質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質七一第一六号
  昭和四十八年八月二十一日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員峯山昭範君提出中小企業の海外投資に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員峯山昭範君提出中小企業の海外投資に関する質問に対する答弁書

一、について

1 国別、年次別の中小企業海外投資件数及び金額実績については、別表一のとおりである。
2 業種別、年次別の中小企業海外投資件数及び金額実績については、別表二のとおりである。
3 進出年次別の中小企業海外投資の収益状況については、別表三のとおりである。
4 わが国企業の海外投資は、最近、急速に増加してきているが、海外進出した企業でその企業行動が非難された事例は極めて少なく、次の事例程度である。
事例(1)
 タイにおいて、昨年十一月、日本商品不買運動が発生したおり、わが国企業に対し、(イ)受入国の必要に応じた投資を行うこと、(ロ)受入国に資本参加の機会を与えること、)(ハ)再投資を促進すること、(ニ)受入国人を登用することが要請された例。
事例(2)
 本年三月、シンガポールの中小商社五〇〇社が加盟している六つの商業組合がシンガポール政府に対し、(イ)日本企業は、当初シンガポール輸入商を代理店として活用するが、後にこれを解約したりして、その権益をおかしていること、(ロ)日本商社は小口入札まで割りこんで、シンガポールの中小企業に競争をいどんでいること、(ハ)日本商社は、通貨変動によつて生じた為替差損を、シンガポール輸入商に一方的になすりつけている旨の決議文が送付された例。
 なお、御指摘のメナム川汚染の問題は、現在現地政府において真偽を調査中の模様である。

二、について

 発展途上国は、工業化への重要な柱として中小企業業種に属する労働集約的産業の育成に努めており、この分野における協力要請は、近年一段と高まりをみせている。
 かかる発展途上国からの要請に応え、わが国中小企業の海外投資の円滑化を図るためには、情報の収集提供、経営・技術の指導、資金的助成等の措置を総合的に講じ得るよう施策を確立することが必要であるので、昭和四十八年度から新たに政府資金をもつて財団法人海外貿易開発協会を通ずる中小企業海外投資協力事業を開始することとしたところである。
 今後とも本事業については、実施機関の整備拡充の問題を含め、事業内容の一層の充実について積極的に検討してまいりたい。

三、について

 最近発展途上国のナシヨナリズムは急速な高まりをみせており、わが国企業が発展途上地域に進出するに当たつては、相手国との摩擦を引き起こすことがないよう十分配慮する必要がある。
 海外貿易開発協会が行う中小企業海外投資協力事業も、発展途上国における中小企業業種の産業の育成発展を目的として、発展途上国側の経済的社会的事情に十分適合した形でわが国中小企業の海外投資を円滑に進めようとするものである。
 今後発展途上国に対する海外投資は、投資先国との協調融和のもとに進められることが何よりも肝要であり、中小企業海外投資協力事業における融資のための諸条件は、発展途上国に対する望ましい投資行動の確保という観点からすれば、決して厳しいものではないと考える。
 また、「ドル対策法」の対象業種の一部に見られるように、国内産業構造の高度化、合理的国際分業への移行等の観点から海外進出が必要とされる業種については、政府系金融機関等による助成制度の充実等を通じ、その一層の円滑化に努めてまいりたい。

四、について

(1) 中小企業の海外投資のあり方については、昨年八月の中小企業政策審議会の意見具申「七〇年代の中小企業のあり方と中小企業政策の方向について」の中で、
(イ) わが国中小企業は、円切り上げに象徴される国際経済環境の変化に対処して、国際分業に適応する生産構造へのシフトを図りつつ、事業活動の場を広く海外にも求めていくべきこと
(ロ) その際の海外投資は、投資先国の経済発展段階に見合つた秩序あるものであり、投資受入国の経済発展に寄与する効果を持つものであるべきこと
という方向が与えられている。
(2) 政府としては、この意見具申の基本方向に沿いつつ、その具体策を検討しているところであるが、当面は、
(イ) 海外貿易開発協会に本年度から創設された中小企業海外投資協力事業の拡充
(ロ) 政府系金融機関による中小企業の海外投資に対する助成の拡充
(ハ) 日本商工会議所、ジエトロ等を通ずる中小企業への海外情報提供事業の拡充などにより、中小企業の海外投資における障害を解消するとともに、投資受入国の経済発展に寄与するよう指導してまいりたい。

〔別表 一〕 1/2
〔別表 一〕 2/2

〔別表 二〕

〔別表 三〕