質問主意書

第80回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質八〇第一号

  昭和五十二年二月十八日

内閣総理大臣 福田 赳夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員秦豊君提出公共用地の取得に関する特別措置法の運用の実態に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出公共用地の取得に関する特別措置法の運用の実態に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 現在までの特定公共事業の認定の状況は、次のとおりである。なお、特定公共事業の認定に係る事業が二以上の号に該当するものについては、主要な号によつて整理した。

第一号該当   八件
第二号該当  十一件
第三号該当   一件
第四号該当  十一件
第六号該当   二件
第七号該当  十四件
第八号該当   三件
第九号該当   一件

(2)から(5)まで 緊急裁決の申立てが行われた事業の名称等は、次のとおりであり、エに掲げる事業については、緊急裁決に基づき行政代執行が行われている。

ア 都市計画街路環状七号線築造工事

(ア) 特定公共事業の認定            昭和三十七年六月十二日
(イ) 第四号該当
(ウ) 緊急裁決の申立て             昭和三十七年十二月十五日
(エ) 緊急裁決                 昭和三十八年二月十八日
(オ) 右裁決に係る用地取得完了         昭和三十八年三月二十九日
(カ) 起業地の全域の用地取得完了        昭和三十八年三月二十九日

イ 中央線中野荻窪間線路増設工事

(ア) 特定公共事業の認定            昭和三十八年五月十五日
(イ) 第二号該当
(ウ) 緊急裁決の申立て             昭和三十八年十二月二日
(エ) 緊急裁決                 昭和三十八年十二月二十六日
(オ) 右裁決に係る用地取得完了         昭和三十九年二月三日
(カ) 起業地の全域の用地取得完了        昭和三十九年二月三日

ウ 松原下筌両ダム建設工事に伴う工事用道路及び下筌ダム建設に伴う仮設備建設事業

(ア) 特定公共事業の認定            昭和三十九年十月十九日
(イ) 第九号該当
(ウ) 緊急裁決の申立て             昭和四十年五月二十九日
(エ) 起業地の全域の用地取得完了        昭和四十一年四月二十五日

エ 新東京国際空港第一期建設事業(以下「本件事業」という。)

(ア) 特定公共事業の認定            昭和四十五年十二月二十八日
(イ) 第三号該当
(ウ) 緊急裁決の申立て             昭和四十六年二月三日
(エ) 緊急裁決                 昭和四十六年六月十二日
(オ) 右裁決に係る用地取得完了         昭和四十六年八月十二日
(カ) 起業地の全域の用地取得完了        未完了

(6) 特定公共事業の認定を受けた事業のうち緊急裁決の申立てが行われていないものがあるのは、その必要がなかつたからと思われる。

二について

(1) 特定公共事業の認定の年次別の状況は、次のとおりである。

昭和三十七年    十三件
昭和三十八年    十七件
昭和三十九年    十三件
昭和四十年      四件
昭和四十一年     三件
昭和四十五年     一件

(2) 豊中都市計画千里丘陵住宅地区新住宅市街地開発事業であり、その認定年月日は昭和四十一年七月二十一日である。
(3)から(6)まで 昭和四十一年八月以降、本件事業を除いては特定公共事業の認定の申請がないため認定が行われていないものである。なお、公共用地の取得に関する特別措置法(以下「特措法」という。)については、特段の問題はなく、改正の必要はないと考えている。

三について

 特措法は、日本国憲法に違反するものではないと考える。
 特措法の制定当時、特措法に定める緊急裁決制度が日本国憲法第二十九条第三項にいう「正当な補償」に適合するものと解し得るか否かという点が議論されたが、通説及び判例は、「正当な補償」とは必ずしも損失の補償が収用に先立つてあるいは財産の供与と交換的に同時に履行されなければならないことを意味するものではないとする見解であつた。

四について

(1) 御質問に係る事業の名称等は、別表のとおりである。
(2) 次の二事業について起業地の範囲が異なつているが、これは、(イ)については附帯工事部分を、(ロ)については第一期工事に係る部分を、それぞれ起業地として特定公共事業の認定を行つたためである。

