質問主意書

第75回国会(常会)

質問主意書


質問第五号

大腿四頭筋拘縮症対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年二月二十日

小平 芳平   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   大腿四頭筋拘縮症対策に関する質問主意書

 大腿四頭筋拘縮症対策に関しては、政府においても、(1)患児の把握 (2)原因の究明 (3)治療法の研究 (4)予防対策の確立 (5)患児に対する当面の治療等について、一斉健康診査の実施、研究班の設置、育成医療の適用等の措置が進められているところと承知しているが、現に患児を持つ親は、治療の可能性と予後の見通しに不安をいだき、また受療機会の確保と治療を受けるための経済的負担について心配している。
 他方、健康児を持つ親もまた、拘縮症が、多くの場合注射が原因だとされていることから、子どもが病気にかかつた場合に受ける一般の医療に対して危惧をもち、そのことが一般的に医療への不信へつながりつつある。
 これらの不安、心配、危惧、不信は一刻も早く解消することが行政の責務であると考えるので、とりあえず、次の各項について質問する。

一 患児の把握について

 さきに決定をみた「大腿四頭筋拘縮症診断基準」に基づいて各都道府県が行つている健康診査結果の第一次集計が、一月末現在でまとめられることになつている。早急に、(1)地域別に (2)年齢別・男女別 (3)症状別の集計結果を公表されたい。
 なお第二次以降の集計もその都度公表願いたい。

二 治療の可能性と予後の見通しについて

 多くの親は、棒のようになつた脚は、もう一生治らないものと悲嘆にくれている。
 研究班の報告書によれば、「本症の予後」として「重症例を放置すれば膝変形、膝蓋骨脱臼などをおこすことがあるが、幼児期から適切な治療を行えば、予後は一般に可良である。」とされている。
 しかし、これでは親の不安を和らげることにならないので、この趣旨を徹底させて、治療への希望をもたせる必要がある。そのためには、(イ)なおつていつた例 (ロ)なおらなかつた例 (ハ)かえつて悪くなつた例の紹介を行うことがもつとも効果的であると考える。
 その具体的な施策を示されたい。

三 受療機会の確保について

 注射を行う医師は全国にまたがつているのに、育成医療機関、整形外科専門医は限られているから、患児のなかには、治療を受けるのに泊りがけで行かなければならないものが多く出ている。
 注射が機縁となつて引きおこされたものであること、おそらく万をこえるだろうと推定される多数であることを考えると、特段の行政的配慮を加えるべき性格の疾病である。
 したがつて、単に育成医療によつて自己負担分を公費でみるということにとどめることなく、

(1) 受療機会の確保について、例えば交通費の追加負担、所得制限の緩和についても特別の措置を講ずべきだと考えるがどうか。
(2) なお育成医療の予算わくにしばられて、受療が拒否されることのない旨を周知させる必要もあるので、併せて確認しておきたい。
(3) 記録によれば、四十年に福井県で、四十四年に愛知県で集団的に発見され、示談あるいは訴訟によつて、損害賠償の面だけに切りがつけられたとあるが、これら過去の事例も、もちろん今回の分と同様に取り扱われるものだと了解してよいか。

四 未然防止対策について

 注射の部位、回数、注射を受けた年齢、注射薬の成分等との関連を究明しなければ根本的原因はわからない、したがつて未然防止対策もつくれない、とする科学的な研究姿勢は、学問的にはもつともなことであるが、子どもをもつ親たちにとつては、子どもの病気はいつ起るか判らないし、そうなれば今日明日にでも注射を含む医療を受けざるを得なくなる。科学的な原因究明によつて確定されるだろう予防対策を待つゆとりはないのである。行政は医療に介入できないといつた一般原則で、何もしないのでは、親自身が自衛のために医療への介入をはじめるか、あるいは訴訟によつて間接に医療のあり方に反省を求める道を選ぶしかなくなつてくる。
 行政としては、とりあえず、

(1) 注射の安易な施用の是正
(2) 医療に基づく副作用(事故)のモニター制の採用
(3) 医師の永久免許のあり方の再検討と卒後研修の採用

について、その対策を考えているか、具体的な用意があれば示されたい。