質問主意書

第72回国会(常会)

質問主意書


質問第一三号

建設労働環境の改善と労働力の確保等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十九年三月十八日

田中 一   


       参議院議長 河野 謙三 殿


   建設労働環境の改善と労働力の確保等に関する質問主意書

 公共投資の増大に伴う大型土木工事の活発化、民間設備投資の拡大等により、最近における建設工事は、量の増大とともに質の複雑化がみられるところである。
 とくに建設機械の大型化や高速化、さらに工事の大規模化等に伴い労働災害発生の潜在エネルギーはますます増大し、また新技術の開発や新工法の導入等による新たな種類の災害発生の危険性も増大しつつある。
 一方、技能労働力を中心とする労働力不足に伴つて未熟練労働者の増加と労働力の高齢化等が進むとともに、下請化、リース化等にみられる如く、企業の経営形態の変化が労働環境や就労事情にも影響をおよぼしてきている。
 したがつて、建設労働環境の改善を一層促進するとともに健全な建設労働力の確保を図り、もつて建設産業活動の最大のひずみである労働災害に対し、国の積極的な施策が強く要請されているところである。
 よつて、次の諸点につき、政府の明確な見解をただすものである。

一、労働安全衛生法に基づいて策定された昭和四十八年度を初年度とする向後五カ年間にわたる労働災害防止計画は、国が中心となつて総合的に実施し、労働災害の絶滅と健康で快適な作業環境の形成を図ることにあるとしている。この計画のなかで、労働災害の発生防止に資するためには、労働者の心身の疲労が労働災害を誘発するおそれがあることにかんがみ、労働時間の改善を図るとともに、週休二日制の普及を促進するといつている。
 このような計画の社会的すう勢のなかで、建設産業に従事する労働者の実態は、あまりにも隔絶している。建設労働者に対する労働災害を防止し、健康で快適な作業環境の形成を図るための対策とは、いかなる内容のものか、具体的に明示せよ。

二、近年における公共事業投資の急増及び民間設備投資の拡大並びに集中化は、建設業の著しい発展をもたらしたものの、限られた工期と不安全な作業環境のなかで、長時間労働が恒常化し、昼夜兼行の交替就労の増加等、労働時間の延長に拍車をかけるとともに日曜日も満足に休めない実態である。一方、昭和四十七年時の業種別労働災害の発生状況は、休業八日以上の死傷者数のなかで製造業が三七・九パーセント、建設業が三一・六パーセントを占めているのに対し、推計死亡者数では、建設業が四二・七パーセントで第一位を占め、製造業は二一・〇パーセントと比較的少ない。
 これを事業別、災害別及び曜日別に分類した統計数字を明らかにするとともに災害発生の起因について詳細に示せ。

三、日本建設産業職員労働組合協議会が傘下単組を通じて行なつた昨年の十一月期の月間における六、二四八作業所に対するアンケート調査の結果によると、全日曜全休の作業所は、全体のわずか一八・一パーセントに過ぎず、二回全休が三五・八パーセント、全休しなかつた作業所が一七・一パーセントも占めている。
 また、発注者別にみた傾向では、公共工事の大宗を占め、しかも昨年三月、計画局長通達をもつて、建設業における日曜、祝日休日制の推進について、各事業所管官庁及び建設業関係団体に要請した建設省の所管工事に係る低率な結果は、実施面での取組み方に極めて疑問がのこるといわざるをえない。

1 公共工事における工期の算定に当つては、日曜、祝日を全休として見込んでいるか。また民間工事に対しては、いかなる指導を行なつているか。
2 公共の土木建築工事において、建設労働者の月間稼動日数及び年間稼動日数を何日と見込んでいるか。
3 一日当りの労働時間を何時間とみているか。
4 建設省の計画局長通達に対する実施の結果を示せ。
5 工事施工方法及び工程管理に対する現場監督者及び作業主任者等の育成について、いかなる指導を行ない、どのような対策を講じているか。
6 建設業法第二十四条の二に規定する元請負人と下請負人との下請契約を結ぶ場合における指導方針はどのように行なつているか。また元請負人は、下請負人の意見をきかなければならないと規定しているが、片務的なものとならないか。

四、建設労働者は、その雇用形態及び労働環境等において、他産業より不利な条件下にあるとはいえ、技能労働力及び若年労働力の不足が半ば慢性化し、専ら老齢化及び無技能化した労働力に頼らざるを得ない現状にある。健全なる建設労働力の確保についての処方箋を問う。

五、建設労働力のなかで出稼労働力の占める比重は高いと思われるが、最近における就労動向はどうか。また企業規模別等において、技能労働力の職種別不足率はどうか、明確に示せ。

六、最近における公共職業訓練及び事業内訓練の実施状況と同訓練を受けた技能労働者の動向はどのように定着し、就労しているか、明らかにせよ。

  右質問する。