質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一五号

中小企業の事業転換に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年八月十日

峯山 昭範      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   中小企業の事業転換に関する質問主意書

 一昨年五月の産業構造審議会の中間答申では、知識集約型の産業構造を新しい産業構造ビジョンとして設定しているが、昨年八月の中小企業政策審議会の意見具申では、中小企業の知識集約化をすすめる際には、生産品種の転換、高級化、品種の多角化等いわば「転換」による対応が有効な方策であるとしている。この中小企業の事業転換は、二度の通貨調整を契機に産業構造の知識集約化が一層強く要請されている今日では急務であると考える。
 しかしながら、転換実施企業が経営指標のうえで種々の効果をあげているにもかかわらず、多くの産地業種をはじめとする低成長業種に属する中小企業には転換の必要性を痛感しながらも転換に踏み切れずにいるものが多い。その障害要因としては、販路、技術、労働力、資金等の問題があげられる。したがつて、国などが金融面、指導面で適切な配慮を加え、中小企業の事業転換が円滑に進められる必要があると考える。
 よつて次の諸点について政府の見解を明らかにされたい。

一、個別企業の事業転換について

 中小企業近代化促進法による業種別の近代化計画または構造改善の一環として行なわれる中小企業の事業転換ならびに国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置法による事業転換については、中小企業金融公庫と国民金融公庫から特別の融資ならびに税制上の特別措置がとられている。しかしながら、発展途上国と競合するような業種の中小企業などは、とくに、これだけの施策では必ずしも十分であるといえない実情にある。
 よつて次の諸点について政府の回答を求める。
1 中小企業金融公庫ならびに国民金融公庫の事業転換貸付枠ならびに年次別、業種別貸付件数および金額実績について。
2 中小企業金融公庫ならびに国民金融公庫の事業転換貸付金利「七・〇%」を更に引き下げること。
3 中小企業金融公庫ならびに国民金融公庫の事業転換貸付の運用による貸出限度額の引き上げと、貸付期間の延長をはかること。
4 転換を目的とした構造改善準備金を積み立てる場合の準備率を更に引き上げること。

二、事業転換合同事業について

 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置法に基づく転換計画の承認を受けた中小企業が、合併または出資形態により事業転換をするため、工場等を設置する場合には、中小企業振興事業団より低利かつ長期の融資が行なわれているが、その実績は極めて少ない現状である。
 よつて次の諸点について政府の回答を求める。
1 中小企業振興事業団の事業転換合同事業に対する融資枠および業種別貸付件数と金額実績について。
2 中小企業振興事業団の事業転換合同事業に対する融資条件の緩和をはかること。
3 国または都道府県による既存設備の買い上げについて。

三、事業転換追跡調査について

 中小企業の知識集約化のビジョンを提示するためにも、また中小企業の事業転換の実態を把握し、適切な施策を講じていくために事業転換追跡調査の果たす役割は非常に大きいといえよう。国においては、本年度から一〇〇〇万円で同調査を行なうと聞くが、その具体的な調査方法について伺いたい。

四、労務対策について

 中小企業の事業転換によつて離職を余儀なくされた者については、職業指導、職業紹介の実施、職業転換給付金制度の活用、中高年令者等求職手帳の有効期間の延長等を講じているが必ずしも離職者の早期再就職は万全といえない現状である。よつて中小企業の事業転換によつて離職を余儀なくされた離職者に対して政府が具体的にとつた労務対策を明示するとともに炭鉱離職者臨時措置法等に準じて国は就職促進手当をこれら離職者に支給すべきであると考えるがどうか。

  右質問する。