質問主意書

第80回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

聴覚障害者の教育、生活等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年五月二十七日

沓脱 タケ子   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   聴覚障害者の教育、生活等に関する質問主意書

 わが国は「情報化社会」といわれるほど、電話やテレビはどの家にも普及している。
 しかし、聴覚障害者は、電話は使えないし字幕のつかないテレビはなにをいつているのか聞きとることができない状態である。
 政府は、耳が聞えないというハンディキャップを補うための社会的施策の充実によつて、聴覚障害児・者が人間にふさわしい成長、発達をとげ、人間らしい生活をいとなめるよう保障すべきであると考える。
 この立場から、以下の点について質問する。

一 教育に関して

(1) 早期教育のために、ろう学校幼稚部の拡充が大切で、この計画的整備が必要と思うが、どうか。
(2) 現在、集団補聴器、聴力適応式学習施設が各校に整備されつつあるが、この整備を促進するとともに、科学技術研究費等を活用し、有効な教育器材の研究開発が必要と考えるが、どうか。
(3) モデル校で実施されている研究課題の成果をふまえつつ、口話、手話、指文字などによる総合的コミュニケーションの研究をすすめる必要があると考えるが、どうか。

二 日常生活に関して

(1) 補聴器の購入補助については、個々人の障害にあつたもの(外国製品を含め)が補助されるよう、その選択の範囲をひろげる運用上の配慮を要すると思うが、どうか。
(2) 聴覚障害者用の日常生活器具(ベビーシグナル、非常ベル、呼びリン、電話にかわるテレタイプ等)及び字幕入りテレビの研究開発費を組み、技術開発を促進すべきであると思うが、どうか。
(3) 字幕入りフイルム作成費(五十二年度約六五八万円)を増額し、聴覚障害者が地方で手軽に、映画を楽しめるようにすべきだと考えるが、どうか。
(4) 聴覚障害者自動車安全運転器具(警報音感装置)が開発されたと聞くが、この活用によつて、聴覚障害者の自動車運転の可能性は大きく開かれたので、運転免許証を与えるように必要な措置をとるべきでないか。
(5) 手話通訳者が不足している現状にかんがみ、手話通訳養成事業を予算的にも充実させるとともに、都道府県でこれを制度化し、計画的に養成するよう指導すること、また、手話通訳者の身分保障についてどのように考えるか。

三 仕事について

(1) 身体障害者雇用促進法が改正されたが、従来から大企業ほど雇用状態が悪かつたことにかんがみ、身体障害者の雇用促進、とくに大企業の雇用促進をどうすすめているか、また、すすめるのか。
(2) 障害者が不当な賃金、雇用上の差別をうけないために、どのような方策を講じているのか、また、不当差別をうけた場合は、その是正をどの行政機関に要請すればよいのか。
(3) 賃金の不合理な差別を許さないためにも現行最低賃金法第八条第一号に定める、最低賃金を障害者には適用しないことができる旨の規定は削除する必要があると思うが、どうか。
(4) 聴覚、視力障害者の職業訓練施設の整備計画はあるか。あればその内容を示されたい。
(5) 身体障害者の生活安定に資するため、賃金や雇用条件について、障害別等に実態を調査し、結果を公表する方針及び予定はないか。