質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第二〇号

内閣参質七一第二〇号
  昭和四十八年八月三十一日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出琉球大学医学部設置等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員喜屋武眞榮君提出琉球大学医学部設置等に関する質問に対する答弁書

一、について

1 沖縄県の医療水準は、医療施設及び医療従事者の整備が遅れたこと並びにその地理的条件もあつて、本土の類似県に比し相当低位にあるものである。
2 琉球大学医学部設置の問題については、昭和四十一年総理府に置かれた琉球大学医学部設置問題懇談会で調査検討の結果、医師養成は当面本土で行い、先ず看護婦等の医療従事者を沖縄で養成することとし、昭和四十四年に保健学部が設置され、更に昭和四十七年(復帰時)に同学部附属病院が開設され、現在に至つている。
 ちなみに前記の医師養成の施策として、昭和二十八年以来、国費により本土の医学部に沖縄の学生を受け入れている。なお、その受け入れ数は、昭和四十八年までに六八一人であり、まだ在学中の者も多いが、昭和四十七年までに一〇七人が帰還している。
 医学部の設置については、昭和四十七年十二月に閣議決定した沖縄振興開発計画において、「沖縄県の医師の確保並びに医療水準及び医学研究の向上のため、必要な調査、条件整備を行つたうえで医学部の設置をはかる」こととしており、これに従い、昭和四十八年度に、文部省において調査研究を行つているところである。
3 琉球大学医学部設置に際し問題となる課題は、敷地の確保、教員及び看護婦等医療技術者の確保、系統解剖体の確保、病理解剖の協力、卒業者の沖縄県への定着方策等の諸問題があり、これらは他の無医大県に比し一層困難である。なお、当面は、国費沖縄学生で医学部卒業者の沖縄県への定着方策を沖縄県において講ずることが、緊要の課題である。
4 文部省に置かれた医科大学等設置調査会医学部部会琉球大学小委員会においては、医学部設置に必要な諸条件の解決方法、医学部と既設保健学部及び同附属病院との関係、医学部の性格・構想及びその他設置に関する諸問題について、調査研究を行つている。なお、本年度中に報告を得られる予定である。

二、について

1 沖縄県と人口等の点で類似する宮崎県、佐賀県、高知県、徳島県及び島根県とを比較した場合、沖縄県の医療施設数はこれらの県の約二分の一、病床数は三分の二ないし三分の一となつている。

沖縄県の医療施設数及び病床数の類似県比較 (昭和四十六年末現在)

2 県立病院の整備については、昭和四十七年度においては、予算において中部病院の病棟、宮古病院及び八重山病院の外来診療棟並びにこれらの病院の医療機械の整備について、更にがん診療及び救急医療の確保を図るため、中部病院のがん及び救急部門の整備について、それぞれ助成措置を講じたほか、これらについて地方債措置をも講じ、その推進を図つている。そのほか、県立のへき地診療所の施設整備に対し予算及び地方債の措置を講じ、その助成を行つた。
 また、昭和四十八年度においては、予算において、名護病院の病棟及び那覇病院の医療機械並びに県立のへき地診療所の施設整備に対し助成することとしているほか、これらについて地方債措置をも講ずることとしており、今後とも県当局の計画を十分勘案して沖縄県の医療体制の整備を推進したい。
3 琉球大学保健学部附属病院は、昭和四十七年度より三年計画で教育研究病院として整備中であり、看護婦等の配置途上にあること、また、医師の確保が困難なことから定員が満たされないことなどのため、病院全体が必ずしも十分には運営されない面があるが、既に地域医療部の設置をみており、昭和四十九年度には整備計画も完了し、更に救急体制の整備も図る予定である。
4 沖縄県への医師の派遣は県からの要望に基づき、県立医療機関等への派遣及び臨床研修病院である中部病院への指導医の派遣につき派遣計画をたてて行うこととしている。
 地域診療に直接携わる医師については、三か月から一年の長期滞在を行い、臨床指導医については、指導内容により二週間から一か月程度の滞在となつているが、派遣医師の人数、滞在日数及び配置については、医師派遣の効果的運営を図るべく、沖縄県と連絡のうえ適切な措置を講じてまいりたい。
5 琉球大学保健学部は、看護婦養成学校としての指定を受けて看護婦の養成を行つている。なお、看護婦養成数の増大については、国としても今後努力したい。
6 沖縄県における医師の研修については、中部病院を臨床研修病院として指定し臨床研修費の助成を行つているほか、同病院の施設設備の整備を進め、更に前述の指導医の派遣を行つているところであるが、今後とも医療機関の整備と相まつて医師の研修体制の充実を図つてまいりたい。
7 沖縄県には、現在、琉球大学保健学部附属病院のほか結核一、精神一、らい二、計四か所の国立療養所を設置しているが、なお将来における医療需要を十分勘案して検討いたしたい。