質問主意書

第72回国会(常会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質七二第九号

  昭和四十九年三月十九日

内閣総理大臣 田中 角榮   


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員阿具根登君提出中外電工富山工場における不当労働行為、人権じゆうりん問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員阿具根登君提出中外電工富山工場における不当労働行為、人権じゆうりん問題に関する質問に対する答弁書

一、について

 中外電気工業株式会社富山工場(以下「会社」という。)においては、昭和四十六年六件、昭和四十七年二件、昭和四十八年五件の労働災害が発生しているが、この処理に当たり、会社が業務上災害をいわゆる私傷病として処理している事例がある。かかる事例は、労働安全衛生法施行前のものについては労働基準法第百十条違反に、労働安全衛生法施行後のものについては同法第百条違反に該当するので、既にその改善方について指示している。なお、今後このようなことのないよう所轄労働基準監督署を通じて監督指導いたしたい。

二、について

1 本件は、休憩時間中における組合活動のための食堂の利用に関し、会社が許可制をとつている問題であると考えるが、これについては、労働基準法第三十四条第三項の問題ではなく、労使双方で協議すべき問題であると考える。
2 朝礼については、従来月一回程度実施されていたところ、昭和四十八年十一月頃から、その回数が増加している実態にあり、その所要時間が一時間を超えるものもあつた。本件の朝礼に参加する時間は労働時間であり、本問題については労働基準法に直接触れる事項は見受けられない。しかし、病弱者及び妊産婦については、特別な配慮をする必要があるので、その改善方について指導した。
3 本件は、会社の就業規則第四十条に規定されている会社規定の遵守、機密保持等を誓約する書類の提出の問題と考えるが、現在百三十四名中八十六名が提出していると聞いている。この書類の未提出者に対しては、会社は朝礼等を通じ提出方を求めているようであるが、これらの者に対し制裁的な措置はとつてなく、また、この書類の内容は労働基準法に触れるものとは考えられない。
4 所轄労働基準監督署が行つた監督の結果、労働基準法に抵触する問題は、は握されなかつた。
5 所轄労働基準監督署が行つた監督の結果、労働基準法第五条にいう強制労働の事実は、は握されなかつた。
6 会社の安全衛生管理については、十分でない点もあり、次の事項について是正するよう勧告をしている。

(1) 専属の衛生管理者を選任すること(労働安全衛生法第十二条)。
(2) 安全衛生委員会の委員にその事業の実施を統括管理する者を選任すること(同法第十九条)。
(3) 安全管理者の選任報告をすること(同法第百条)。
(4) 工場内の主要通路は、常時有効に保持するよう表示を行うこと(同法第二十三条)。
(5) 一部のプレスに安全装置を、伸線機のセットボルトに覆いをそれぞれ設けるなど危害防止措置を講ずること(同法第二十条)。

三、について

 労働省においては、本年二月に会社の本社の責任者を招致して、労使紛争全般についての事情を聴取するとともに、労使当事者間において労使紛争を早期に自主的に解決するよう指導した。
 なお、総評全国金属労働組合富山地方本部中外電気工業富山工場支部の組合員に対する賃金等の差別取扱いの問題については富山県地方労働委員会に、総評全国金属労働組合との団体交渉の拒否等の問題については東京都地方労働委員会に不当労働行為の救済申立てがなされ、現在両地方労働委員会において審査中である。

四、について

 一般的に、労働基準法等違反に関する申告については、労働基準監督署は、常に厳正に措置しているところであり、昭和四十八年十一月二十二日に申告のあつた本件事案についても、所轄労働基準監督署が厳正に措置した。すなわち、当該申告に基づき同月二十七日及び十二月八日の両日監督を実施し、問題がある事項については、文書によりその是正方を勧告しているところである。
 なお、人権侵犯の申立てについては、富山地方法務局において現在調査中である。