質問主意書

第80回国会(常会)

質問主意書


質問第四八号

コンビナートの防災に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年六月九日

近藤 忠孝   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   コンビナートの防災に関する質問主意書

 去る四月二十七日、姫路市妻鹿の出光興産兵庫製油所において発生した原油流出事故は昭和四十九年十二月十八日の岡山県倉敷市水島三菱石油製油所での重油タンク事故の教訓が企業や行政の防災体制の中に充分活かされていなかつたことを明らかにした。
 たとえば、現行石油コンビナート等災害防止法では、企業の防災規定の具体的な内容については企業と現地の消防本部にまかせられているが、法にもとづく防災規定の基準がないため、事実上企業の意思にゆだねられている。その結果、出光興産兵庫製油所では、兵庫県下一の危険物集積地であるにもかかわらず、その保安管理は八時間に三回、つまり二時間二十分毎に一回、目視によつて行われているという不充分なものであつた。また今回の事故原因であるかくはん機などの石油タンクに附属する諸設備については安全基準が定められておらず、企業まかせにされていた。
 さらに、三菱石油の事故後全国的に実施された石油タンクの検査項目は不等沈下のみであり、出光興産兵庫製油所の六万トンタンク十六基のうち開放検査の対象となつたのは二基のみであつた。しかし、その後タンク内部の腐食などによる油もれ事故が日本鉱業水島製油所などで発生しており、石油タンクの点検、検査の強化が求められている。
 加えて、エネルギー政策をも含めて、危検物の精製、貯蔵、移送、取扱い等に関し、再検討を行い、瀬戸内海や過密地への立地規制設備の分離分散、極端な自動化や無人化の規制など当然講ぜられるべき対策のたちおくれをも明らかにした事故であつた。
 私は、石油コンビナートにおける防災体制の確立の上で緊急に改善又は対策の樹立を要する点について若干の質問を行う。

一 消防法には危険物の定期点検を年一回行うよう定められているが、当該事業所では実施されていたか。また、実施されていたとするならば、その際事故原因個所の異常を発見出来なかつたのは何故か。また、定期点検については年一回では少なすぎるので少なくとも年二回以上に改めるべきであると考えるがどうか。

二 今回の事故を発生させた出光興産の保安責任体制についてはどのように改めさせるか。また、その際、重大な危険のもとにおかれている地元住民の意見をどのように反映させるか。

三 既設の石油コンビナートの設備の分離、分散などについてどのように対処されるか。

四 既設コンビナートでは防災のための技術的点検基準も確立されておらず、今後も不測の事故が発生する可能性の大きい現状のなかで、さらに既設コンビナート内に新たな増設を許すことは、事故発生に拍車をかけるものである。従つて、さしあたり出光興産兵庫製油所の十万バーレル、日本石油製精新下松十五万八千バーレル、東亜燃料和歌山七万バーレルの増設は中止させ、同時に姫路市妻鹿地先のLNG基地建設を中止させるべきだと考えるが如何か。

五 石油タンクに附属する諸設備についての安全基準を早急に定めるべきであると考えるがどうか。また、各種附属設備の安全性について、早急に全国的な点検を実施すべきであると考えるがどうか。

六 石油タンクの点検、検査等の基準を整備強化し、全国的な石油コンビナートの点検を行うべきであると考えるがどうか。またこれを行う意志があるとすれば、いつまでにどのような基準を整備し、点検を実施される。

七 石油コンビナート等災害防止法にもとづく企業の自衛防災に関する防災規定の具体的内容について、国が一定の基準を示し、企業にたいする指導をつよめるべきであると考えるがどうか。