質問主意書

第75回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

国立滋賀医科大学設立に係る地方公共団体の設立費用分担等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年五月二十四日

目黒 今朝次郎   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   国立滋賀医科大学設立に係る地方公共団体の設立費用分担等に関する質問主意書

 国立滋賀医科大学設立に係る滋賀県並びに大津市の費用分担等に関する次の諸点について、政府の方針を明らかにされたい。

一、本年四月開校(仮校舎)の国立滋賀医科大学設立に関しては、地方自治法第二条十項に「国立の教育及び研究施設に関する仕事は、地方公共団体が処理する権限はない」と規定され、地方財政法第十二条には、「国の教育施設及び研究施設に関する経費」については「法律又は政令で定めるものを除く外、国は、地方公共団体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない。」と定めている。この規定から、国立医科大学設置に要する費用は、全額国の財政負担で行われるのが当然と考えるが、どうか。

二、しかるに、文部省は、野崎前滋賀県知事に対し三十万平方米に及ぶ学校敷地の無償提供を求め、野崎知事は「自ら申出る形」でこれに応じられていたようであるが、これは法に反しなかつたか、どうか。
 その後、大津市市議会議員等からその違法を指摘され、「当面賃借りとし、後年国の予算で買取る。」と措置を変更されたやに聞いている。こうした当初の国の考え方、措置の仕方は違法である。たとえ、県側の「自主的な寄附申し出によるもの」と体裁をつくろつても、政府はその予算を計上していない事実に照らしても、その違法はまぬがれないと思うが、どうか。

三、国立滋賀医科大学の設置は、滋賀県等地方からの度重なる要請、陳情により設立が決定されたものではなく、昨年、田中前総理大臣が国会冒頭の施政方針演説の中で述べられたように、政府が、福祉行政の伸長を図るための一環としての医療施策として、「全国十三に及ぶ医科大学未設置県に年次的にこれを設ける」とされた内の一校である。従つてこの政府の方針にのつとれば、当然国が力を入れ、全経費を計上し、早期に完成させるものでなければならない、と考えるが、どうか。

四、国立滋賀医科大学設置にかかわる滋賀県及び大津市の負担は、幾十億円とも百億円を超すとも言われている。更に政府は国立滋賀医科大学の関連教育病院として、大津日赤病院の拡充整備を滋賀県に指示し、県はこの巨額の費用の一部を大津市に負担させようとしている。しかし大津市は、市立の病院をもち、その経営に四苦八苦しており、効率的な適正規模までの早急拡充も検討されながら、国の起債などの援助がないために赤字増大に悩まされている現状である。
 このような財政的窮乏に置かれている地方公共団体に巨額の費用を負担させることについて、政府はどのように考えるか。

五、直接建設に要する費用でないから法には違反しないとして、国が地方公共団体に対し、その供給施設整備の費用負担を求めることは、「国立の教育及び研究施設に関する事務(建設費用を含む)は、地方公共団体にその経費を負担させるような措置をしてはならない」とある法の趣旨に反する悪賢い脱法的措置であると考えるが、どうか。

六、国立滋賀医科大学の敷地を滋賀県から借用するに当り、地方財政法第二十四条に定める「国が地方公共団体の財産を使用するときは、その定めるところにより国はその使用料を負担しなければならない」にもとづき、正規の規定料金を支払う意志があるのか、どうか。また、同条に定める「当該地方公共団体の議会の同意」を得て、使用料の減額又は免除を得ようと考えているのか、どうか。

七、国及び地方公共団体は、それぞれ法に定める行財政区分に従い、自己の責任を全うするよう全力を尽すことが、民主政治確立の根本の一つである。この点、国立滋賀医科大学設立にかかわる国の考え方、措置の仕方には根本的な反省と、即刻是正の要があると思われるが、どうか。

  右質問する。