質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質七一第三号
  昭和四十八年二月十三日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出当面する沖繩の諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員喜屋武眞榮君提出当面する沖繩の諸問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 駐とん地には、その地に居住することを義務づけられている隊員及び勤務のため特にその地に居住することを命ぜられた隊員が居住しているが(自衛隊法第五十五条、自衛隊法施行規則第三章第五節)、これらの隊員については、自衛隊法上、駐とん地が当該隊員の公私にわたる全生活の本拠とされていることは明らかであるから、駐とん地に居住する隊員の住所は、当該駐とん地にあるものと解すべきである。

一の2について

 米軍施設区域は、従来から政府が述べているとおり、治外法権区域ではない。
 一方、およそ市町村長は、常に住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行なわれるように努める義務がある。
 いわゆる立入調査権については、それを認めるにあたつては、法律に明確な根拠を設けなければならないことはいうまでもないところであるが、住民基本台帳法では、そのような意味の立入調査権をそもそも認めていない。この点は、ひとり「施設区域」に限らず、一般住民の管理する施設についても認められていないのであるから、立入調査ができないから住所を定めたかどうかが確認できないとし、それを理由に市町村長の記録義務の発生を否定することは、憲法及び住民基本台帳法の規定を無視したものといわざるを得ない。

一の3について

 政府は、自衛隊が憲法に違反するとは、考えていない。
 住民基本台帳は、市町村において住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関するすべての行政の基礎となるものであり、そのため、住民に対しては、住民としての地位の変更に関する届出を正確に行なうよう法的に義務づけられ、また、市町村長は、常に住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録を行なう責務を有するとされているので、いやしくも住民たる要件をそなえている者に対して記録を拒むことは、理由のいかんを問わず、許されない。

一の4について

 沖繩県に自衛隊を配備するのは、わが国の一つの県である沖繩県をわが国が自らの手で防衛する態勢をとるとともに、百万の沖繩県民のために災害派遣その他の民生協力を行なうためである。
 沖繩県が過ぐる大戦において筆舌に尽しがたい惨禍を被り、また戦後も二十七年間にわたつて米国の施政下におかれた難境については深く理解しており、県民の一部は戦争につながるものを一切否定する気持のあまり、自衛隊についても不安を感じていることは承知しているが、自衛隊はあくまで戦争を防止し、平和を維持することを目的とし、専守防衛に徹するものである。また、わが国の防衛力は自衛のため必要最小限度のものであるから、国際緊張の緩和によつて直接左右されるものではなく、したがつて、沖繩県への自衛隊の配備を中止するという考えはない。

二の1及び2について

 沖繩県における米軍施設・区域の整理・統合については、安保条約の目的に合致し日米双方に受諾可能な調整を図る旨のサン・クレメンテにおける日米両首脳間の合意があり、また、過日の第十四回日米安保協議委員会においても、施設・区域の整理・統合につき日米間で検討、討議を進めることが合意された。
 このような施設・区域の整理・統合の第一歩として、前述の日米安保協議委員会において、那覇海軍航空施設(那覇空港の共同使用部分を含む)及び那覇空軍・海軍補助施設の返還並びに牧港住宅地区の一部返還が合意されたが、政府としては、沖繩県における米軍施設・区域の整理・統合が沖繩県民の強い要望であることも踏まえ、また、特に新全国総合開発計画の沖繩編及び沖繩振興開発計画においても施設・区域の整理・統合の必要性が強調されていることにもかんがみ、今後とも努力を傾ける所存である。

二の3について

 第二次大戦中旧日本軍により接収された土地の未払い地代については、その実情を把握することにつとめることとしたい。

二の4について

 いわゆる所有者不明土地については、沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律第六十二条に基づき、沖繩法令の規定による所有者不明土地で、この法律の施行の際琉球政府又は沖繩の市町村が管理しているものは、当分の間、従前の例に準じ、沖繩県又は当該所有者不明土地の所在する市町村が管理することとしているものであるが、この措置は、私有財産を保護する見地からとられたものであり、土地所有者の判明次第ただちに返還することとし、この間暫定的に県又は市町村が管理しているものである。
 沖繩県における国土調査法に基づく地籍調査は、昭和四十七年度末において、沖繩県全体の五十九パーセントが終了する予定である。

三の1について

 基地跡の利用計画については、総合的な土地利用の観点に立つて配慮されるべき事がらであり学校用地のみに限定される問題ではないが、特に大規模な学校で教育上いろいろ問題を生じうるような場合における分離新設とか、今後の児童生徒の増加に伴う新設校の設置等に関連し、学校用地としての利用についても十分検討して参りたい。

