質問主意書

第72回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

民俗芸術「浮世絵」保存、「浮世絵美術館」建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年五月二十日

野末 和彦   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   民俗芸術「浮世絵」保存、「浮世絵美術館」建設に関する質問主意書

 「浮世絵」は、たんに江戸時代の庶民の風俗描写画であるにとどまらず、庶民の手によつて長年にわたつてつちかわれてきた民俗芸術の華、庶民文化の極致として、日本が世界に誇れる唯一の芸術作品であるといつても過言ではなかろう。しかし、この「浮世絵」は、我が国において未だに正当な評価が与えられていない。憂慮すべき現実すらも多々ある。
 そこで、政府は、

一、国内・国外を問わず、「浮世絵」(肉筆・版画)の所在を調査、確認し、いわゆる「浮世絵戸籍簿」ともいうべき総合的な目録を作成すべきであり、その為の調査機関あるいは、研究所なりを設立すべきであると思うがどうか。

二、「浮世絵」の国、わが国に、公式の「浮世絵美術館」がひとつもない。外国から、「浮世絵」の故郷を訪問した客も、この現状には、おおいに驚き悲しんでいる。前記の調査、研究機関をも含めた総合的な「浮世絵美術館」をただちに建設すべきであると思うがどうか。

 前記二点、とくに「浮世絵美術館」建設については、戦前から多くの国民によつてその必要性がさけばれており、昭和十二年衆議院に「建議案」が上程され本会議で可決され政府呈出となるも、おりからの騒然とした世情の中で、有耶無耶になつてしまつたままである。
 戦後も三〇年近く経過した今日、平和で文化的な庶民の生活感覚に深く根ざした「浮世絵」の総合的な展示センターを作ることは文化財保護のみならず、国民の文化的資質向上の点からも極めて重要なことと思われる。政府の誠意ある前向きの答弁を期待するものである。