質問主意書

第75回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十年一月六日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   疎開船対馬丸遭難死没者の処遇に関する質問主意書

 沖繩県学童の県外疎開は、沖繩防衛戦略上の国策として、時の東条内閣の閣議で決定強行された。そして、その学童を乗せた疎開船対馬丸は、昭和十九年八月二十二日午後十時十二分米潜水艦の魚雷攻撃を受け、奄美大島悪石島沖で沈没し、学童七百三十六人、引卒教師及び世話人二十四人その他附添人七百二十四人が死亡した。これら死没者の遺族に対し、国は昭和三十七年及び昭和四十七年に見舞金を支給したというが、その額は学童一人につき二万円、一般遭難者一人につき三万円にすぎない。遺族の心情を考えると、これではあまりにも酷である。よつて以下の点につき、見解を伺いたい。

一、対馬丸遭難死没者の遺族の救済について

(1) 対馬丸遭難死没者は、戦闘から退避するために行われた疎開中での事故ゆえに国との間に使用関係がなく、したがつて戦傷病者戦没者遺族等援護法上の準軍属として処遇することは不適当であるというのが政府の見解であると聞いている。しかし当該疎開は、前述のように単なる戦闘からの退避の目的で行われたものでなく、戦略目的から国策として決定強行され、疎開者はその目的に協力させられたものである。よつて国との間に使用関係を認める根拠はあると思うがどうか。
(2) 仮に国との間に使用関係が認められないとしても、当該疎開が国策として強行された事実、責任ある県当局者から帝国軍艦をもつて安全に目的地に送り届ける旨の説明があつたにも拘らず、一朝有事の際の装備がほとんどない老朽貨物船を充てた事実、遭難地域が既に戦闘地域として指定された戦場であり、かつ攻撃を知りつつも全く逃げ場のない海上であつた事実等を考えあわせるとき、国はその責任を免れえないものであると思うがどうか。
(3) また、準軍属として処遇せられている沖繩現地における死没者の救済措置との格差は、(2)に述べた事実を考えあわせるときあまりにも不均衡と思うがどうか。
 かかる不均衡を是正するために、対馬丸遭難死没者に対し前述の見舞金のほかに何らかの救済措置をとる考えはないか。
(4) 直接対馬丸送り出し業務に関係した元沖繩県人口課長浦崎純氏は、最近、実際に輸送に充てられた船は、学童疎開に充てる艦艇として検分させられた対馬丸とは全く別の老朽貨物船であつたと証言している。この証言を真実と考えるか。真実であれば、いかなる責任をとるつもりか。
 証言が虚偽であると考えるならば、具体的理由を挙げて貰いたい。真否不明であれば、政府の責任でその真否を調査すべきものと思うがどうか。

二、遺骨収集等について

(1) 遺骨収集のため、船体を引き上げる計画はあるか。それは技術的に可能か。不可能というのであれば、その理由を具体的に明示して貰いたい。
(2) 対馬丸遭難死没者は、国策の犠牲者である。よつて政府主催による現地海上供養を行うべきものと思うがどうか。

  右質問する。