質問主意書

第72回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質七二第一〇号

  昭和四十九年三月十九日

内閣総理大臣 田中 角榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員藤原房雄君提出畜産経営危機の緊急対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤原房雄君提出畜産経営危機の緊急対策に関する質問に対する答弁書

一、について

1 配合飼料の値上げに際しては、メーカーから必要な資料の提出を求め、その要因について検討を加え、値上幅を極力抑制するよう指導を行つたところであり、今後も極力値上げの抑制を指導してまいる所存である。
2 今回の飼料価格の値上げについては、その要因が、世界の穀物市況の再騰のほか、海上運賃の上昇、為替レートの下落等国際的一般的な理由によるものであり、生産資材である配合飼料費について直接補てんする対策をとることは困難である。
3 配合飼料の品質維持については飼料の品質改善に関する法律に基づき立入検査等を厳重に実施しており、最近の検査では、特に品質低下の事実はみられない。また、配合飼料の原料表示の実施については、先にその実施方を通達し、製造業者等を指導しているが、原料の配合割合については、技術的にも問題があるため、なお慎重に検討する必要がある。

二、について

 配合飼料値上げに伴う畜産経営への影響を緩和するための特別融資措置については、現在検討中である。
 また、制度資金等の既存債務については、その償還期間等貸付条件の緩和措置につき関係金融機関等を指導したところである。

三、について

1 加工原料乳の保証価格については、畜産振興審議会の意見を聴き決定することとしているが、その際には、生産条件、需給事情その他の経済事情を考慮し、再生産の確保を旨として決定する考えである。なお、価格決定の方式については、種類ごとの生産条件、需給事情、流通の実態等に応じて定められているものであり加工原料乳につき米のような生産費所得補償方式をとる考えはない。
2 豚肉の安定価格についても、加工原料乳と同様の理由から生産費所得補償方式をとることは困難である。
 なお、上物以外の豚肉については、品質格差が大きいなどにより、畜産振興事業団の買上げの対象とすることは困難であるが、上物の買上げを行つた場合には、それ以外の豚肉の価格安定にも資することとなるものと考える。
3 卵価安定基金の補てん基準価格の引上げ及び液卵公社の買上数量枠の拡大等これらの機能の拡充については、現在検討が進められているところである。また基金の資金造成等への国の大幅助成については、過剰傾向にある鶏卵の生産状況から問題であり、困難である。
4 牛肉、ブロイラー等は、価格形成方法、流通経路等に問題があるほか、特に牛肉については、種類、性別、肥育方法による品質格差が大きいなど、畜産振興事業団の買入対象とすることは困難である。
5 畜産物の消費者価格については、輸入制度の弾力的な運用、畜産振興事業団の需給調整機能の活用等により、需給の安定を図ることを基本として消費者価格の安定に努めてまいる所存である。
6 指定乳製品の安定指標価格は、それらの生産条件、需給事情等を考慮し、消費の安定に資することを旨として定められているが、実際の乳製品価格は需給状況等に応じ随時変動するものであり、最近のように安定指標価格を上回つている年もあれば、昭和四十三年度~昭和四十五年度のように安定指標価格を下回つている年もあり、両者の価格差の発生をもつて直ちに超過利潤とすることはできない。
 なお、四十九年度の安定指標価格については、最近の乳製品の実勢価格のほか、諸般の経済事情を考慮し、指定乳製品の消費の安定に資することを旨として適正に決定してまいる所存である。
7 昭和四十九年度の畜産物の政策価格決定後、物価その他の経済事情に著しい変動が生じた場合においては、生産条件及び需給事情その他の経済事情等諸般の事情を考慮して、慎重に検討し、対処してまいる所存である。
8 畜産物の輸入については、国内における畜産物の需給事情と畜産経営の安定に配慮しながら、輸入の指導を行うとともに、畜産振興事業団の需給調整機能を活用する等弾力的に対処してまいる所存である。

四、について

1 飼料生産については、一層の生産増加に努めるため土地改良長期計画等に基づき草地開発事業や飼料作物の作付促進等を図つてまいる考えである。
 飼料の長期生産目標については、現在農政審議会においてその検討が進められているところである。
2 ア 飼料作物は、家畜飼養農家が自給飼料として生産しているものがほとんどであることにかんがみ、政府が買い上げることは困難である。
  イ 農用地開発公団が実施する予定の事業については、受益農家の負担力、同種事業の国の補助率等をも勘案して適正に国の補助率を定めているところであり、これを変更することは困難である。
  ウ 政府操作飼料の麦の買付量の拡大については、現在麦の国際需給が逼迫基調で推移しており困難な面が多い。また、とうもろこし、マイロ等については必要量は民間貿易で十分に確保されているところである。
  エ 飼料穀物の備蓄については、内外の穀物の生産及び需給の動向並びに備蓄コスト等を考慮し計画的にその増加を図るべく実施してまいる所存である。

3 国有林野の活用については、国有林野の活用に関する法律に基づき、その活用を図つてまいる所存である。
4 水田裏作の活用による麦の生産については、従来から作付体系、品種改良等について研究に努めてきているところであり、今後も更にその推進を図つてまいりたい。