質問主意書

第73回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

当面する政治課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年七月三十一日

二宮 文造   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   当面する政治課題に関する質問主意書

 今回の参議院選挙において、政府自民党はなりふりかまわない「企業ぐるみ選挙」を強行した。にも拘らず、自民党は改選議席を大きく下まわつたことは、明らかな事実である。
 今こそ、政府自民党はこの現実を冷静に受けとめ、深く反省をし、国民のための政治の実現に再出発すべきである。
 しかし、参議院選挙後行われた本国会における政府自民党の姿勢は、総理の所信表明も代表質問も行おうとせず、全く反省の色を示さず、国民の審判に答えようとしていないことはまことに残念といわなければならない。解決せねばならぬ難問が山積している今日、ここに公明党を代表して、国民に代つて以下の諸点についての質問主意書を提出する。政府の真剣なる答弁を強く要求するものである。

一 政治姿勢について

1 今回の通常選挙にみられる如くに「十当七落」、「企業ぐるみ選挙」とまでいわれた金権選挙の実態が、国民の多くの批判をあびたが、政財界ゆ着の反国民的な、憲法違反の疑いの強い「企業ぐるみ選挙」はやめるべきであると思うが、どうか。
2 組織的で大掛りな買収事件で、史上空前の違反者を出した、糸山英太郎氏に対して党の総裁として「辞職勧告」あるいは、事実が究明されるまで「登院禁止」を勧告すべきであると思うが、どうか。
3 国民協会の各業界に対する月額会費の大幅増額割り当てぶりは、増額幅が平均でも四・一倍、最高は六十倍にもなつている。このような実態では総理のいう「自発的な浄財の拠出」とはいえない。このような国民協会の姿勢は改めるべきではないか。
4 政治資金規正法五条二項で会費と寄付を区別しているが、例えば新日鉄は最高月額十万円を八十口とし毎月八百万円を会費として出しているといわれている。このような多額の金を会費として、金の出所を明らかにしない姿勢はゆるせない。この際、会費と寄付との区別を明確にすべきであると思うが、どうか。
5 六月からの電気料金や鋼材、今月に入つてからの私鉄運賃など、公共料金的性格をもつこうした値上げは単なる経済情勢のあおりによるだけでなく、政治献金の見返りの要素が作用していると思うが、どうか。
6 「巨額の政治献金をしている東京電力が経営悪化を理由に料金値上げをしたのは納得できない」として電気料金の「一円不払い運動」が行われているが、これこそ政財界ゆ着の批判であると思うが、どうか。
7 政財界ゆ着の金権政治を改め、政治資金の公開原則の徹底と政治資金の直接規制(政治献金できるものを政党と個人に限り年間五十万円までとする)を断行すべきであると思うが、どうか。
8 政治資金規正法改正にあたつて、第五次選挙制度審議会の答申についてどう考えるのか。また、選挙区制の問題と切離して、衆・参両院の定数是正とあわせて、次の通常国会に提出する意思があるか、どうか。

二 物価問題について

 解決しなければならない最重要課題は物価の安定である。昨年暮れの「作られた石油危機」を契機にわが国の経済情勢は、最大の危機に直面した。企業は、石油危機に便乗した値上げの経営姿勢に転じたことと、財政、金融政策が適切に行われなかつたなどによつて、物価は狂乱高騰し続け、国民生活はまさにパニック状態を露呈した。
 六月の卸売物価上昇率は、対前年同月比で三五・三%を示し、同じく消費者物価上昇率も二三・六%の上昇率になり、今なお高騰し続けている。また、今年度に入り、電力、私鉄などの公共料金が大幅に値上げされ、今後、国鉄、ガス、タクシー、消費者米価、医療費、郵便料金、電信電話料金等の値上げが予想されている。このような物価狂騰により家計支出は急増し、所得の格差は増々開くなど、悪性インフレによる弊害は社会のいたるところに露呈している。特に、社会保障生活者などは、深刻な生活苦にあえいでいる。今日の異常な物価高から国民生活を防衛するため、国民の要求している「福祉社会の実現」のためにも、物価対策を最重要課題として、早急に総合的な諸施策を確立し、実施すべきである。以上の観点から、私は、政府に対し次の諸点に留意し、その実現にあたるよう強く要求する。

