質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一九号

物価等政府の経済財政運営に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年八月二十三日

鈴木 一弘      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   物価等政府の経済財政運営に関する質問主意書

一、昭和四十八年度のわが国経済は、景気が過熱し、卸売物価、消費者物価がともに、対前年同月比一〇パーセントを超えて上昇し、しかも月を逐つて上昇率が高まる傾向にある。七月の卸売物価は、一年前に比べて一五・七パーセントもの騰貴となつている。このように最近の物価動向は、上昇率においても長期上昇持続の点においても、戦後の混乱期を除いては経験したことのない異常高騰の事態が生じている。
 政府は、四月以来三回にわたる公定歩合の引き上げ、公共事業費関係予算の年度内調整等の対策を実施したが、所期の効果が上らないばかりか、事態情勢はむしろ解決困難の度を加えている。
 さらに四十八年度に入つてからは、国際収支の動向も従来とは様変りの状況で、今後の動向が大いに注目されている。
 以上のようにインフレの昂進を中心に経済運営が困難性を増している現状を、政府はどのように把握し、これにどう対処するのか。政府の見解と対策を明らかにされたい。

二、経済見通しの改定と経済運営の態度変更について

1 昭和四十八年度の政府経済見通しは、物価を中心に主要経済指標に大きな狂いが生じ、当年度の政府の政策運用の指標としての意味を失つてしまつている。
 また、経済見通しの指標を念頭において運用されることになつていた経済運営の基本的態度にもとうぜん変更が加えられるべきである。
 政府の施策を国民に知らせ、国民の理解と協力を得ることが、民主主義国家としての在り方でなければならない。その点からも、経済見通しの改定を早急に行うべきであると考えるが、政府の考えを伺いたい。
2 百歩譲つて経済見通しの改定が例年通りに次年度予算編成時まで延びるようであるならば、主要項目についての暫定改定指数、当面している緊急の経済運営課題を明らかにすることが、国民への義務からしても次善の策として必要と考えるがどうか。
3(1) 政府の当初見通しとの乖離が著しく、今後の経済運営のキーポイントとなつている物価について政府はどういう見通しをもつているか。当初見通しと現状の乖離の原因並びに今後の対策を具体的に述べられたい。
(2) さらに田中総理の「秋には物価を安定させる」との約束は再確認できるかどうか。

三、喫緊を要する物価安定対策について

1 政府は公定歩合を引き上げ、総需要を抑制して、物価の安定を図ろうとしてきたが、複雑な要因がからまり、その効果が上つていない。
(1) 金融引締めの効果をどう判断しているか。
(2) さらに今後の物価安定策は従来のまま行うのか。
(3) 新規施策を行うのか。行うとしたらその内容を明らかにされたい。
2 景気過熱の原因の一つが、四十七年度大型補正予算、四十八年度超大型予算にあつたことは間違いないにもかかわらず、政府はこれまで公共事業費の年度内調整という微温的手段に終始してきた。この際、公共事業費の削減か、翌年度繰越しによつて、財政面から引締め政策に資するべきだと思うが政府の所信を質したい。
3 物価の異常高騰からみて、国鉄運賃値上げは中止するとともに、私鉄運賃、航空運賃、電力料金等現在値上げ申請の出されているものを凍結するとともに、公正取引委員会の機能を活用して、不公正な協定または協定と推定されるような値上げの取締りを行い、総力を挙げて物価安定に取組むべきであると思うが、政府の決意のほどを伺いたい。
4 鉄鋼、塩化ビニール等にみられるように、品不足現象によつて値上がりするものが増える傾向にある。一部には建設工事をインフレによつて中止せざるを得ないといつた状況もみられる。こうした品不足経済にどう対処するのか示されたい。
5 なお、先に通産省が調査した四十三品目の需給状況を明らかにするとともに、実効ある対処策を明らかにされたい。

四、財政運営について

1(1) 昭和四十八年度の租税収入は非常に好調で、年度内の自然増収は史上最高の一兆円を超えるものと思われるが、政府の見通しを伺いたい。
(2) また、年度内自然増収の使い方についてであるが、政府は巨額な自然増収で基金制度を設け留保するとの構想が伝えられているが、そうした措置をするのかどうか。
(3) 税の取り過ぎとインフレ被害の観点からは所得税の年度内減税を行うべきだと考えるが、政府の意思はどうか。
2 四十八年度公共事業費の上期契約率を四九・三パーセントに落したにもかかわらず、その財源である国債は逆に上期に集中して発行することにしているほか、一兆円もの年度内自然増収が予想されるのに国債の全額発行を行うことにしていると伝えられる。しかし、このことは名は建設国債でも、その運用実態は異なつた目的を指向していることになる。
 四十八年度国債の性格ならびに運用に変更を加える方針なのか否か伺いたい。
3 インフレの昂進に伴つて、社会保障関係費、とくに生活扶助費、各種更生援護施設や収容施設等々への費用の単価が実質的に減価し、当初予算の国の施策が実行でき難いことは明らかなので、福祉重視の観点からも追加補正予算を計上すべきであると考えるが、政府の対策を質したい。
4 ならびに、地方公共団体の事業も、物価高騰のため中止、遅延をやむなくしているものもでている。政府は、補助単価の引き上げ、交付税率の引き上げを早々考え実施すべきと思うがどうか。

  右質問する。