質問主意書

第80回国会(常会)

質問主意書


質問第三〇号

西日本の漁業振興対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年六月七日

星野 力   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   西日本の漁業振興対策に関する質問主意書

 領海十二カイリ、漁業水域二百カイリが今や国際的潮流となりつつあり、国民への大事な食糧供給産業である漁業の安定と発展が一致した世論となつている現在、漁業をあらためて見直し、これを育成、発展させることは、国政の重要かつ緊急な課題となつている。
 なかでも、西日本の漁業は、瀬戸内海、玄海、有明海などの海面、養殖漁業、南方水域の遠洋漁業、以西漁業、北方イカつり、ふぐはえなわなど、多種、広大な漁場をかかえており、その多くが中小零細漁業である。
 今こそ政府は、これらの漁業者の努力を生かし、西日本の豊かな海岸線と漁場を保全し、当地域の漁業を振興するため、特段の施策を講ずるべきだと考える。
 よつて次の諸点について政府の見解を求める。

一 沿岸、沖合漁業に関して

(1) 沿岸漁業振興の立場から、西日本沿岸を汚染する各種の開発行為については、厳格な環境アセスメントを実施し、計画中のものを全面的に再検討すべきであると思うがどうか。
(2) すでに公害で汚染された瀬戸内海、有明海などの漁場については、大企業の負担を原則として、国、自治体の責任で大規模な浄化作業をおこなうべきだと思うがどうか。
(3) 今後、漁場の汚染防止のため、広島県海田湾、大分新産都八号地、志布志湾や有明海等の埋めたてについては、ただちに中止すべきであると思うがどうか。
(4) 企業に公害防止装置を完備させるとともに、浄化機能の高い下水道建設を促進するため、特段の措置を講ずるべきであると思うがどうか。
(5) 公害による漁業の被害にたいしては、原因者に補償させるとともに、赤潮や油濁などの被害に対しては、関連企業、国、自治体による補償制度をつくるべきだと考えるがどうか。
(6) 沿岸漁場整備開発事業を再検討し、事業を西日本全体で年七百億円程度に拡大するとともに、くりあげ実施すべきであると思うがどうか。

二 遠洋漁業に関して

(1) 南方諸国をふくめ、西日本水域の漁業者が出漁する海域で、相手国とのあいだに平等、互恵の経済、技術協力を積極的に推進し、たとえ相手国が二百カイリ水域を設定した場合にも漁獲量が急減しないよう、適正な漁業協定の締結に積極的な努力をはらう必要があると考えるがどうか。
(2) 外国の二百カイリ水域内における対日漁獲量の大幅な削減にともない、中小漁業者が、減船や休漁を余儀なくされる場合には、国の責任で休・転廃業補償を実施すべきだと考えるがどうか。

三 安全操業に関して

(1) 朝鮮民主主義人民共和国やベトナム社会主義共和国とのあいだに、当面民間漁業協定を結び、安全操業の実現をはかるべきだと思うがどうか。
(2) ベトナムなど関係諸国と話しあい、漁業協定の締結以前にも、台風避難等のため、緊急入港ができるような措置を講ずるべきだと思うがどうか。
(3) 以前から強く要望されている米軍演習水域(リマ海域等)の禁漁解除についても、ただちに米国に申し入れるべきだと思うがどうか。

四 沿岸漁民、中小漁業者の保護に関して

 大手水産会社による優良漁場の操業権の独占を廃止し、中小漁業者や沿岸漁民への優先的な操業を確保し、資源量にみあつた適切な漁船数の配分を実施すべきだと思うがどうか。

五 水産業の振興に関して

(1)ことしから始まる第六次漁港整備計画を期限内に達成するため、国の負担率、補助率を高めること、とりわけ大幅にたちおくれている離島の漁港整備を、自治体の負担を軽減して早急に実施する必要があると思うがどうか。
(2) 漁業者に生産費をつぐなう魚価を保障するため、抜本的な「生産者価格安定基金制度」を創設すべきだと考えるがどうか。
(3) 漁民、中小の漁業者の経営を守るため、商社・大資本による無秩序な水産物の輸入を規制する抜本的な措置を講ずるべきであると考えるがどうか。
(4) 漁民、中小漁業者の経営を圧迫する燃油、漁業用資材、餌料などの独占価格の値上げを規制すべきだと思うがどうか。

六 金融、保険、共済等に関して

(1) 国の融資制度である「漁業近代化資金」、「沿岸漁業構造改善資金」、「漁業経営維持安定資金」等の融資わくの拡大、償還期限の延長、金利引き下げ、担保条件の緩和など、中小漁民の経営安定に資するよう改善すべきだと思うがどうか。
(2) 漁業共済制度については、現行の漁業者の重い負担を軽減するため、国の負担をふやすべきだと思うがどうか。
(3) 漁船乗組員の職務上の死亡率が他産業の十~二十倍にもなつていることにかんがみ、零細な漁業者にたいし、国の負担で保険料の一部負担をおこなう必要があると思うがどうか。また、船員保険、労災保険の適用の拡大をはかるべきだと思うがどうか。
(4) 漁業後継者の育成のため、技術、知識の研修の保障や結婚相談員制度をつくるなどの施策を講ずる必要があると思うがどうか。

七 研究体制の強化と試験研究の推進に関して

 「二百カイリ時代」に対応し、国・公立試験研究機関等の充実をはかり、総合的な水産資源の調査、開発研究をつよめるべきであると思うがどうか。

  右質問する。