1 物価安定のため、適確な総需要抑制政策の実施を図る。

(1) 昭和五十年度予算は、物価安定を最優先に財政支出の配分を行い、福祉の充実、基盤の整備を図る。
(2) 物価安定実現のため、総需要抑制策は堅持する。金融政策は、引き続き引締め基調を続けるとともに、財政、特に公共投資についても同様極力抑制を維持する。但し、中小零細企業などについては、弾力的に配慮する。
(3) 設備投資については、将来の需給関係を正確に予測し、それに基づき、適切な計画を企て、不要不急の投資については極力抑制すべきである。

2 公共料金の値上げは行わない。

(1) 公共料金の値上げによる国民生活への影響は、きわめて大きく、政府主導型の第二の狂乱物価を引きおこすおそれがある。そのような事態を回避するため、今後、公共料金の値上げについては、当分の間、抑制すべきである。
(2) 食管法の本旨である二重米価制度にもとづき、今回の生産者米価の引上げに伴う消費者米価の引上げは極力抑制すべきである。

3 経済見通しと適切な経済計画を策定すべきである。

 四十八年作成の「経済社会基本計画」(活力ある福祉社会のために)は、昨年の石油危機に伴うインフレにより、実績との隔離は顕著である。従つて、経済社会基本計画を全面的に改正し、国民のコンセンサスである福祉社会実現の新しい経済計画を早急に策定すべきである。

4 公正で自由な競争の促進を図り、物価の安定を図る。

(1) 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独占禁止法)を改正し、(イ)価格の引下げ命令権、(ロ)企業分割命令権、(ハ)原価公開制の新設、(ニ)大手商社の株式保有の制限、(ホ)不当な価格の値上げ及び不正行為等に対し、企業責任者に体刑を伴う罰則規定の強化などを設ける。
(2) 公正取引委員会の権能を強化し、消費者代表監視制度を新設し、両者の連携を密にして消費者保護に万全を期す。
(3) 消費者生活協同組合活動に加えられている制約を撤廃するとともに、その活動を積極的に援助する。

5 生活関連三法の厳正な運用強化を図る。

 買い占め法(投機防止法)及び石油二法については、消費者の利益が守られるよう最大の配慮を払いつつ有効な活用を図る。

6 勤労者、低所得者の救済策を図る。

(1) 公的年金、生活保護受給者など社会保障生活者に対する給付は、消費者物価の上昇に応じてスライドする。
(2) 零細な預貯金のインフレに伴う目減りについては、金利の引き上げ等その補填策を図るべきである。
(3) 勤労者財産形成貯蓄については、物価上昇による貯蓄の減価分を補償する。
(4) 公営の低所得者住宅にかかる家賃は、当分の間凍結し、低所得者の住宅安定に資する。
 以上の諸点について、政府は速やかに実施するよう強く要求する。政府の考えをききたい。

三 財政金融政策について

1 経済見通しの改訂について

(1) 昨年来の狂乱物価の影響をうけて、本年一月以降の卸売物価、消費者物価の高騰は先に示した通りである。この現状では四十九年度政府経済見通しの卸売物価一四・六%、消費者物価九・六%の上昇範囲内に納めることは非常に困難と思われるが、政府は経済見通しを改訂するのか、否か、改訂するとしたら時期はいつか。
(2) 最近の国際収支の動向は決して楽観を許されない状況で、政府見通しのように貿易収支黒字三十四億ドル、経常収支の赤字四億五千万ドルにとどめることは困難と思われるが、政府の見通しを明らかにせよ。

2 財政運営について

(1) 四十九年度の公共投資のあり方については、景気動向とも関連して公共事業促進の主張が一方にあり、他方四十九年七月二十三日の経済閣僚懇では「公共投資は抑制的態度を維持する。但し中小零細企業など特定の分野については、必要に応じ弾力的に配慮する」と決めている。その運用の態度に混乱の気配が感じられるが、政府の態度を質したい。また、七月二十三日の経済閣僚懇の「特定の分野」とはいかなる分野であるか、また「弾力的に配慮する」との具体的内容と方法を述べよ。
(2) 四十九年度税収見通しは大きな狂いが生じ、多額の年度内自然増収が確実視されるが、政府の税収見通しを改める必要はないか。さらに、インフレによる名目所得の増加に伴なう予想外の負担過重となる所得税の年度内減税を実施すべきだと思うがどうか。
(3) 最近数年は年度内自然増収が巨額に達しており、税収見積の正確が期されていない。これは財源の適正配分の立場からも問題である。税収の科学的正確な見積をするための具体策を示せ。
(4) 四十九年度予算の補正要因並びに財源見通しを現時点でわかる限り詳細に答弁せよ。