(イ) 松原下筌両ダム建設工事に伴う工事用道路及び下筌ダム建設に伴う仮設備建設事業
(ロ) 本件事業

五について

 本件事業について、特定公共事業の認定処分取消請求訴訟が昭和四十六年三月二十八日に提起され、現在、東京地方裁判所において係属中である。

六について

(1)から(3)まで 本件処分時の担当者から事情を聴取した結果、瑕疵がないと判断したものであり、特に再審査を行つてはいない。
(4)及び(5) 昭和五十一年十一月二十六日付け内閣参質七八第一〇号において答弁したとおり、何ら瑕疵がないものと考える。

七について

 本件事業に係る特定公共事業の認定(以下「本件処分」という。)時の担当課長は櫟原利嗣であり、担当課長補佐は城野好樹であつた。

八について

(1)から(5)まで 本件事業に係る起業地内の土地については、ほとんど確保している。なお、空港建設の反対運動等により未取得である土地については、開港までに取得すべく鋭意努力中であると聞いている。
(6)から(8)まで 本件事業に係る起業地のうち、緊急裁決の申立てをした土地は、土地取得後施設の建設のため工事に相当な期間を要するので早急に取得する必要があつたこと等の理由により申し立てたものであると聞いている。未取得用地については、土地収用法所定の期間内に裁決申請及び明渡裁決の申立てが行われている。
(9) 事業の認定及び特定公共事業の認定に係る起業地の範囲が事業に必要な限度に限られるべきことは、当然である。

九について

(1)から(9)まで 本件処分に当たつては、いずれも新東京国際空港公団(以下「公団」という。)から説明を受けている。
(10) 本件事業に係る申請は、適法なものであると考えた。

十について

(1)から(4)まで 本件事業は、昭和五十一年十一月二十六日付け内閣参質七八第一〇号において答弁したとおり、公益上重大な利害を有する事業である。
(5)及び(6) 航空保安施設用地及び航空機給油施設用地については、公団から別途確保する旨の説明を受け了解したものであり、これらの施設用地を本件処分に係る起業地に含めないよう指示したことはない。

十一について

(1) 東京国際空港における航空機の発着回数は、昭和四十四年度において約十五万二千回に達し、同空港の処理能力回数年間約十三万八千回を超え、減便等の措置を講じざるを得なくなり、航空旅客の利便を著しく阻害することとなつていると説明を受け、そのとおりであると判断した。
(2)及び(4) 御指摘のような東京国際空港の拡張構想は、工事の施行が容易でなく、東京湾における港湾計画、船舶航路に重大な影響を及ぼすため、多大の困難を伴うものであり、かかる困難を考慮すれば新東京国際空港開港までの暫定措置として実現できるようなものではないとの説明を受け、そのとおりであると判断した。
(3) 本件事業は、四千メートル滑走路及びこれに対応する諸施設を建設する事業であり、本件処分に際し公団から東京地区の長期的な航空輸送需要及びその対策については改めて説明を受けなかつた。
(5)及び(6) 東京国際空港については、B滑走路の延長、エプロンの増設等の措置を講じつつあるが、これらが完了しても昭和四十六年には航空輸送需要に対応できなくなるので、本件事業は緊急を要するとの説明を受け、そのとおりであると判断した。
(7)及び(8) 特措法に基づく特定公共事業の認定は、それを必要とする場合に限つて行うべきであると考え、そのように対処してきた。
(9)から(11)まで 新東京国際空港公団法に基づき、東京地区における長期にわたつての航空輸送需要に応ずるとともに、将来における主要な国際航空路線の用に供することを目的とする新東京国際空港を公団が建設すべきこととされている旨公団から説明を受けた。
(12) 東京国際空港における乗降客数は、昭和四十四年度において国内線約六百三十万人、国際線約二百二十五万人、合計約八百五十五万人に達しており、経済の成長、国際交流の進展、航空機材の技術革新等を背景に、更に今後も需要が増大するものと考えられる旨の説明を受け、そのとおりであると判断した。

十二について

(1)、(2)及び(5) 本件事業は、四千メートル滑走路及びこれに対応する諸施設を建設する事業であり、本件処分に際し公団から東京地区の長期的な航空輸送需要及びその対策、新東京国際空港が航空輸送需要に対応しえなくなる時期並びにB滑走路の機能については改めて説明を受けなかつた。
(3)、(4)及び(6) C滑走路は、横風が強い場合及び主滑走路が事故等で閉鎖された場合に補助的に使用するための施設であつて、その使用頻度は少ないと考えられるので、当面は他の空港を利用して運用する予定である旨の説明を受け、了解したものである。

別 表