三の2の(1)について

 地方公共団体が沖繩振興開発計画に基づく事業で公共の用に供する施設に関するものを実施するため必要があるときは、沖繩振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)第九条に基づく政令により国有財産を無償又は時価より低い価格で譲渡し、又は貸し付けることができることを定めることは可能である。

三の2の(2)について

 那覇市与儀ガソリンタンク跡地の国有地を小学校用地として利用するかどうかは、他の公的需要との関連もあり、現在検討中であるので、その結論を待つて措置して参りたい。

三の2の(3)について

 本土において戦災都市の学校用地として国有財産を無償譲渡した例としては、旧軍港市転換法(昭和二十五年法律第二百二十号)及び広島平和記念都市建設法(昭和二十四年法律第二百十九号)によるものがある。
 沖繩県については、そのおかれて来た特殊事情にかんがみ、那覇市に限らず沖繩県全土を対象とする沖繩振興開発特別措置法が制定されており、同法第九条に基づく政令により振興開発計画に基づく事業で公共の用に供する施設に関するものを実施するため必要があるときは、国有財産の無償譲渡等ができることとなつているので、目下検討を進めているところである。

三の2の(4)ついて

 返還された基地内に存在する国有財産については、当該財産の規模、立地条件等を勘案し、その最も有効な利用を図つてゆく所存であるが、与儀ガソリンタンク跡地内の国有地についても、この趣旨に沿つて慎重に検討いたしたい。

三の2の(5)について

 那覇市の土地事情は、国の公用地も確保しがたい情況にあるので、与儀ガソリンタンク跡地内の国有地の利用計画については、なお、関係方面と十分に協議調整を図つたうえで、決定することといたしたい。

四の1の(1)について

 四八年度予算における沖繩県の学校建築単価については、地方超過負担の解消と物価上昇による建築経費の増加に対処するため、対前年度一〇・一パーセント増となつている。
 なお、予算執行にあたつては、沖繩県の離島の多い実情等その特殊性に配意して、きめの細かい配慮を行なつて参りたい。

四の1の(2)について

 高等学校危険建物、幼稚園園舎の建築費に対する国庫補助率については、本土の場合三分の一であるが、沖繩県については三分の二としており、本土において国の補助対象としていない高等学校新増築費についても、沖繩県の場合には三分の二の国庫補助を行なう等、沖繩県の特殊性にかんがみ、特に配慮を行なつているところである。

四の2の(1)及び(3)について

 児童生徒急増市町村公立小中学校施設特別整備事業費補助金は、次の要件を備えた児童生徒の急増する市町村に限り、その急増する児童生徒を収容するため必要となる学校用地購入費について一定額を補助するものである。
 児童生徒急増市町村要件
  過去三か年の児童生徒の増加が小学校にあつては一〇パーセント以上で、かつ、五〇〇人(中学校二五〇人)以上であること、又は五パーセント以上で、かつ、一、〇〇〇人(中学校五〇〇人)以上であること。
 沖繩県においてこの要件に該当する市町村は浦添市一市であるが、沖繩県の場合についてのみ右の要件の例外措置を設けることは考えていない。
 なお、那覇市の場合は小学校の三か年の増加率は二・二パーセントであり、中学校の場合は二・七パーセント減少している実状にある。

四の2の(2)について

 提供施設にかかる代替借用校地を使用しており、これを購入したいという市町村については、昭和四十七年度からその購入費に関し計画的な助成を行なうこととして二分の一の国庫補助を行なつており、昭和四十八年度予算では六千五百万円を計上している。

五の1について

 社会教育振興のため、市町村の社会教育主事の専門性を深め、その待遇を改善することについては今後とも検討を加えて参りたい。

五の2について

 昭和三十四年に社会教育法が改正され、社会教育主事の設置が人口一万人以上の市町村に義務づけられたことに伴い、昭和三十四年度の普通交付税の算定において、人口三万人以上の市町村に一名の社会教育主事を算入し、その後段階的に算入市町村を拡大し、昭和三十七年度からは概ね人口一万人以上の市町村に算入しているところである。
 なお、沖繩県についても昭和四十七年度の普通交付税から本土と同様に措置しているところである。

