質問主意書

第76回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二六号

沖繩返還軍用地の地籍問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年十二月六日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 河野 謙三  殿


   沖繩返還軍用地の地籍問題に関する質問主意書

 沖繩県における米軍基地の返還は、いわゆるコマ切れ返還、恣意的で無計画な返還等問題の多いところであるが、特に返還軍用地の地籍の混乱は極めて重大な問題である。この地籍の混乱は、戦災と米軍による強引な基地建設による原状破壊等にあり、基地提供を許した政府も責任は免れえない。
 地籍の確定は、戦争処理の問題として当然政府の責任でやるべきであり、私は、こうした観点から昭和四十九年十二月十八日に質問主意書を提出し、それに対する答弁書をえた。以来一か年近く経過した現在、いまだに地籍問題の解決をみていないのは極めて遺憾である。この問題は、憲法で保障されている財産権にかかわるものであるので、早急に解決を図るべきである。
 そこで、以下の諸点につき、政府のご見解を伺いたい。
 なお、何回か提出した私の質問主意書に対する政府の答弁は、抽象的で再質問をせざるをえない場合が多かつたので、その必要がないように、具体的かつ明確な答弁をお願いしたい。

一、地籍の確定作業は、前述のように、当然政府の責任で完全に処理されるべきものと思うが、現在、政府はいかなる処理をしているか。
 政府は、防衛施設庁に地籍確定作業を担当させ、防衛施設庁も、原状回復の一環として境界設定費を負担するだけで、実際の業務は関係市町村に委託する方法をとつているというが、事実か。事実だとすると、本来国の責任でやるべきものを他に転嫁するもので、妥当でないと思うがどうか。また、境界設定費の現在までの配分状況(額、配分先市町村等)及び配分を受けた市町村の委託業務の実施状況、そして今後の配分計画はどうなつているか。
 政府は、軍用地の返還にあたつては、地籍を明確にした上で地主に引き渡し、同時に完全な補償をするべきであると思うがどうか。

二、政府は、昭和四十九年十二月十八日の私の質問主意書に対する答弁で、境界不明土地問題の対策を統一的に推進するため、中央に関係各省庁による「沖繩境界不明土地問題対策連絡会議」を、現地には、関係行政機関、沖繩県、関係市町村及び関係地主による「境界不明土地対策現地連絡会議」を設置しているところであるといつている。これら二つの連絡会議は、いつ設置されたか。その構成はどうなつているか。またその権限はどういうものであるか。
 これらの連絡会議は、設置以来今日まで全く機能していないとの批判も聞いているが、現在までいかなる活動をして来たか。また政府として、これらの機関を十分に活用して来たと考えているか。
 境界不明土地問題をめぐる関係者の不安と混乱を防ぎ、問題の早期解決を図るため、これらの連絡会議の効率的活用を図るべきものと思うが、そのための具体的方法をどう考えているか明確に答えて貰いたい。

三、最近政府は、沖繩県における返還軍用地の管理費の補償について、原則として物件撤去の日から起算して一年間の借賃相当額を支払い、その間に集団和解が成立しない場合、残り一年間に限つて借賃の十分の一を支払うことを決定したと聞いているが、事実か。事実だとすると、管理費の補償を一律的に取り扱う理由、一年間に限つて借賃の十分の一を支払うとするときの一年間に限る理由、借賃の十分の一を支払うこととした理由は何か。
 管理費は、日米安保条約と地位協定によつて返還される軍用地の原状回復がなされるまでの間、地主に経済的損失を補償し、あわせて財産権を保障するため国が土地の賃貸料額を補償するものであると思うがどうか。そうだとすると、管理費は、返還された土地の利用が可能になるまで支払われるべき性質のものであり、補償期間を一律に定めるべきものではないと思うがどうか。また、返還軍用地の地籍確定のため関係地主が集団和解に取り組むにしても、個々の返還土地について地籍問題の特殊性や困難性が異なることからも、一律に定めるべきでなく、せめて地籍確定作業が終了するまでは管理費を支払うべきものと思うがどうか。

四、地主及び関係市町村が行う跡地利用に要する経費の財源について、特別の措置を講ずるべきものと思うがどうか。

五、跡地利用計画、区画整理事業、農地改良事業等と並行した地籍問題解決を伴つた特別立法措置が必要であると思うがどうか。

六、仮りに、政府のとつている方式で地籍確定がなされたとき、それは国土調査法及び不動産登記法に基づく地籍調査として認定されるのか。

  右質問する。