3 金融政策について

(1) 金融引締め政策の堅持が強調される中で、日本銀行の買入手形が異常に高い水準で推移している。これは大企業への金融引締めの尻抜けを政策当局が行つていることにならないか。
(2) 金融引締めの長期化に伴い、中小零細企業の金詰りは厳しく、経営破綻に追い込まれている事例が非常に目につくが、中小零細企業向けの政策金融の意思があるかどうか、あるとしたら具体的に如何なる機関を通し、どのような対策を行うのか。

四 社会福祉の充実について

1 年金制度の改革について

 老齢人口の急増、核家族化の進行、狂乱物価等により老人の生活環境は著しく圧迫を受けている。
 年金制度の最大の目的は「全老齢者の所得保障」にあり、「生活できる年金」こそが真の年金制度といえる。このような観点から、この厳しい環境におかれている老人にあたたかい政治の手をさしのべることこそ緊急の課題である。
 わが党は、この「生活できる年金」を確立するために、去る六月二十四日「年金制度の改革案」を提唱した。その改革案骨子の第一点は、「国民の共同連帯による世代間相互扶助の精神」である。つまり青、壮年層が老齢層を国家的規模で扶養し、扶養した青、壮年層がやがて老人になつた時、また後代の青、壮年から扶養を受けるという世代間相互の循環責任方式である。ところが政府の現行年金制度は、あくまでも個人が個人の老後の責任をもつという私的扶養の考え方に立つている。これでは年金本来の社会保障的な意味はなくなつてしまう。完全に前時代的であり、明治以来の家父長制度の考え方そのままといつても過言ではない。
 したがつて、「国民の共同連帯による世代間相互扶助の精神」こそ年金制度本来の考え方に立つた画期的な理念であると思うが、政府の見解を伺いたい。
 第二点は賦課方式導入である。現在スウェーデン、イギリス、西ドイツなどの西欧諸国をはじめ、ほとんどの先進諸国が採用している財政方式で、いわゆる賦課方式である。政府の賦課方式導入についての見解を伺いたい。
 第三点は「八万円年金」の実現である。政府は、厚生年金月八万円、国民年金は夫婦で月八万円、老齢福祉年金は月三万円を支給する考えはないか。
 第四点は賃金スライド制の採用である。現状は政府案では物価スライドであるが、わが党の主張している賃金スライド制を採用する考えはないか。政府の見解を伺いたい。

2 社会福祉施設の改善について

 去る五月二十一日から一ケ月間、公明党生活防衛緊急対策本部が行つた「社会福祉総点検」の調査結果によると、「インフレで社会福祉施設は軒並みに打撃を受け崩壊寸前の経営難に陥つている。そのため老朽化した建物は放置されたままで、職員のなり手もなく、また肉や魚が食卓から消えたり入浴回数までが減つている。」という驚くべき現状が明らかにされている。
 狂乱物価や社会の価値観の変化の中で、財政難、人手不足などから善意や使命だけではとても処しきれない社会福祉施設の苦しい現状をふまえて、次の諸点につき質問するので誠実な答弁を期待する。

(1) 今回の調査で全国百十二施設のうち、九〇%が赤字をかかえ、百万円以上の赤字となつている施設が三〇%にものぼつている。特に、この赤字は狂乱物価以降急激にふえており、狂乱物価で大企業が過大な利得をあげたあおりが、いかに社会的に弱い立場にあるこれら福祉施設にふりかかつてきたかを思う時、緊急に金と人の両面で危機に瀕している経営を建て直す強力な政府の援助の手が必要である。この点について政府はどう援助していくのか。
(2) 今回の調査で、九五%の施設が人手不足を訴えている。その原因として、(イ)給与が低い(ロ)就労時間が長い(ハ)重労働である、の三点があげられている。政府は福祉施設の厳しい労働条件のもとで、いかにして人手を確保すべきか、その具体策を示せ。
(3) 全国四十七都道府県の三百七十八ケ所の木造施設のうち、土台や柱が腐つて危険なものが一一%、建替えを要するものが一三・二%もある。これらも、財政難のため老朽化のまま放置されている現状である。これを無償で修理、建替えするつもりがあるか。
(4) 狂乱物価のため食事の低下が目立つている。健康と体力を維持、増進するためには食事の低下は、どうしても避けなければならない。インフレによる食事の低下につき、政府の対策はどうか。

