質問主意書

第75回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質七五第一五号

  昭和五十年七月八日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員青木薪次君提出電業社の労使紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員青木薪次君提出電業社の労使紛争に関する質問に対する答弁書

一、について

1 株式会社電業社機械製作所(以下「会社」という。)の三島工場においては、従前からあつた労働組合が、昭和四十八年三月に総評全国金属労働組合に加盟し、名称を総評全国金属労働組合静岡地方本部電業社支部(以下「支部」という。)に改めたが、その際、会社による支配介入があつたとして、支部等は、同年四月、静岡県地方労働委員会(以下「静岡地労委」という。)に対して不当労働行為救済申立てを行つた。この事件については、昭和四十九年三月に労使間で和解が成立し、同申立ては同年四月に取り下げられたと聞いている。
2 その後、団体交渉における交渉委員の員数の問題等をめぐつて団体交渉が続けられ、昭和四十九年年末に至り、従来交渉委員の員数を労使各六名としていたのを各十一名に増員することについて、労使間の合意が成立したが、組合側の交渉委員の中に静岡県労働組合評議会及び三島地区労働組合会議の代表を含めるかどうかについては労使の主張が対立し、昭和五十年三月五日の団体交渉を最後に、交渉は中断していると聞いている。
 なお、同年六月十八日、支部を脱退した七十七名の組合員が、新たに電業社労働組合を結成したと聞いている。

二、について

 会社は、質問のような事実のあつたことを否定しているが、仮にそのような事実があつたとしても、そのことだけで直ちに労働基準法及び職業安定法の違反となるものではない。
 また、そのような行為が労働組合法第七条に違反するかどうかは、関係労働組合等の申立て等に基づき労働委員会等の権限ある機関が判断すべきことであり、政府として、とかくの見解を述べることは差し控えたい。

三、について

 会社の警備課職員の雇入れの問題について、昭和五十年六月二十六日、静岡県を通じて調査を実施したところ、会社では、警備課の職員は会社が縁故によつて採用したものである旨を回答しているが、詳細について更に調査することとしており、この雇入れが労働法規に違反するかどうかについては、その結果をまつて判断することとしている。
 なお、質問のような事実が労働組合法第七条に違反するかどうかは、関係労働組合等の申立て等に基づき労働委員会等の権限ある機関が判断すべきことであるので、政府として、とかくの見解を述べることは差し控えたい。

四、について

 労働委員会に対する不当労働行為救済申立てについては、支部等から、昭和四十八年四月には静岡地労委に対して会社が支配介入を行つたとして、また、昭和五十年五月には東京都地方労働委員会に対して会社が団体交渉拒否を行つたとして、それぞれ不当労働行為救済申立てが行われ、前者については、昭和四十九年四月、和解により申立てが取り下げられたが、後者については、現在、東京都地方労働委員会に係属中であると聞いている。
 労働委員会に対するあつ旋申請については、支部から、静岡地労委に対して、昭和五十年四月に団体交渉の開催に関して、また、同年六月に、賃金引上げに関して、それぞれあつ旋申請が行われ、前者については、会社があつ旋の受入れを拒否したため同年五月にあつ旋が打切られたが、後者については、現在、係属中であると聞いている。

五、について

 昭和五十年六月七日、会社従業員二名から沼津人権擁護委員協議会所属の人権擁護委員に対し、会社から日付空白の退職願を提出するよう要求されたので、やむなく提出したところ、後日これが問題となり退職願の返戻を受けたが、今後どうなるであろうかとの相談があり、右人権擁護委員は、所要の助言をしたうえ、これを静岡地方法務局沼津支局に報告した。そこで、同支局では、退職願の提出に際して強要にわたる行為があつたかどうかについて、今後、静岡地方法務局と共同で調査することとしている。

六、について

 本紛争に関して、現在までのところ、支部組合員等から所轄労働基準監督署に対し、申告、告発等が行われた事実はないが、労働基準法等に違反する事実が明らかになつた場合には、労働基準監督機関としては厳正な措置を講ずる所存である。
 なお、不当労働行為救済命令が確定した場合及び不当労働行為救済命令が確定判決によつて支持された場合には、その違反に対しては罰則の適用があるものとされている(労働組合法第二十八条及び第三十二条参照。)。

七、について

 会社は、団体交渉の席上で会社代表が組合側から交渉委員としての信用を傷つけられるような言辞を浴びせられたとして、その取消しと謝罪文の提出がなされるまでは、団体交渉の再開には応じられないとの態度をとつていると聞いている。
 政府としては、これまで、関係機関を通じ情勢のは握等に努めてきたところであるが、今後、労使当事者の自主的解決への努力を期待しつつ、紛争の解決促進のため採り得る諸措置について更に検討を進め、その早期かつ円満な解決のために努力してまいりたい。