質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一三号

合成洗剤による健康被害及び環境汚染等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年七月二十三日

峯山 昭範      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   合成洗剤による健康被害及び環境汚染等に関する質問主意書

 最近の二〇年間に電気洗濯機と合成繊維のめざましい普及とあいまつて、従来家庭で使用されていた洗剤としての石鹸は、便利で性能度の高い合成洗剤にとつてかえられ、現在では日常生活に欠かせないものとしてすべての家庭のなかに入りこんでしまつている。
 しかしながら、この新しい合成洗剤は家庭で使用しやすい反面、これの有毒性等については従来一部の学者等により指摘されてきているにもかかわらず、製造業者はこれの安全性を極力宣伝し、人の健康に対する毒性、被害、主婦の手あれ等の皮ふ炎、肝臓障害、催奇形性、発がん補助作用等の事実に対しては耳をかたむけることなく今日においても大量に生産を続けているところである。
 一方行政当局である厚生省も合成洗剤の有毒性のおそれを認めながらもこの一〇年間以上にわたり殆んど合成洗剤規制の努力を怠り、今日に至つている。
 しかしながら、最近の合成洗剤の有毒性に対する世間の批判はようやくきびしくなり、三重大学三上教授により催奇性が、名古屋市立大学佐藤寿昌教授からは発がん補助作用のおそれが指摘され、また柳沢文正氏等合成洗剤研究家として知られている学者からもいろいろその有毒性が強く主張されているところである。以上のほか、最近では家庭の主婦、マスコミ方面でもその有毒性が大きくとりあげられ、世間でもようやく洗剤の安全性に対し強い不安を抱くようになつてきたところである。
 厚生省は、去る昭和四十八年四月二十八日に至りようやく厚生省告示第九十八号で台所用洗剤の成分規格及び使用基準を定めたところである。更に衣料用合成洗剤の主成分トリポリン酸ソーダによる河川、地下水等の汚染も甚だしく、新たに都市周辺或は家庭下水等の大量に流入する琵琶湖、瀬戸内海等においてはわが国の下水道処理の不完全とあいまつてますます環境汚染に拍車をかけているところである。
 最近にいたつて、消費生活関係諸法によつて、洗剤の製造、販売、使用については、規制、指導が徐々に強化されつつあるが、かならずしも十分ではなく、人の健康に対する毒性、環境の汚染についての国民の不安は高まつている。
 政府は以上の諸点を明確に認識して国民の不安を解消するための対策を早急に実施すべきである。
 よつて次の諸点について政府の見解を明らかにされたい。

一、合成洗剤の安全性について

 合成洗剤は昭和二十五年アメリカのオロナイト社から原料を輸入され、翌二十六年石油系洗剤が製造された。以後各社による研究がはじめられ、昭和三十四年になつて一せいに発売され、電気洗濯機の普及により新製洗剤は爆発的な生産の伸びを続け今日に至つている。しかし、洗剤の安全性にはいろいろ疑問が指摘されている。よつて次の諸点について政府の回答を求める。
(1) 合成洗剤の種類とその成分組成及び洗浄効果
(2) 製造企業別、種類別製造量、年間販売量、使用量の年次別推移
(3) 洗剤による健康被害(皮ふ炎、腎臓、肝臓障害、発がん性、催奇形性等)の事例とその発生状況
(4) 洗剤の有害、有毒性に関する政府の研究体制とその研究結果
(5) 合成洗剤に対する現在の法的規制体系及びその製造、販売、使用規制の現状
(6) 洗剤の安全性確保、法規制体系の整備及び監視、検査についての今後の政府の方針
(7) 合成洗剤による健康被害に対する諸学説
(8) 海外における合成洗剤規制の現状

二、合成洗剤による環境汚染等について

 多摩川等大都市周辺の河川の下流或は住宅団地等により急激に人口集中をきたした地域の周辺の河川では発泡が目立つている。これは合成洗剤の普及につれてそれが新たな環境汚染の原因となつている事実を立証しているものである。下水道の第三次処理が殆んど実施されていない我が国の現状では合成洗剤の使用量に応じてわが国の河川はますます汚染されてゆくことは明白である。その結果、汚染も河川のみに止まらず、湖沼、地下水、内海等も洗剤中のリン酸塩による富栄養化がますます進行し、井戸水、上水道等の汚染の防止は不可能となつてくる。魚介類等に対する影響はもとより人間の生活もますます脅される結果となるであろう。よつて次の諸点について政府の回答を求める。
(1) 河川、湖沼、内海、その他の地表水、及び地下水の合成洗剤による汚染の実態
(2) 上水道源に対する影響の有無とその対策
(3) 下水道処理能力の実情と将来に対する処理対策
(4) 河川等における魚介類に対する影響の有無

三、合成洗剤による環境汚染に対して速効ある防止対策としては、現在の合成洗剤の家庭使用量を極力おさえるとともに、リン酸塩を成分としない無公害、無毒の新製品を早急に開発するか、従来の石鹸使用を推めることが必要であり、併せて下水道第三次処理を推進する必要があると思うが政府はどのように考えているか。

  右質問する。