3 児童手当について

 児童は次代の国を担う国家の宝である。従つて児童に対し国は、最善のものを与える義務を負うと考える。
 然るに現状は児童に対し福祉というには、ほど遠いものしか与えられていない。ここに児童福祉について、特に児童手当のあり方について若干の質問を呈するので誠実な見解を求めたい。

(1) 全児童に、一人月額五千円の手当を支給する考えはないか。
(2) 最近の家族構成のうち、子供はせいぜい二人であり、現在の第三子から支給する体制は時代にマッチしないと思うがどうか。
(3) また第二子、第一子へと支給範囲を広げていくのはいつか、そのビジョンを示せ。
(4) 社会保障全般の中で、「児童手当」は、どういう位置づけにあるのか。

五 公害対策について

 健康で文化的な生活を営むことは、国民一人一人の基本的な権利である。この基本の上に、良好にして快適な環境を確保する権利も、国民一人一人に保障されなければならない。
 近年、大企業優先の高度経済成長により、環境は悪化の一途をたどり、打開のめどさえつかないまでに進行してきたのである。
 この危機を打開し、国民の生命を守り、基本的人権を擁護し、人間性豊かな社会を建設するために、次の通り質問する。

1 環境影響事前評価法(アセスメント法)の制定について

 工場建設にあたり、環境に与える影響について元来無認識に等しい状態であつた。よつて発電所、工場建設等の環境影響を住民参加で事前審査する「環境影響事前評価法」を早期に実現しなければならないと思うが、その時期はいつか。

2 無過失損害賠償責任制度について

 公害を完全に防止するためには、企業の社会的責任を強化しなければならない。また範囲も拡大してきびしく規制しなくてはならないと思う。無過失損害賠償責任制度の対象範囲を大気・水質に限定せず拡大しなければならないと思うがいかがか。

3 自動車排気ガス許容限度設定方策について

 自動車業界の一部で、五十一年実施は無理であるとの発言が報道されているが、五十一年実施の基本的姿勢に変更はないか。

4 地盤沈下の防止法について

 最近、地下水汲み上げ、天然ガス採取により、大都市及びその周辺の地盤がとみに沈下している。よつて地盤沈下の防止法を早期に制定し防止しなければならないがどうか。

5 食品及び薬害の被害補償法について

 食品添加物及び薬品による被害者の発生が著しくなつている。それら被害者を抜本的に救済しなくてはならないが、「食品及び薬害の被害補償法」の制定の意思はあるか。

六 教育問題について

 参議院選に際し、総理は全国を駆けめぐり総理一流の独善的な教育論をぶち上げたのである。それは、自らの徳育論とすべきであるといわれて有名になつた「五つの大切、十の反省」をはじめ、教育勅語の賛美、教師憲章の制定、教員の宣誓など右傾化、反動化もはなはだしいものであつた。
 しかし、それらは国民に受け入れられるどころか、逆に反発と嘲笑をまねくのみであつたことは、選挙における自民党の敗北が明らかに物語つている。
 教育は、いうまでもなくわが国の未来を担う青少年の健全育成を図る大事業であり、思いつきや反動化の意図をもつた改革では混乱に拍車をかけるのみで、教育の原点に立つた真の改革はできない。
 時代錯誤のいまわしいファッショへの道をたどるような一連の反動的発言、発想は、即座に撤回をすべきである。まず、この点について政府の明快なる答弁をお願いしたい。
 次に当面、早急に解決をせまられている、いくつかの問題点について誠意ある回答を求める。

1 日本全土を吹きまくつている物価高騰の波は、学校教育にも深刻に波及してきており、義務教育諸学校における教育費の父兄負担は急増している。副教材費、実習材料費、校外学習費、修学旅行費等大幅に増加しており、ただでさえ苦しい家計は、教育費によりさらに圧迫されている。義務教育無償の憲法の精神により、これらは当然国が負担すべきと思うが、政府の見解を明らかにしてほしい。
2 前項と同様主旨で学校給食の無償化を図るべきである。狂乱物価のあおりをうけて平均三〇%もの大幅値上げが行われた学校給食費を、自治体の中には、多少とも家庭の負担を少なくするため、公費負担をしているところが続出している。これらの実態を見るに国としても無償化への第一歩として、何らかの補助を具体化すべきと思うが、明確な回答をお願いしたい。
3 わが国の学校教育における私学の重要性はいまさらいうまでもない。しかし、国の施策は非常に遅れている状況で、経営難の学校法人は激増するばかりである。まず、次の諸点について早急に実施すべきと考えるが、政府の考えを聞きたい。

