質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質七一第一八号
  昭和四十八年八月二十八日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員辻一彦君提出堀田製作所の不当労働行為に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻一彦君提出堀田製作所の不当労働行為に関する質問に対する答弁書

一、について

 株式会社堀田製作所における労使紛争の状況は、別添資料のとおりであり、昭和四十七年春の不当労働行為等の問題については、同年五月、福井県商工労働部のあつせんにより労使の和解が成立し、一応の解決をみた。
 なお、昭和四十八年一月における会社の解散、従業員の解雇に関連する不当労働行為問題については、現在、福井県地方労働委員会等に係属中であるので、その判断を待つことといたしたい。

二、及び三、について

(1) 政府としては、地場産業は地域経済の振興にとつて極めて重要であるので、かねてよりその育成振興のための各種の施策を展開してきたところである。
 かかる観点から堀田製作所に対しても政府系中小金融機関より緊急融資など所要の資金の融資を実施してきたところであるが、今般会社解散という事態に至つたことは遺憾である。解散については目下訴訟が係属しているので、その推移を見守りたい。
 なお、被解雇者は、現在までに五十八名が再就職し、二十二名が失業保険金を受給中である。
(2) また、昭和四十八年二月初め頃、福井銀行の行員が堀田製作所の被解雇者の一部の家庭を訪問し、預金を勧誘した事実はあつたようであるが、これは銀行としては、通常の預金勧誘行為として行つたものと考えられる。
 しかしながら、このことが万が一にしても、堀田製作所の労使紛争に影響を与えることがあるとすれば好ましくないと考えられたので、大蔵省としては、直ちに当該銀行に対し、社会的良識に基づいて自粛することが望ましい旨を指導したところであり、銀行としても直ちにそのよらな疑いを持たれるような勧誘行為は、これを取り止めた。
 なお、福井銀行の行員としては、被解雇者に就職をあつせんするというような言動は、格別行つていないようである。

別添資料

 堀田製作所の労使紛争について

一 当事者
(使用者) 株式会社堀田製作所(社長 武田実)
      所在地 福井県福井市下守江町
      従業員数 九十三名(会社解散時)
      業種 機械板金
(注) 同社は、昭和四十八年一月二十四日の株主総会において解散決議を行い、代表清算人渡辺等らを選任している。
(労働組合) 総評全国金属福井地本堀田製作所支部
       組合員数 七十六名(会社解散時)

二 主要経過
1 昭和四十七年春の不当労働行為等問題
(1) 株式会社堀田製作所(以下「会社」という。)は、昭和四十六年秋頃から受注減に伴つて経営難に陥り、四十七年二月二日、堀田実に代わり武田実が代表取締役に就任した。その後、会社は、同年三月四日、総評全国金属福井地本堀田製作所支部(以下「組合」という。)に対し、会社再建のためとして給与、退職金体系の変更を含む七項目の合理化案を提案した。
(2) 組合側は、同提案は労働条件の切り下げになるとして反対するとともに組合の上部団体である全国金属労働組合は、同年四月二十四日、東京都労委に対し、社長を始め会社幹部が組合員に対し上部団体や組合からの脱退を勧奨したり、組合を中傷、非難したとして、不当労働行為の救済を申し立てた。
(3) 福井県は、当該労使紛争の激化を憂慮し、和解のあつせんに乗り出すこととなり、この結果、同年五月八日、福井県商工労働部長らの立ち合いのもとに、労使は[1]企業再建のための労使協力 [2]不当労働行為の中止 [3]合理化提案の処理等当該紛争の解決に関する協定を締結し、紛争は一応解決をみた。
2 昭和四十八年会社解散問題
(1) 右協定締結後も会社の経営は悪化を続け、昭和四十八年一月十一日会社側は組合に対し会社解散を通告し、同月二十四日、会社は臨時株主総会において会社の解散決議をなし、代表清算人渡辺等らを選任したうえ、同月二十七日、従業員全員を解雇した。
(2) これについて組合側は、一月二十三日、福井県地労委に対し、会社解散は偽装解散で組合の運営に対する支配介入であるとして不当労働行為の救済を申し立てるとともに、二月十日、福井地裁に対し会社解散決議効力停止、地位保全仮処分申請を行つた。
 福井地裁は、四月二日、右事案について、会社の道義的責任はあるとしながらも本件解散は権利濫用等にあたるものではない、また解雇も不当労働行為とはいえないとして解散の有効、解雇の正当を判示し、本件申し立てを却下した。
 また、全国金属労働組合は、四月六日、東京都労委に対し、会社側の組合員に対する組合からの脱退勧告等の言動について不当労働行為の救済を申し立てた。
 なお、現在、労働契約上の権利確認に関する訴訟事件(五月九日提訴、原告は元従業員三十名)は福井地裁に、また右不当労働行為事件については福井県地労委、東京都労委にそれぞれ係属中である。
(3) この間、福井県は、福井県評、全国金属労働組合、同福井地本堀田製作所支部等の要請を受けて、副知事、商工労働部長らが数次にわたり会社の前社長らと会つて会社再建等について要請したが、会社側は、会社は既に解散し、清算事務も事実上完了している段階にあるため再建は困難であると主張している。しかし、県当局は、紛争の解決のため努力を続けているところである。
(4) 被解雇者のうち公共職業安定所に求職申し込みを行つた八十三名(うち三名は不出頭)については、現在までに五十八名が再就職し、残る二十二名が失業保険金を受給中である。
 なお、被解雇者は全員、五月十六日までに退職金を受領している。