六の1について

 公立少年自然の家の設置数は、目下建設中のものを含め二十八か所であり、その都道府県別設置数は左のとおりである。



六の2について

 少年自然の家の建設地については、それぞれの設置者が、少年自然の家の目的に即して適地を選定している。

六の3について

 沖繩県立少年自然の家建設事業に対する国庫補助金として、昭和四十八年度予算に四千万円を計上している。着工は、沖繩県の計画では、六月頃の予定となつている。

七について

 老人の保健、福祉、勤労、休養等を目的とする総合的な施設の建設については、沖繩振興開発計画において積極的に検討することとされているところであるが、その設置場所の決定、当該総合的施設の具体的機能(施設種類)等については、まず先行的に沖繩県の構想が必要と考えており、沖繩県側の意向がかたまつた後、それを土台として検討していきたいと考えているところである。
 なお、現在のところこの施設を国立とする考えはない。

八の1について

 異常気象時における船舶の避難のため、避難に適する水域を有する港湾を適当な位置に配置する必要がある。
 沖繩県においては、港湾法第二条第八項に基づく避難港として、安護の浦、船浮の二港があるが、そのほかにも船舶の避難のため、必要なものがあれば実情に即して善処することとしたい。
 また、避難港以外の港湾についても、避難船の実情を勘案して、必要な整備を図る考えであり、沖繩国際海洋博覧会に関連しては、那覇港、運天港、渡久地新港、宮古港、石垣港の各港について安全が確保できるよう整備を図ることとしている。

八の2について

 沖繩国際海洋博覧会の会期中は、旅客船等が沖繩県に多数寄港することが予測され、これらに対する台風避難対策を講ずることは重要な問題である。
 したがつて、同博覧会の会場、港湾等の整備計画及び旅客輸送計画の策定にあたつては、この問題を十分考慮に入れるとともに、整備の進捗にあわせて、関係者に対する気象警報等の伝達経路を確立し、あるいは海難防止指導を行ない、さらに必要に応じ訓練を実施する等、台風時における安全対策については、万全の措置を講ずることとしたい。

八の3について

 沖繩県における自然的、地理的条件を勘案すれば、異常気象時に船舶が避泊できる港湾の整備は重要である。運輸省では、復帰前から現在に至るまで数回にわたり係官を現地に派遣し、港湾調査を行なわせているが、その際、船舶の避難泊地については、特に力点をおいて所要の調査を実施してきたところである。
 これに基づいて安護の浦港及び船浮港の両港については、避難港としての政令指定をすでに終つているが、異常気象時においては、これら避難港のほか、一般の港湾の防波堤内泊地も附近を航行中の船舶の避難泊地として機能するものであるので、一般の港湾整備にあたつては、この点についても十分配慮が行なわれるよう今後とも港湾管理者を指導していく所存であり、必要な事業については具体的な計画が策定されるのをまつて、順次事業実施に移したいと考えている。

八の4について

 屋我地湾は、現在重要港湾運天港の港湾区域となつており、その整備については運天港の港湾整備事業として施行されることとなる。
 当該湾を避難泊地として利用する計画については、港湾管理者である沖繩県において検討中であり、運輸省としては、避泊の実績もあることであり、具体的な利用計画の策定をまつて、関係方面とも協議のうえ処置したい考えである。

九の一について

 本土の国立らい療養所と沖繩愛楽園の患者数に対する職員数には、較差があるが、昭和四十八年度予算において沖繩施設の強化のため六人の増員を予定しており、今後とも較差是正のため増員に努力して参りたい。

九の2について

 国立らい療養所の整備については、老朽化した不自由者棟、病棟等を中心に整備を進めているところであり、沖繩二園についても昭和四十七年度において不自由者棟の一部の整備を行なつたところであるが、今後とも国立らい療養所全体の整備の均衡を考慮しながら実態に応じた整備を推進したい。

九の3について

 沖繩県居住の身体障害者に対する障害福祉年金については、沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律に基づき、沖繩の立法による年金の支給がそのまま本土法に承継されているところである。
 福祉年金が、身体障害者等の現実の生活に着目して支給される趣旨のものであるところから、これをすでに相当の年月を経過している既往について遡及して給付することは措置しなかつたものである。

一〇について

 昭和四十七年度砂糖に適用される沖繩県のさとうきびの最低生産者価格については、砂糖の価格安定等に関する法律に基づき、農業パリテイ指数に基づいて算定される価格を基準として、さとうきびの生産費、物価その他の経済事情を十分参酌して定めているところであるが、新たに積込費が製糖会社の負担となつたこと等により、農家の実質手取額は大幅に引き上げられており、また、決定後経済事情等に格別の変動がないので、これを改訂することは考えていない。
 なお、沖繩県においてさとうきびが占める地位の重要性にかんがみ、今後ともその振興を図るため、ご指摘の事情も考慮して、土地基盤整備をはじめ各般の施策を強化して参る所存である。