質問主意書

第77回国会(常会)

答弁書


答弁書第一九号

内閣参質七七第一九号

  昭和五十一年六月十一日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員秦豊君提出円の国際化および日韓経済関係についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出円の国際化および日韓経済関係についての質問に対する答弁書

一について

 最近、日本経済及び円に対する信認の増加を反映し、一部の国において保有資産の運用の多様化を図るため円を保有しようとする傾向が出てきており、外国通貨当局との接触の機会にこの問題が話題になることはある。
 現在、非居住者による本邦債券の取得は自由化されているところであり、外国の中央銀行等通貨当局についても例外ではない。したがつて、政府としては外国通貨当局により円が保有されることについては、これを人為的に促進することもまた抑制することも考えていない。御質問のように円をアジアにおける資産通貨とするため、アジア諸国に対し特にその意向を打診するということは行つていない。

二について

 我が国資本市場における円建公募外債の発行は、一九七〇年十二月の第一回アジア開発銀行債以降、本年三月の第四回アジア開発銀行債に至るまで、十六銘柄総額千九百九十億円に及んでいる。この中には、国際復興開発銀行、アジア開発銀行のような国際機関債のほか、オーストラリア、メキシコ、ブラジル、フィンランド、ニュー・ジーランドの各国債やカナダのケベック州債などが含まれており、起債国は地域的にも広範囲にわたつている。
 政府としては、円建外債の発行は、我が国資本市場の健全な発展及び国際的な資本交流の促進という見地から有意義なものと考えている。
 なお、今後とも円建外債の発行は、我が国資本市場の動向等に配慮しつつ、円滑に行われることが肝要と考える。その場合、当然のことながら、銘柄の選定等については、投資家保護の徹底を期するために、引受証券会社の判断と責任の下に慎重に行われることが望まれる。
 円建外債の発行についての政府の考え方は上記のとおりであり、特に「韓国を初めとするアジア諸国」といつた地域を限定した考え方は採つておらず、御指摘のような事実はない。

三について

 政府としては、御指摘のような事実はは握していない。

四について

 我が国の為替銀行は、外貨で多額の中長期対外貸付けを行つてきたが、その原資は、主としてユーロ市場又は外国銀行からの短期の外貨資金に依存してきた。
 我が国の為替銀行の対外短期債務が過度に増加するのは好ましくないので、短期の外貨資金を原資とする中長期の対外貸付けについては抑制的に取り扱つてきている。
 しかしながら、海外から我が国の為替銀行に対して資金協力要請がある場合、円で貸付けるのであれば、上記の対外短期債務累増の問題はないので、案件の内容を個別に審査のうえ、申請を認めている。
 我が国の為替銀行が、インドネシア及びフィリピン中央銀行に対して貸付けを行うに当たつては、他の場合と同様、政府としては、上記の一般的方針をもつて臨んだものである。

五について

 四についてと同じ方針で臨んでいる。

六について

 韓国政府が円を指定通貨とすることを検討しているとの報道が韓国内であつたことについては承知しているが、現在までのところ、韓国政府が本件につき具体的な検討を行つているということは承知していない。

七について

 対韓協議グループ会議は、韓国に対する主要援助国及び国際機関と韓国政府の代表者の間で意見交換を行う場であつて、我が国としても、韓国に対する経済協力を進めるうえでの参考に資するため、韓国経済の現状と見通しについての国際通貨基金、国際復興開発銀行及び各国の意見の聴取に努めているものである。このように同会議は、具体的援助量、援助対象について何らかの合意、決定を行うものではなく、二十億ドルなる数値も一つの推計値が示されたものであり、この外貨所要量について各国が合意をしたものではない。
 一九七七年から始まる韓国の第四次経済開発五か年計画に対する我が国の経済協力については、一九七三年十二月の第七回日韓定期閣僚会議共同コミュニケにおいて両国の閣僚が意見の一致をみているとおり「政府ベースの協力から民間ベースの協力を主体とする段階に移るであろう」とされている。
 また、一九七五年九月の第八回日韓定期閣僚会議において、両国の閣僚は「今後韓国の第四次経済開発五か年計画事業のうち政府ベースの協力を必要とする案件については、同計画が成立した後、政府間実務者レベルの協議を通じ検討のうえ適切な案件につき具体化していく」ことに意見の一致をみている。よつて今後行われる政府借款の具体的供与額は、適切と認められる個々の案件ごとに決定されることとなり、一九七七年以降韓国に対しどの程度の政府借款が供与されることとなるかは現段階では明らかでない。

八について

 韓国向け延払輸出については大半が円建になつているので、韓国が仮に円を指定通貨とした場合でも、この面で大きな変化は生じないと思われる。
 また、円が指定通貨になつた場合に韓国において円が具体的にどのような取扱いになるのか現段階では明らかでないので、その他の面でどのような影響を与えるか明らかでない。

九について

日本側
 首席代表 菊地清明  外務省経済協力局長
 代表   石井享   外務省経済協力局参事官
 代表   岡崎久彦  駐韓大使館参事官
 代表   中平立   外務省経済協力局経済協力第一課長
 代表   松浦晃一郎 外務省経済協力局開発協力課長
 代表   遠藤哲也  外務省アジア局北東アジア課長
 代表   金元功   大蔵省国際金融局投資第二課長
 代表   豊島格   通商産業省通商政策局経済協力課長
 代表   坂井清志  経済企画庁調整局経済協力第一課長
 代表   中村武   外務省経済協力局経済協力第一課首席事務官

韓国側
 首席代表 李宣基   経済企画院経済協力担当次官補
 代表   李雄秀   経済企画院経済協力局長
 代表   金在春   駐日大使館参事官
 代表   申斗炳   外務部経済協力課長
 代表   李圭日   駐日大使館一等書記官
 代表   金中煥   経済企画院経協二課長
 代表   金成鎬   農水産部地政課長
 代表   金與錫   逓信部審査分析官
 代表   黄成淵   鉄道庁事務官
 代表   金●    経済企画院経協総括課事務官
 代表   金東奎   農業振興公社
 代表   崔京甫   駐日大使館三等書記官

注 ●=火へんに英

一〇について

 韓国の我が国政府借款に対する債務については、韓国は従来から滞りなく支払つてきており、一九七六年三月末現在元本償還実績は約六十七億円となつている。
 しかしながら、外国の対外債務の詳細につき、日本政府が一方的に公表することは、外交的見地からみて困難である。

一一について

 本件は商業ベースの借款であり、政府としてその詳細は承知しているわけではないが、一九六六年一月以後、一九七五年十二月末までの韓国に対する機械類(契約金額三万ドル以上)の延払輸出承認額(金利を含む)の累計は十二億五千二百万ドルであり、これについて輸出承認を行つた際の信用条件(返済期間等)に基づいて一九七五年十二月末までの償還額を計算すると約四億四千八百万ドルとなる。