の現状は握に必要な科学的な調査の実施の推進を図るとともに、調査結果を的確に国民に提供することに努めてまいりたい。
(二) 教員の職責にかんがみ、教員自らが積極的に情報を交換しつつ適正な研修活動を行うことは大いに奨励されるべきことであり、従来から教育研究団体に対する助成に努めてきたが、今後一層その充実を図つてまいりたい。
(三) 国立大学・学部の附属学校は、通常の学校として、児童・生徒の教育を行うほか、大学・学部の教育に関する研究に協力し、また、学生の教育実習に当たることを重要な役割としている。
 このため、従来から、教育研究及び教育実習の面で大学・学部と附属学校の連携を強化し、その充実向上を図ること、入学者選抜方法の改善を図ることなどを中心に、附属学校の運営の改善充実に努めている。
(四) 御指摘の去る一月九日の事件で現行犯逮捕した被疑者四人については、うち二人に手錠を使用し、他の二人には手錠を使用しなかつた。
 去る三月三日の経団連会館襲撃事件の被疑者四人については、手錠を使用しなかつた。このように手錠を使用するかどうかは、逃亡防止の措置と態勢などを含む逮捕時の現場の個々、具体的な状況等によるものである。