(1) 経常費、とくに人件費については大学のみでなく、他の諸学校にも大幅に補助を行う。
(2) 施設、設備費などの寄付金、校債の父兄負担を少なくするため、補助金を大幅に増額する。
(3) 国による私学への「長期貸付制度」を拡充し、私学の債務負担の軽減を図る。
(4) 私立校に対する個人、会社、法人等の寄付行為を免税とする。
(5) 私立の大学、高校に通つている学生の保護者又は本人に対して、教育控除の制度を設ける。

4 幼児教育に対する国の施策は義務教育に比較して著しく遅れており、私立に対する依存度は大きく、また地域格差も大きい。公立幼稚園は少なく、私立の幼稚園に入園させるためには父兄負担が余りに多い。
 そこで次の諸点について早急に実施すべきと思うが、見解を伺いたい。

(1) 将来における義務化を前提として、国庫補助の大幅増加を図り、公立幼稚園を大量に増設すべきである。
(2) 教員の質の向上を図るため、給与の大幅増額を含めた待遇改善を行う。そのために私学の場合は、国及び自治体の補助制度を設けるべきである。
(3) 保育園と幼稚園の相互補完体制を図り、保育と教育の一元化を行うべきである。

七 農業問題について

 今日、政府自民党によつて強行されて来た重化学工業優先、生産第一主義の高度経済成長政策は、超インフレ、物価の高騰を招き、その多大な矛盾と大きなシワ寄せは国民経済の中で相対的に弱い部門である農業に押しつけられ、我が国農業は悲惨な経過をたどつている。
 しかも、昨年後半からの石油危機に端を発し、世界的な食糧不足の危機が叫ばれ、主要農産物を海外に依存している我が国にとつて、今や資源としての食糧政策への転換が急務となつている。
 そこで、特に次の三点について政府の誠意ある見解を求めるものである。

1 食糧自給体制の確立について

 農業白書によれば既に小麦の自給率は五%、大豆は四%にすぎず、大・裸麦は前年度より一一%低下して一〇%になるなど、米を除いた穀類の大半は安楽死寸前の状態であり、肉類、牛乳、乳製品も年間それぞれ二%自給率が低下し、食糧の対外依存度は一層強まつている。
 また、昭和三十五年度九〇%であつたわが国の総合自給率は四十六年度には七二%までに落ちこみ、濃厚飼料は六七%から四〇%以下となつている。オリジナル・カロリーでは自給率は五三%にすぎない。欧米での先進諸国は神経質なほど食糧の自給政策には力を入れ、一〇〇%以上かそれに近い数字を示しており、全く対照的である。我が党はかねてから農産物の自給率はオリジナル・カロリーで最低八〇%確保を主張しており、主要農産物の自給高度化を原則として長期需要計画を策定し、作付けの計画化を推進すべきであると主張している。
 政府は、今こそ農政に対する御都合主義的発想を転換し、国内自給率体制確保への具体策を改めて明示すべきである。

2 畜産危機対策について

 一昨年来の国際情勢の急変に伴い配合飼料価格はついにこの一年間で約二倍に達し、生産材もかつてない値上りをみる事態となつており、かかる事態の推移をこのまま許せば壊滅的打撃を蒙る事は必至の情勢である。
 この最大の要因である飼料価格の急騰と生産者価格の低迷は、国民の食生活に密着した牛乳、乳製品、牛肉、豚肉等の安定確保に大きな影響を与えている。
 今や、この畜産危機ほど早急な対策を必要とするものはない。
 その急を要する対策の中でも特に次の点について強く主張する。

(1) 畜産物価格対策、特に牛肉の価格対策を強化拡充すべきである。政府の具体的処置を明らかにすべきである。
(2) 配合飼料については、食管と同様に国で一元管理し、国庫の大幅助成を講ずべきと思うが、政府の見解を明らかにされたい。
(3) 裏作や輪作による飼料作物の生産奨励、湿田等を利用した飼料稲作の実施、並びに山地酪農により山林、原野の積極的利用を図り、飼料の自給率を高める方策に早急に取り組むべきと思うが、具体的には自給率確保についてどのような対策をとつていくのかはつきりと示してもらいたい。

