質問主意書

第80回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

新東京国際空港公団法附則第八条に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十二年五月二日

秦 豊   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   新東京国際空港公団法附則第八条に関する質問主意書

 新東京国際空港公団法(以下、空港公団法という)附則第八条は、新東京国際空港公団(以下、空港公団という)の最初の事業年度を、その成立の日から昭和四十一年三月三十一日までとする旨、規定している。ところが空港公団が実際に成立したのは昭和四十一年七月三十日であり、その最初の事業年度は昭和四十一年七月三十日から昭和四十二年三月三十一日までであつた。これは明らかに矛盾であり、過日の予算委員会において私はこの矛盾を指摘したのであるが、真田法制局長官の答弁は恣意的かつ杜撰な法解釈に終始し、時には速記録から削除されるような不穏当な用語を用いさえした。私はこのような答弁にははなはだ不満なので、右の答弁を踏まえて質問する。

一 空港公団法附則第八条について、政府のような「読み替え」の操作をしなければ、実際の空港公団の成立の日および最初の事業年度は空港公団法附則第八条に反することになるが、これは確認できるか。

二 四月六日の予算委員会で、真田法制局長官は、空港公団法附則第八条が「そのまま残つているのはそれは余りかつこうはいいことじやございません」と答弁しているが、法律判断を下す場合の用語として、この「かつこう」の良し悪し、という言葉は理解に苦しむ。この言葉は、法律上いかなる意味をもつか。

三 同じく四月六日の予算委員会で、真田法制局長官は、空港公団法附則第八条の「四十一年」を「四十二年」に改めることは、「まさしく正論」といい、あるいは「それは直した方がベターだと私は思いますよ」と断言した。しかし、この点につき、四月十五日の委員会においては、「それがベターだということも云えますということも云つたわけなんです」といささか弁解的で晦渋な答弁をしている。この答弁は、要するに、四月六日の方の答弁を撤回した、という趣旨か。

四 政府は空港公団法附則第八条を「技術的規定」と断じているが、その根拠が薄弱なので以下の点につき答弁されたい。

(イ) 法律の解釈については、他の規定とも比較しながら、全体として矛盾のないようにすべきであると考えるが、政府の見解はどうか。
(ロ) 空港公団が特殊法人である以上、他の特殊法人の最初の事業年度を定める規定は、比較衡量上きわめて重要であると考えるが、政府の見解はどうか。
(ハ) 真田法制局長官の云う「いわゆる特殊法人」と「いわゆる認可法人」については、法律上意味のある区別と言えるか。特殊法人登記令においては、それはどのように扱われているか。
(ニ) 「いわゆる特殊法人」、「いわゆる認可法人」という区別が仮に妥当だとしても、真田法制局長官の説明は、空港公団法附則第八条の解釈に資するという観点からは意味不明である。なぜなら、その説明に従つても、空港公団を含む「いわゆる特殊法人」の最初の事業年度の終期を翌年とせず、特定の年月日に限定することには、「いわゆる認可法人」についての説明と対比すれば、それだけの理由があり、安易な「読み替え」を許さない、と理解するほかないからである。それとも、政府は、このような趣旨を述べたくて、「いわゆる特殊法人」、「いわゆる認可法人」なる概念を引つ張り出してきたのか。
(ホ) 真田法制局長官は、「いわゆる特殊法人」の中に含まれるべき水資源開発公団法については一言も触れることがなかつた。同法附則第七条は、最初の事業年度を政令に委ねうることを規定しており、明らかに空港公団法とは異つた内容となつている。私がこの水資源公団について指摘したのに対し、真田法制局長官は、なぜ、あえてこの点について触れるのを避けたのか。
 政府側として明らかに不利な状態を招くと予測したためか。
(ヘ) この水資源開発公団法附則第七条は「技術的規定」か。「技術的規定」だというなら、その理由はなにか。
(ト) 前記委員会で例示した特殊法人については、法律がその最初の事業年度を定めるにつき、その終期を特定日に限定するもの、その終期を翌年とするもの、政令に委任するものの三種類を確認することができるが、空港公団法附則第八条の解釈に資するという観点から、これらの規定を統一的に説明していただきたい。

五 特殊法人登記令上の特殊法人につき規定する法令において、次の点はどのようになつているか。

(イ) 空港公団法と同様に、最初の事業年度の終期が特定されている特殊法人の数はいくつあるか。
(ロ) (イ)特殊法人のうち、空港公団と同様に、法律が明定するその最初の事業年度の終期に反して、実際の最初の事業年度が相違するものが存在するか。存在するならばその特殊法人名はなにか。
(ハ) (イ)の特殊法人につき、最初の事業年度の定めにもかかわらず、実際の成立の日が遅延したので、最初の事業年度の定めを改正して、整合性を維持した例はないか。その例があれば、その特殊法人名はなにか。
(ニ) 小型船舶検査機構と同様に、最初の事業年度の終期を「翌年三月三十一日」と定めるような特殊法人はいくつあるか。
(ホ) 最初の事業年度を定めるにつき、(イ)、(ニ)以外の内容を規定している法令があれば、それを列挙されたい。

  右質問する。