質問主意書

第76回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質七六第一六号

  昭和五十年十一月二十八日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員塩出啓典君提出本州四国連絡橋に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員塩出啓典君提出本州四国連絡橋に関する質問に対する答弁書

一、について

(一) 昭和五十年八月十五日、経済企画庁長官、国土庁長官及び建設大臣が協議の上決定した内容は、次のとおりである。

(1) 本州四国連絡橋は、当面一ルートにつきその早期完成を図る。
 右ルートは、鉄道併用橋とし、第三次全国総合開発計画において決定する。
(2) 他の二ルートについては、各橋の地域開発効果、工事の難易度等を勘案し、当面着工すべき橋梁は、関係各省庁間で協議の上決定する。

 右の決定を受けて、同月十八日、国土庁、運輸省及び建設省が協議の上決定した内容は、次のとおりである。

(1) 大三島橋は、着工の凍結を解除する。
(2) 大鳴門橋は、従来の方針で、諸般の準備を進める。
(3) 因島大橋については、引き続き着工時期について検討する。

(二) (一)の決定は、現下の経済社会情勢にかんがみ、当面一ルートについてその早期完成を図ることとする趣旨であり、昭和四十八年九月二十一日付けで運輸大臣及び建設大臣が指示した基本計画の変更を当然に伴うものではないと考えている。
 なお、同年十月二十六日付けで運輸大臣及び建設大臣が認可した工事実施計画については、工事施行上必要な変更を所要の時期に行う必要があると考えている。
(三) 当面早期完成を図るルートについては、地域開発、総合的な交通施設の整備、船舶交通の安全確保及び環境保全の観点並びに工事の難易度等の事業実施上の観点から総合的に判断して決定すべきものと考えている。
 また、現在の経済社会情勢の下でこのルートの完成時期を予定することは困難であるが、財政状況及び工事施行上の諸条件を勘案すると、その完成は、昭和六十年代になるものと思われる。
(四) 第三次全国総合開発計画の策定に当たつては、経済社会環境の変化に対応して、全国的な幹線交通網の整備について検討を行うこととしており、これに関連する近畿及び中国と四国を有機的に結ぶ交通体系の検討の際に、本州四国連絡橋の今後の整備について検討する所存である。
(五) 計量モデルについては、最近における経済社会情勢の変化を勘案した再検討を考慮している。
(六) 本州四国連絡橋の各ルート別事業費の概算額は、現時点において次のとおり推定される。

図 表

 また、完成後の計画輸送量等については、今後再計算する考えである。

二、について

(一)及び(二) 昭和四十九年九月の運輸省及び建設省の指示に基づき、同年十月、本州四国連絡橋公団に、本州四国連絡橋の建設が旅客船事業、関係船員等の雇用関係、船舶の航行安全等に及ぼす影響等を調査・検討するため、関係者及び学識経験者をもつて構成する「本州四国連絡橋に関連する旅客船問題等調査会」(以下「調査会」という。)が設置され、必要な調査が行われているところである。
 政府としては、調査会の調査結果を参考として関係行政機関により協議・検討を行い、本州四国連絡橋が旅客船業者等に及ぼす影響に関する総合的対策を講ずるよう努める所存である。
(三) 関係旅客船業界における若年船員の雇用難あるいは離職によつて、船舶の安全航行に支障をきたしているとは考えていないが、船員の確保が必要となる場合は、船員職業安定所の職業紹介によつて処置することといたしたい。
(四) 最近の旅客船の建造意欲の減退は、経済の沈滞により、輸送量が減少しているためと考えられる。
 船舶整備公団が融資を抑制している事実はなく、同公団は、老朽船の代替建造を推進して、旅客船の航行の安全の確保に努めているところである。
(五)及び(六) 本州四国連絡橋による旅客船業者への影響に伴う対策については、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(昭和三十七年六月二十九日閣議決定)」には含まれていないが、その重要性にかんがみ、調査会の調査結果を参考として、関係船員等の雇用問題等を含め、関係行政機関において協議・検討の上総合的対策を講ずるよう努めたい。
 しかしながら、問題の処理に遺憾なきを期するため、政府の具体的方針を決めるには、なお相当の日時を要する見込みである。
 なお、過去の架橋の事例を調査した範囲では、事業主体が補償した例はない。
(七) 本州四国連絡橋の建設工事中は、燈火、形象物等による工事区域の表示及び警戒船の配置等を行うとともに、必要に応じ、一般船舶の航行の制限及び巡視船艇による警戒を実施し、船舶交通の安全確保を図ることとしている。
 また、完成後の安全確保についても、橋梁の支間長及び桁下高を船舶交通の実態に合わせて十分確保するよう努めており、併せて航行援助施設及び接触防護施設を効果的に整備することとしている。