3 価格補償制度の確立について

 特に最近狂乱物価による影響は市場支配力の強い工業製品に強くあらわれ、競争の激しい農産物は価格を上げたくてもあげることができない。農民は購入すべき農機具、肥料、飼料は高騰し、一方農産物の価格は低迷しますます追いつめられている。一方政府の支持価格に対する対応も極めて悠長であり、ここでも農業者に対する負担は重くのしかかつてきている。
 今や価格補償対策の充実は、食糧自給を高める上でも必須の条件である。
 政府は主要農産物について、生産費所得補償方式による最低価格を保障し、額に汗を流して働いた労働にふさわしい収入を確保すべきである。現在の、全く不充分な価格補償を、根本的に改めるべきである。政府の考えをききたい。

八 災害対策について

1 台風八号による災害の特徴は散発的で全国各地に危険地帯があることを示唆している。
 人命尊重の生活環境整備の前提として、国土保全、防災行政の充実が現下緊急な課題である。
 政府は最近の被災状況をどのように把握し、また反省しているか。
2 今年の主な災害に、大蔵村山地崩壊、南伊豆沖地震、台風八号及び梅雨前線豪雨等が挙げられる。これらの災害形態の共通点は「ガケ崩れによる大惨事」で、最近の災害の一種のパターン化現象である。人的被害のシエアはガケ崩れが七三%を占めている。しかるに、全国で急傾斜地における危険指定の状況は危険地六〇七五六ケ所に対し、四一二二ケ所と全く遅れている。緊急に人的被害の絶無を目指して急傾斜面対策の抜本策を講ずるべきである。政府の考えをおききしたい。
3 急傾斜地崩壊対策事業は、崩壊により災害を受ける恐れのある人が、自己負担でその防止のため必要措置を実施するものである。
 (イ)この事業は予防策であるけれども危険区域指定等の運用面で強制力に欠けるところがあり、(ロ)しかも、受益者負担のため、実際の事業促進を阻害する要因となつている。(ハ)また、最近、この事業の採択基準以下の所で災害発生が多く、採択基準の再検討が叫ばれている。政府は、この事業の円滑な推進を図る上でこれらの問題をどのように考えているか。
4 集中豪雨予報、監視体制、伝達方法等の気象観測体制の充実強化も緊急な課題である。
 しかるに、第一次、第二次の国家公務員の定員削減でますます広域的な観測網となり、局地的豪雨観測が不可能な現状におかれている。政府はこれらの現状を掌握し、局地的豪雨にも対処しうる観測体制を整備すべきである。政府の考えをききたい。

5 中小河川対策

 ガケ崩れと同時に中小河川の氾濫が頻発している。これは河川改修において大河川を優先し、しかも改修計画においても大河川は滅多に氾濫しない計画となつているが、中小河川は時には氾濫する計画となつているといわれている。こうした計画の差異は大きな問題である。大河川と平行した中小河川の同水準の改修、同時実施について、政府の見解を伺いたい。

6 都市河川対策

 (イ)人口の都市集中による都市周辺の市街化の進行、(ロ)無秩序な宅地造成や開発、(ハ)雨水の地下浸透能力の減少、(ニ)上流域における樹木の伐採等により洪水の貯溜能力の減少等のため洪水のピーク流量が激増してしまつた。政府はこの都市河川を法的にどのように位置づけ、また、都市河川対策をどのように考えているのか。

7 防災のための集団移転事業について

(1) 四十七年に制度化されて以来、事業はどのように進められてきたか。
(2) 移転促進区域の設定、全戸移転と住民意思、移転先団地の選定等困難な問題をかかえているが、どのように運用されているか。
(3) 集団移転事業の対象とならない規模(一〇戸以下)の住宅移転事業としてガケ地近接危険住宅移転事業があるが、これは法定化されてなく、単年度毎の予算措置であり不安定なものである。この事業の需要は非常に多く、法定化を急ぐ必要があるが、政府の見解を伺いたい。

8 個人災害救済法について

 昨年、個人災害救済法の一環として弔慰金制度が法定化され実施されたことはまことに画期的な事であつた。しかし、たとえば負傷者、家屋、家財等の損害については従来の法的措置に沿つた融資制に留まるなど、未だ予算の公平の原則からみて個人救済は問題であるとする見方が非常に強い。
 今後は災害復旧行政においてはきめ細かな個人災害救済を基本としたものにしなければならないと考えるが、政府の基本的な見解を伺いたい。
 以上の諸点について政府の明快なる答弁を求める。