質問主意書

第75回国会(常会)

質問主意書


質問第三号

疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年二月四日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関する再質問主意書

 疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関しては、さきに一月六日質問主意書(質問第一号)を提出したが、それに対する答弁書を読む限り、政府の誠意が感じられず、又質問に対して答えていない部分もあり、極めて不満である。したがつて、以下の諸点につき改めて政府の見解を伺いたい。

一、対馬丸遭難死没者の遺族の救済について

(1) 戦傷病者戦没者遺族等援護法による援護の適用範囲は国との間に一定の使用関係のあつた者又はそれに準ずる者に限られ、対馬丸遭難死没者は学童疎開の途中で被災したものゆえに国との間に右の身分関係がなく、同法の処遇対象とする考えはないというが、当該疎開は本土にみられたような通常の疎開とは異なり、戦略目的から国策として決定強行され、疎開者はその目的に協力させられたものである。従つて、通常の疎開と同一に扱うことは妥当でないと思うがどうか。
 又、遭難地域が既に戦闘地域として指定された戦場であり、かつ攻撃を知りつつも全く逃げ場のない海上であつた事実等を考えあわせるとき、国はその責任を免れることはできないと思うがどうか。
(2) 同法にいう「それに準ずる者」の具体的内容を明示してもらいたい。
(3) 政府は、疎開学童及び引率教師の遺族に対しては、昭和三十七年に、疎開学童の付添者の遺族に対しては昭和四十七年に、見舞金を支給したというが、一人につきいくらをいく人の者に支給したか、その金額及び人数を示してもらいたい。
 又、支給額の算定基準を示してもらいたい。
(4) 沖繩現地における死没者に対しては、同法第二条第三項第三号の規定に基づき、学校適齢者以上は準軍属として処遇されていることと比べると、その救済措置と対馬丸遭難死没者の遺族のそれとの格差は、あまりにも不均衡と思うがどうか。
(5) 政府は、当該遭難死没者に対して、叙勲をしたことがあるか。あるというのであれば、政府自身、国と遭難死没者との間に一定の使用関係を認めたことになると思うがどうか。
(6) 前述の質問第一号において、直接対馬丸送り出し業務に関係した浦崎純氏の証言に関する質問をしたが、答弁が一言もなかつた。いかなる理由によつて答弁しなかつたのか。

二、遺骨の収集等について

(1) 沈没船体の所在が明らかであるからには、遺骨の収集は当然なされるべきである。船体の引上げとは別に、遺骨のみの引上げはできないか。できないというのであれば、その理由は何か。
(2) 又、船体引上げの可能な水深は何メートルか。素人にもわかるように具体的にかつ納得のいくように示してもらいたい。
(3) 対馬丸遭難死没者に対する政府主催による現地海上供養は、政府主催による全国戦没者追悼式を行つているので不要というが、この追悼式は遺骨が収集された死没者を中心とする一般論であつて、対馬丸遭難死没者は特別である。
 遺族の心情に応えるためにも海上供養は行うべきだと思うがどうか。それさえも行わず一般論で片付けられては、魂も浮かばれないと思うがどうか。

 以上の質問に対し、誠意ある答弁を要求する。