質問主意書

第77回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

参議院地方区定数に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十一年五月二十日

秦 豊   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   参議院地方区定数に関する質問主意書

 去る五月一〇日、参議院公職選挙法改正に関する特別委員会における政府答弁を踏まえて、適切なる参議院地方区定数是正に資するという観点から、以下質問する。

一 議員定数不均衡に関する最高裁の昭和三九年二月五日の判決と、昭和五一年四月一四日の判決を比較して、法制局長官は「その表現において若干異なるところがあるとしても、選挙人の投票の価値の平等ということが、憲法上の法の下の平等の原則にかかわりを持つものであることを基本としている点において、同じ考え方に立つものである。」旨の答弁を行つた。
 しかし、五一年判決では、投票価値の平等が憲法上の要請であることを明言したのに対し、三九年判決では、憲法一四条等の条項が投票価値の平等を積極的に命じてはいないとしていること、また五一年判決では、このような投票価値の平等の範囲内において、厳格な制約のもとで、国会の裁量を認めたのに対し、三九年判決では、国会の裁量権を前面に出している点において、判例の大きな変化があつたと考えるべきである。
 再度政府に、前記両判決の相違を質問する。

二 五〇年センサスにもとづき、いわゆる剱木試案を検討したところ、投票価値の最大の開きは、鳥取対東京が一対五という結果を得た。この点につき法制局長官は、「現行とさほど変らぬので違憲とはいえないということを卒直に感じた。」旨の答弁をしている。
 しかし、前記五一年判決では、「具体的な選挙制度において現実に投票価値に不平等の結果が生じている場合には、それは国会が正当に考慮することのできる重要な政策的目的乃至は理由に基づいて、結果として合理的に是認することができるものでなければならない。」としているのであつて、法制局長官のこの程度の答弁では、とうてい合理的に是認することができるものでないことは明白である。
 再度、いわゆる剱木試案が法制化されても違憲ではないという根拠を、明らかにされたい。

三 参議院地方区の議員定数の配分について、立法当時の事情を政府が説明するときには、衆参両院の制度の相違を示す根拠を引用したり、あるいは種々の配分案に関する議論における地域代表という性格を強調したりするが、立法者が、具体的に人口比例を根拠とする旨を明らかにしている点については、避けて通つているように見える。これでは、五一年判決の趣旨をも正当に踏まえていないと批判されても致し方ないであろう。
 そこで、政府は、今後の適切なる法改正に資する意味で、立法当時の政府の提案理由説明及び答弁を中心として、議員定数の配分について、人口比例の論理を展開した箇所を正確に引用し、もつて十全なる回答をなすべきではないか。

  右質問する。