質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質七一第八号
  昭和四十八年七月二十四日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員峯山昭範君提出工場排水の規制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員峯山昭範君提出工場排水の規制に関する質問に対する答弁書

一について

 工場排水の規制については、水質汚濁防止法に基づき設定される排水基準の遵守を強制することにより行われているが、具体的には、特定施設の設置及び特定施設の構造等の変更をするに当たつては、あらかじめ汚水等の処理方法等について、都道府県知事に届出を行わせ、事前に排水の水質が排水基準に適合し得るものであるかどうかを審査し、排水基準に適合しないと認められるときは、都道府県知事は特定施設の設置又はその構造等の変更に関する計画の変更又は廃止を命ずることができることとされている。
 また、特定施設の設置後における排水基準の遵守については、都道府県の職員が必要に応じ工場・事業場に対する立入検査を実施し、排水基準違反者に対しては、罰則の適用があるほか、排水基準に違反するおそれがある場合においても、特定施設の使用の一時停止、排出水の排出の一時停止、汚水の処理方法の改善等を命ずることができることとされている。
 政府としては、これらの水質汚濁防止法の規定の適切な運用等により、排水規制に努めているところである。

二について

 赤潮や湖沼の富栄養化の要因物質とされている窒素及び燐については、窒素及び燐が赤潮の発生や富栄養化の進行にどのように関与するのか科学的に十分に解明されていないこと等もあつて、現在、排水規制の対象としていないが、窒素及び燐による水質汚濁防止対策を検討するため、所要の調査研究を推進しているところである。
 このほか未規制項目としてはPCB、温排水、アンチモン、ABS等があるが、このうちPCBについては既に暫定的指導指針を設定しており、工場排水水質の測定方法の確立をまつて可及的速やかに水質汚濁防止法に基づく規制対象とすることとしている。
 また、温排水、アンチモン、ABSについては、それらの環境に及ぼす影響等について調査を実施しており、その結果をまつて可及的速やかに排水規制の対象とすることとしている。

三について

(1) 企業の水処理装置の設置状況及び稼動状況については、特定施設の設置、その構造等の変更の届出及び工場・事業場に対する立入検査等により都道府県において、は握しているところであるが、各工場・事業場において必ずしも水処理装置の適正な運転管理がなされていないことも考えられる。
 このため、政府としては、排水基準の遵守状況についての監視について、都道府県に対し、工場・事業場に対する立入検査及び排水水質の測定機器の整備に要する経費につき、所要の助成を行うとともに測定技術者の研修を行う等監視測定体制の整備拡充に努めているところである。
(2) 都道府県知事は、水質汚濁防止法の規定により、特定施設の設置の届出があつた場合には、特定施設の構造、特定施設から排出される水の汚染状況、汚水等の処理の方法等からみて排水が排水基準に適合するかどうかを総合的に審査することとしている。
 その審査の結果、排水基準に適合しない排水を排出すると認めるときは、特定施設の使用の方法、汚水等の処理の方法等に関する計画を変更あるいは廃止させることにより排水基準を遵守させているところであり、政府としても同法の厳正な運用を図るよう都道府県知事を指導しているところである。