質問主意書

第72回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

同和地区における隣保館に対する補助算定基準額の是正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年三月二十二日

松本 英一   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   同和地区における隣保館に対する補助算定基準額の是正に関する質問主意書

 同和地区における隣保館数は、昭和四十九年度において五五七館(毎年度五〇館以上増加)で、全国同和地区の約十パーセント、世帯数及び人口において五十パーセント以上を所管することが推定される。
 厚生省調査の昭和四十六年度実績によれば、一館の平均専任職員数においては二・五五人となつているにもかかわらず、一館一名として算定されている。かつ厚生省が制定した隣保館運営要綱においては、館長及び指導職員は社会福祉主事の資格を有する者若しくは同等以上の能力を有する者でなければならないと規定し、その給与は六等級三号俸相当(大学卒初任給~昭和四十八年度額約一二〇万円)としながら、昭和四十九年度予算案では六八万円弱という低額である。
 一館の平均運営費においては約九〇万円となつており、その後の物価上昇率及び他の予算額の延び率を加算すると、昭和四十九年度において約一五〇万円前後の額が推算されるにもかかわらず、明年度予算案では一館平均三六万円という異常な低額である。
 隣保館運営費(算定基準額)は昭和三十五年度における三四万円弱が、四十九年度に至つて約一〇四万円という約三倍の延び率に過ぎないが、国家公務員一般の給与においては約四~五倍の延び率となつており、その不均衡は余りにも甚だしい。
 政府は昭和四十四年六月五日の衆議院内閣委員会における同和対策事業特別措置法案の審議を通じ、同法の施行については「予算単価は実質単価とされたい」との要望に対し、時の福田大蔵大臣は「財政当局といたしましても、この法案の趣旨が生かされるように、できる限りのご協力をしたい。単価の問題については、そういう趣旨において、実態に即するように処置をいたしますからご安心ねがいたい」と確認している。
 また地方財政法第十八条は「国の負担金、補助金の地方公共団体に対する支出金の額は、地方公共団体が当該国の支出金に係る事務を行うために必要で、旦つ充分な金額を基礎として、これを算定しなければならない」と国の補助金の算定基準を規定している。
 さらに厚生省は各都道府県知事に対して、昭和四十四年十二月二十三日付で「同和地区における隣保館の運営について」事務次官通達を出している。
 それによれば、「同和地区における隣保館は、地域住民の社会福祉及び保健衛生の向上等に極めて重要な役割を果たしてきたところであるが、同和対策事業特別措置法の公布施行に伴い、同和対策の一環としての隣保館事業の充実は、ますます重要性を加えてきた云々」と述べ、同和行政上における隣保館を高く位置づけながら実質的措置については「同和地区における隣保館運営要綱」を制定し、多岐多様にわたる事業を要求しただけである。
 即ち、「同和地区における隣保館運営要綱」においては、隣保館の行う事業として、社会調査及び研究事業、相談事業のほか地域福祉事業として、社会福祉、児童福祉、保健衛生、生業及び授産、広報活動、生活環境の改善、各種のクラブ活動、レクリエーション及び教養文化、その他必要な事業を掲げている。
 換言すれば一館平均五二万円に満たない補助金で、社会福祉主事の資格、または同等以上の能力を有する専従職員及び一般職員を一館平均二・五五人以上を配置し、前記の如く多岐にわたる事業(実際に要望される事業は、さらに多い)を実施するについては、現在の国の補助額を少なくとも六倍に引き上げなければ実情に即しない状況にある。
 即ち、同和地区における隣保館に対する国の補助率は二分の一と規定されているが、その算定基準額が全く実情にそわない低額なため、一館に対する実際補助率は平均十分の一程度(中型~大型館においては三十分の一~五十分の一)にしか相当しないという異常な実態であり、このことが設立市町村の財政を圧迫し、ひいては隣保館活動を低調にする最大の要因となつている実情である。
 以上の実情の上にたつて以下の点につき政府の見解を示されたい。

一、この際、政府は同和行政の効率的推進及び地域住民の福祉センターとしての隣保館事業の建設的機能の活発化を図るため、可及的速やかに各隣保館における事業(診療、授産等の附帯事業を含む)、給与費及び運営等の実態調査を実施し、これを根拠として国の補助算定基準とすべきでないか。

二、補助率についても、市町村財政の実情にかんがみ現行の二分の一を三分の二に改定すべきではないか。

  右質問する。