質問主意書

第76回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二七号

世田谷区三宿に計画中の法務総合研究所および寮建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年十二月十九日

下村 泰   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   世田谷区三宿に計画中の法務総合研究所および寮建設に関する質問主意書

 法務省は世田谷区三宿二丁目の法務省三宿寮敷地、約八、〇〇〇M2内に従来の寮、二階建延二、四二六M2を取り壊し、新たに法務省総合研究所庁舎(高さ一五・八Mに塔屋七Mで実質二二・八Mの六階建)と寮棟(高さ二一・四Mに塔屋七Mで実質二八・四Mの九階建)を建設する旨、昭和五十年三月二十八日に附近住民の一部を集めて計画説明を行い、これに協力をするよう要望した。
 その後、住民は本建築計画が東京都建築安全条例四の二に違反することを指摘し、法務省は設計を変更したが当初案と殆んど変らぬ規模の寮棟(高さ二一・七Mで延面積四、八一七M2の地下一階、地上実質七階建)と研究所庁舎(高さ一一・二Mで延面積五、二三九M2の地下一階、地上三階)を住民に提示したが、自然環境と住宅環境の破壊につながるものであるため次のことを質問する。

一、当敷地面積に対して計画案は大きく環境破壊につながるため庁舎の計画を中止すべく住民は望んだが法務省はこの変更案を認めぬ限り話し合いはむだであるからこれを打ち切り、直ちに工事に着工する旨を昭和五十年十一月二十日の話し合いで住民に通告し、話し合いを一方的に法務省側が破棄したというが真意はどうか。また今後、話し合いはしないのかどうか。

二、当地域は世田谷区指定の保護樹木と一帯をなすもので樹令一五〇年以上に達する樹木が多く貴重な自然環境である。法務省の計画によればこれら樹木を機械的に一部の場所に移植、若しくは伐採するものであり移植後の樹木の生育もむずかしいものである。また世田谷区では民有樹木の伐採にも区民の協力を得て樹木保存に成果をあげているが、この自然保護に対し法務省は計画を変更する意向があるのか。

三、世田谷区三宿二丁目附近は住居専用地域であり都内に残された良好な環境を破壊してまでも、寮建設ならともかく庁舎ビルを建設する必然性があるのか。

四、建築計画のある敷地は高台であり、周辺近隣ならびに広域に公害発生のおそれがある。すなわち当地近傍には光化学スモッグで有名になつた太子堂中学校があり国道二四六号線からの地理的条件から本計画実施後に光化学スモッグ発生のおそれが十分に考えられる。また近隣における電波障害のみならず広域電波障害も考えられるが、このような公害発生の源のある計画を科学的に検討し、安全を確めてから建築することが望ましいのではないか。法務省はこの基本的態度に基づいて実行する意志があるのか。

五、当地域周辺には有名な涌水があり、法務省隣接地域にマンションの建設が原因で一滴の涌水も出なくなり一部枯渇した例がある。
 近隣三宿神社には未だこの涌水が存在しているが法務省の建築によれば地下一階を含む計画であるため地盤沈下や水脈切断による涌水枯渇のおそれと周辺の井戸水枯渇が考えられるが、涌水についての法務省の対処策はいかがか。

六、環境保全には適切な土地利用が前提であり環境行政も積極的に参画して行うと政府統一見解がなされているにもかかわらず、法治国家でありながら法を守るべき政府機関の法務省が都条例に違反をしたり、自然環境を守るべき立場であるのにみずから破壊しようとしているのは実に残念である。また、地域住民の環境保全についての切なる願いを無視し国が過去に於いて犯した環境保全の誤りをまたここで犯そうとしている。
 総合的長期展望を忘れ無計画性に基づく法務省の本計画は理解できない。法務省の長期展望のもとに本計画がどのように位置ずけられているか提示されたい。

  右質問する。