質問主意書

第74回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

自閉症児・者の早期発見・早期療育体制および福祉対策の確立に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年十二月十一日

塩出 啓典   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   自閉症児・者の早期発見・早期療育体制および福祉対策の確立に関する質問主意書

 親をはじめ他人との感情のふれあいができず、人や言葉の認知障害を有するいわゆる「自閉症」の児童成人は、全国に四千人から二万人いるといわれている。
 自閉症は、早期発見・早期治療を行えば、治すことができるといわれながら、その対策は確立されていない。
 これら自閉症児に対して、現在三ケ所の自閉症児施設で治療訓練が行われ、情緒障害児学級等において教育が行われているが、充分な国の施策となつていない。
 とくに最近では自閉症児は年長化している。にも拘らず、年長者に対する福祉対策は放置されており、家庭において親の負担となつているのが現状である。
 このような現状を打破し、自閉症児の早期発見・早期治療体制を確立し、年長者にも医療と福祉を保障する体系をすみやかに整備する必要がある。
 以上の観点から次の諸点について質問を行うので、政府の誠意ある答弁と実行をお願いしたい。

一、早期発見・早期療育体制の確立

(1) 自閉症の発症をできるだけ早く発見し療育に結びつけるために、健診体制の強化が必要である。現在母子保健法にもとづいて、乳幼児健診、三歳児健診が行われているが、自閉症の発見については、不充分といわざるをえない。今後健診体制の強化をどう考えているか。
(2) また、児童相談所、精神衛生センター、病院等の連携体制の強化が急務と考えるが、政府は、どのように指導強化してゆくのか、お伺いしたい。
(3) 自閉症を診断する医師により診断名が異なるように、自閉症の概念はあいまいであり、このことが自閉症対策を困難にしている。自閉症の診断基準をすみやかに決めるべきである。政府の考えをききたい。
(4) 児童精神科医療に従事する医師、看護婦等の養成確保をはかる必要があるが、政府の具体的方針をききたい。
(5) 児童精神科医が少ない原因の一つは、診療報酬における小児加算に問題があるためであると考えられる。これに対する考えと改善方法についてお伺いしたい。
(6) 現在、精神病院に併設された三ケ所の自閉症児施設で療育が行われているが、今後政府はどのように療育の場を整備してゆく考えなのか。精神病院に併設の形をとるのか、福祉施設を活用するのか。福祉施設で行う場合、医療の面、教育の面をどうするのか。明年度及び将来の具体的整備計画と、それに伴う財政措置についてお伺いしたい。
(7) 各府県に少なくとも一ケ所の児童精神科を持つ病院を整備し、診断および治療のセンター的役割をする医療施設を設ける必要がある。現状と整備計画についてお伺いしたい。
(8) 自閉症児を一般児童と接触させながら療育を行う場として、幼稚園・保育所は重要な役割を荷なつている。障害児教育・障害児保育を行う所へ国は積極的な財政援助を行う必要があるが、今後どのように充実させてゆくのか。
(9) 自閉症の研究は、現在、心身障害研究費の異常行動児の療育費のなかで行われている。原因究明と治療体系確立をさらに強化する必要がある。政府の今後の方針をききたい。

二、年長児・者の福祉施設の整備

 自閉症児は、いまでは成人期に達するものが多くなつてきている。しかしこれに対する福祉施設はない。
 児については、厚生事務次官通達により自閉症児施設が設置運営されているが、年長者についての療育のめやすとなるものはない。
 精神病院で大人と一緒に治療が行われるのは自閉症児・者にとつて好ましいことではない。
 医療と福祉と教育を保障するためには、どのような施設を整備してゆく考えなのか。
 また通園施設の整備についてはどのように考えているのか、お伺いしたい。

三、自閉症研究専門委員会の中間報告について

 先に自閉症児・者の福祉についての中間答申が行われ、具体的施策について種々指摘がなされている。政府は実行への具体策を打ち出すべきであると思うが、どうか。考えをききたい。

  右質問する。