質問主意書

第80回国会(常会)

質問主意書


質問第四七号

能登中核工業団地建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年六月九日

近藤 忠孝   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   能登中核工業団地建設に関する質問主意書

 石川県羽咋郡志賀町に建設される能登中核工業団地は、昭和五十二年起工式を行い、本格的な着工の段階に入つた。
 この建設にあたつては計画段階においても、着工された今日においても誘致企業が確定しないばかりか、団地の重要な一環である米町川ダム建設についても地域住民の同意が得られておらず、団地建設計画達成の客観的な見通しが立つていない。
 また、深刻な地方財政の危機のなかで、志賀町の財政負担能力に余る関連公共事業が見込まれており、他方、その公共事業も大企業に独り占めされるような計画になつている。
 米町川ダムについては、上・下流ばかりでなく、高浜港への影響も指摘されているにもかかわらず、必要な総合的防災アセスメントも行われていない。
 一方、同町の赤住地区には、かねてより北陸電力株式会社が原子力発電所の建設を計画し、用地買収は今日でも進められている。しかし、団地建設による人口の増加を考えるならば、安全性の見地から原子力発電所の立地にはふさわしくない地域となつている。このことはまた、地域開発、振興政策が総合的に行われていないことを示す典型例とさえいえるものである。
 長期の不況、町財政のひつ迫のなかで、団地建設が住民本位のものになるか、また、ダムや原子力発電所の建設によつて環境がどのようになるのか、と住民が大きな不満と不安を抱いているのは当然のところである。
 私は、開発政策、工業振興政策の策定にあたつては、地元住民の意見を反映する民主々義の原則が貫かれなければならないし、「環境の整備、その他環境の保全及び雇用の安定に配慮しつつ推進する措置を講ずること」(工業再配置促進法第一条)は、政府の当然の責務であると考える。
 したがつて、以下の事項について政府の見解を求める。

一 志賀町赤住地区への北陸電力株式会社による原子力発電所建設計画については、隣接地域での工業団地建設にともない、安全性を確保する見地から再検討が求められている。政府は北陸電力の当該計画の再検討と、その結論のでるまでの建設の決定の延期を指導すべきであると考えるがどうか。

二 団地建設にともなう石川県および志賀町の財政負担は約七十億円と見込まれている。これは、志賀町にとつて過大な財政負担であり、しかも誘置企業が確定していない今日、財政負担だけが先行する危険性がある。志賀町の財政負担を可能な限り軽減するため、関連公共事業の大半を占める下水道工事については誘置企業が建設費の相当分を負担するよう強力に指導するとともに、地域振興整備公団の「立替施工制度」を積極的に活用する必要があると考えるがどうか。

三 団地建設および関連公共事業には、県道の改良、舗装、下水道工事、河川改修事業などが含まれている。これら事業のうち第一期造成工事では工事量の八十五パーセントを大企業が占める計画となつている。これら工事の発注に際し、地域産業振興の立場から、地元中小企業、中小建設業者などが共同受注などで受注量が拡大できるよう指導すべきであると考えるがどうか。

四 工業団地の建設にともない、生活施設はもとより、教育施設の整備が必要となる。団地計画では、地域外から一千世帯の転入が見込まれており、対応する教育施設の整備が急がれている。当面、第一期造成完成年度である昭和五十三年度に合わせて、志賀町住民はもとより、新規転入者の児童、生徒の教育に支障をきたさないよう学校建設を行う必要がある。
 その際、町財政に過大な負担とならないよう適切な財政措置をとるとともに、地域振興整備公団が、文教施設の「立替施行」を行えるよう制度の改善を含め、実情に合わせて具体的に指導すべきであると考えるがどうか。

五 団地の雇用期待人員は約四、五〇〇名とされているが、志賀町の就業人口は約三、〇〇〇名である。団地企業への就業を優先するならば、同町の農業、繊維産業に重大支障をきたすことになる。政府は、農業や地場産業の重要な役割にかんがみ、その育成のための施策を明らかにし、その施行について県、町にたいし指導すべきであると考えるがどうか。

六 団地への進出企業に就業する地元の労働者は企業の収益動向や不況の影響等による解雇や一時休業などの一次的な対象とされる事態が考えられるので、政府はかかる事態が安易に起ることのないよう、雇用条件、労働条件等について厳しく監督すべきだと考えるがどうか。

七 団地に要する工業用水を確保するため、米町川ダム建設が計画されているが、建設を急ぐあまり十分な調査・研究を行わないまま建設されようとしている。
 不測の災害や環境の悪化をまねくことのないよう、ダム建設の方式を含め、建設に伴う農地および農業用水への影響、河床の変化、河川改修の必要性、さらには高浜港への影響等について総合的な防災アセスメントを早期に実施し、その内容を住民に公開し、住民の納得をえてから建設に着手するよう政府は県当局に対し、指導すべきであると考えるがどうか。

  右質問する。