質問主意書

第75回国会(常会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質七五第三号

  昭和五十年二月二十一日

内閣総理大臣 三木 武夫   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関する再質問に対する答弁書

一、について

(1) 戦傷病者戦没者遺族等援護法による援護は、国と一定の使用関係のあつた者又はそれに準ずる者に対し、使用者としての国が国家補償の精神に基づき行つているものである。
 対馬丸による疎開中遭難した学童は、当該疎開の目的、遭難地域等を考慮しても、前記のような身分関係があつたとは認められない。
(2) 「それに準ずる者」とは、法令上の義務、国の機関の要請等により軍事に関する業務に従事する等国との関係において被用者に準ずる地位又は被用者と同様の実情にあつた者をいうものであり、具体的には旧国家総動員法の規定に基づく被徴用者及び動員学徒、国民義勇隊員、旧防空法の規定による命令により防空業務に従事した防空監視隊員、軍事に関する業務に従事した満洲開拓青年義勇隊員、もとの陸海軍の要請に基づく戦闘参加者等をいうものである。
(3)及び(4) 対馬丸遭難者の遺族に対する見舞金は、疎開学童及び引率教師の遺族七百六十一人に対し、昭和三十七年に一人当たり二万円を、学童の付添者の遺族四百八十六人に対し、昭和四十七年に一人当たり三万円を支給した。
 見舞金の額は、昭和三十七年の支給分については、戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用を受けない対馬丸遭難死没者の遺族の心情を考慮してその額を決定し、また昭和四十七年の支給分については、前回支給額を基礎とし、その後における物価変動を考慮して決定したものである。
(5) 疎開船対馬丸遭難死没者に対する叙勲は、次のとおり行われている。

昭和四十七年五月二日付け     六二七人
昭和四十八年九月二十六日付け   三〇六人
計                九三三人

 叙勲は、国家又は公共に対し功労ある者に行われるものであり、国との間の使用関係の有無には関係ないものである。
(6) 本年一月六日付けの質問主意書に対する答弁書においては、同主意書一の「対馬丸遭難死没者の遺族の救済について」に対して全体として答弁したものである。

二、について

(1)及び(2) 沈船中の遺骨引上げのためには、潜水夫による潜水作業が必要であるが、現在のところ潜水可能な水深は五十メートル程度であり、これより相当深く沈没している対馬丸中の遺骨の引上げを行うことは技術的に不可能である。
(3) 政府主催で行つている全国戦没者追悼式は、遺骨の収集が行われていない死没者も含め全戦没者を対象としており、対馬丸遭難者についてのみ特別の慰霊祭等を行うことは考えていない。