質問主意書

第80回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

厚生省の認めた基準看護を実施する医療機関における頸髄損傷等重症な労働災害被災者の付添看護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年五月十二日

近藤 忠孝   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   厚生省の認めた基準看護を実施する医療機関における頸髄損傷等重症な労働災害被災者の付添看護に関する質問主意書

 昭和五十一年十二月十九日、三重県津市片田志袋町地内、津市濾過地補砂工事に従事していた榊幹雄氏はコンベア移動作業中に受傷し、第五頸椎脱臼、頸髄損傷を発症し、労働災害認定をうけ、現在、四肢完全麻痺、膀胱直腸障害のため、津市西丸の内、医療法人永井病院(基準看護第一類)に入院、治療中である。患者は看護婦を呼ぶにもインターホーンのブザーさえ押すことが出来ず、主治医診断書においても、たえず付添看護を必要とする状態である。ところが、基準看護を実施している病院でも頸髄損傷のような、たえず付添看護を要する重症患者は、看護婦以外の付添人なしには安全に看護することができないのが現状である。
 患者の場合も、家族は妻と小学校低学年の児童三人と老令で病身の母親であり、四六時中付添うことが非常に困難なため、家政婦に依頼せざるをえない状況である。従つて、九万円程度の休業補償はその大半を付添料として支払わねばならず、著しい生活苦に陥し入れられている。
 患者は津労働基準監督署に付添看護料を請求したが、入院先が厚生省の認めた基準看護を実施する病院であるので特別に看護料を認める訳にはいかないと四月五日不支給の決定を下されている。
 労働災害患者が企業の安全衛生不備による事故のため自己の労働能力を奪われたばかりでなく、その家族全員の生活さえ奪われている事態は放置できない問題であるので、私は労働災害被災者の付添看護に関し以下質問する。

一 本例の如き頸髄損傷のような労働災害による重症患者で四肢麻痺の場合、基準看護を実施している医療機関であつても、例えば基準看護第一類の場合、四人の患者に一人の看護婦の割合であり、完全看護は極めて困難であると考えるが如何か。

二 従つて、完全看護を要する患者の場合、殆んどが患者の親族や患者側の負担による家政婦によつて付添看護がなされているという実態については把握されているか。

三 労働災害保険法は労働災害、職業病の企業責任を代行しているものであり、被災労働者の医療に対する補償と被災労働者及びその家族に対する生活補償を目的とする制度である。従つて、本例の如く付添看護料が患者個人の負担となつている不当な事例に対しては、医療機関側の看護の実情からみて、企業及び保険者側の責任において解決すべきであると考えるが如何か。

四 労働災害患者に対しては、基準看護を実施している医療機関であつても付添看護を認める特別看護の制度があるが、その適用は重篤な患者や長期治療を要する患者が常時十人以上入院している場合に限られているが十人以上に限つた根拠は何か。

五 重篤患者等の常時入院患者数が少ない医療機関ほど一般的にはその規模も小さく、重篤患者等に対する完全看護も難しいと考えられる。従つて本例の如く重篤患者等の常時入院患者が四~五名という規模の病院に入院した患者は特別看護の適用もなく、付添看護に要する費用が本人負担とされているという不平等な結果をまねいているので、不平等を是正するため特別看護の適用についての重篤患者等の入院患者数の基準を引下げるべきであると考えるが如何か。

六 基準看護を実施している医療機関が必要な看護を独自に実施できるようにするためには、基準看護料の大幅な引上げ、看護婦など医療従事者の増員などが求められているがこれらについての対策を示されたい。

  右質問する。