質問主意書

第75回国会(常会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質七五第四号

  昭和五十年二月二十五日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員小平芳平君提出カネミ油症患者の救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小平芳平君提出カネミ油症患者の救済に関する質問に対する答弁書

一について

(1) カネミ油症の病状の実態のは握、治療法の研究等については、国は、昭和四十三年度より、患者の追跡調査、治療法の開発研究等を実施してきている。昭和四十三年度から昭和四十九年度までに支出した研究費は次のとおりである。

昭和四十三年度
 米ぬか油中毒に関する疫学的研究   二〇〇万円
 油症の発生防止及び診断治療に関する特別研究   二、二六五万二、〇〇〇円
昭和四十四年度
 油症の薬物対策に関する研究   一五〇万円
 油症の本態とその治療法に関する特別研究   三、〇六七万七、〇〇〇円
昭和四十五年度
 油症の治療法と予後に関する研究   一、〇〇〇万円
昭和四十六年度
 油症の治療法及び油症患者の追跡調査に関する研究   五九八万九、〇〇〇円
 PCBの慢性毒性等に関する研究   一、八三一万九、〇〇〇円
昭和四十七年度
 油症の治療法と油症患者の追跡調査に関する研究   九五〇万円
 PCBの慢性毒性等に関する研究   三、七二二万円
昭和四十八年度
 油症の治療法と油症患者の追跡調査等に関する研究   二、〇四〇万円
 PCBの慢性毒性に関する研究   八三五万円
昭和四十九年度
 油症の治療法と油症患者の追跡調査等に関する研究   二、九八五万円
 PCBの慢性毒性に関する研究   八七〇万円

(2) 特定疾患対策は、原因が不明であつて、治療方法が確立していない疾患を対象としているため、カネミ油症は特定疾患としての取扱いはしていないが、油症が過去に例をみない特殊な疾患であることから、国は、事件発生以来研究費を支出し、治療法の開発研究等に努めている。
(3) カネミ油症患者におけるPCBの内臓等への影響については、病理解剖例が極めて少ないため十分な知見が得られていないが、油症治療研究班によるこれら数例の解剖例においては、共通に認められる内臓所見はないが、主として、脂肪の多い腸間膜、皮膚等にPCBが認められたという報告がある。
 また、新生児油症の特徴としては、出生時体重の少ないこと、皮膚粘膜の色素沈着等が報告されている。

二について

(1) 油症診断基準については、その後における調査研究の成果をふまえ、さらにこれを全体的に再検討し、その結果、昭和四十七年十一月に全面的な改定を行つた。
 これは、従来の診断基準が皮膚所見等の臨床症状を中心としたものであつたのに対し、臨床検査等の項目を加えた適確な基準に改めたものである。
 この新診断基準については、更に昭和四十九年十月にも再検討を行い、その結果、現在においても適当であるとの結論に達するとともに、血中のPCB濃度の測定が診断の有力な手段であることが確認されたところであり、この基準に基づいて検診を実施し、患者の適確な把握に努めているところである。
 新診断基準実施後、新たに患者となつた者は、昭和四十九年十一月末現在一八六名となつている。
(2) 各年ごとの累計患者数は、昭和四十三年六七六名、昭和四十四年一、〇〇一名、昭和四十五年一、〇五六名、昭和四十六年一、〇八一名、昭和四十七年一、〇九七名、昭和四十八年一、二〇〇名、昭和四十九年(十一月)一、二八三名であり、また、昭和四十九年十一月末における地域別患者数は、福岡県四九七名、長崎県四七九名、広島県八七名、高知県四六名、山口県三六名、大阪府二四名、佐賀県二二名、奈良県二一名、愛知県一四名、大分県一三名、愛媛県一〇名、千葉県六名、兵庫県六名、島根県六名、岡山県四名、東京都三名、鹿児島県三名、熊本県二名、岐阜県一名、京都府一名、滋賀県一名、鳥取県一名である。
(3) 中毒事件の発生当時から昭和四十四年七月までの間における届出者数は一四、三二〇名であつたが、このうちカネミ製品を使用していなかつた者等が九八六名あり、更にカネミ製品を使用した者一三、三三四名について健康診査その他の方法による調査の結果、患者とされた者は九一三名であつた。その後においても、受診を希望する者に対しては検診を行い、患者の適確な把握に努めてきたところであるが、特に希望の多い福岡県、長崎県及び山口県においては、昭和四十九年度に、事件発生当時の届出者に対し検診の希望調査を行い、希望者の検診を実施している。
 なお、前記のとおり、昭和四十九年十一月末における患者数は一、二八三名である。

三について

 カネミ油症患者の治療費、治療雑費等については、カネミ倉庫株式会社が支出している。
 本件については、現在民事裁判で係争中であるが、昨年十月以来、カネミ倉庫株式会社社長と油症患者とが再度にわたり話し合いの場をもつたと聞いており、このことは解決への一歩前進と受け止めているところである。今後、カネミ油症患者と関係企業の両者から話し合いのあつせんの要請があれば、両者の考えを十分に聴取して、カネミ油症事件が速やかに解決されるよう努力いたしたいと考えている。
 なお、生活の困窮しているカネミ油症患者については、世帯更生資金等の貸付が実施されているところである。
 また、食品事故による健康被害者が速やかに救済される体制の整備については、昭和四十八年四月に、食品事故による健康被害者救済の制度化研究会を設置し、昨年七月にそれまでの検討状況の報告として中間報告がまとめられたところであるが、この問題については、引き続き検討を行つており、その結論を得て慎重に対処してまいりたいと考えている。