質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第一一号

さとうきび生産者価格等及びハンセン氏病対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年七月十九日

喜屋武 眞榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   さとうきび生産者価格等及びハンセン氏病対策に関する質問主意書

一、さとうきび生産者価格の引き上げ等について

 沖縄におけるさとうきび作は、沖縄農業の重要かつ基幹作目として永年農業経済の支柱となつてきた。
 しかしながら、近年、物価や賃金は急速な勢いで高騰し続けているのに対し、さとうきび生産者価格は低迷し、生産費を大幅に割るに至り、生産農家は生産意欲を失い、ついに収穫を放棄する農家が出現するほどである。
 このように再生産に結びつかない低価な原料価格は、生産農家の経営を破綻に追いこむばかりか、ますます沖縄農業の将来を不安定にするものである。
1 生産農家の再三の要請にもかかわらず、前期は六、九五〇円という低価を決定し、収穫放棄(約四万坪に及ぶ)、再生産中止等に陥し入れた事態をどう考えるか。
2 海洋博及びその関連事業が沖縄の産業に与える影響は大きく、なかでも農業は労働力流出、土地買占め等により壊滅的な打撃を受けつつある。
 そこで、海洋博事業計画の中に農業、とりわけ、きび作の保護策を位置づけ実施すべきではないか。
3 糖価安定法によれば、最低生産者価格は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ、又は生ずるおそれのある場合は改定することになつている。今日の沖縄が直面している異常な物価、労賃の高騰、土地買い占め、労働力の流出など農業をとりまく経済事情は「著しい変動」に該当しないのかどうか。また、ここでいう物価その他の「経済事情に著しい変動」とはどういう事態をさすのか。具体的に事例をあげて説明されたい。
4 生産者価格の算出について、現在採用しているパリティ指数方式ではこのような経済の変動、再生産の確保、農業所得の向上に効果をなさず、農業従事者と他産業従事者との所得格差を一そう大きくするばかりである。真にさとうきび作の保護育成をはかるためには、速やかに法改正を行ない、その価格算出の方式を抜本的に改めなければならない。
 よつて、沖縄の基幹産業たるさとうきびも米価なみに生産費及び所得補償方式に切り換えるべきと考えるがどうか。
5 昭和四十八年さとうきび生産者最低価格については、沖縄県農協中央会・県議会・県当局は一致して「一トン当り一万三千円以上」を要求している。政府の所見を伺いたい。
6 海洋博及びその関連事業によつて農村労働力が吸収されており、きび作の機械化を急がなければならない。
 このため沖縄県農協中央会等は収穫機導入に必要な資金補助を要請しており、これは早急に実現をはかるべきと考えるが政府の所見を伺いたい。
7 さとうきび生産者価格の取り決めにあたつては、農林大臣の諮問機関として、生産者代表を含めた「糖価審議会」を設置し、生産農家の要求を反映する必要があると思うがどうか。

二、ハンセン氏病の医療改善について

 沖縄におけるハンセン氏病対策については既にたびたび質してきたが、その改善のあとが見られないのは大変遺憾である。
 沖縄愛楽園と宮古南静園の二園は、戦後二十七年にわたる民生軽視の米国軍事優先統治下にあつて、さらに医療面は極度な貧困をきたし、沖縄ハンセン氏病患者は言語に絶する犠牲を強いられてきたのである。
 ここに、本問題の特殊性があるのであり本土と沖縄の格差は早急に是正されなければならない。
1 本土各園における医師、看護婦を含めた職員数は入所者二・五人に対し一人、沖縄愛楽園においては、入所者五・三人に対し一人の状況である。
 また類似園の大島青松園では入所者五四〇人に対し職員一八二人である。
 愛楽園は入所者六八〇人なので青松園と同等の職員数とするには約一〇〇人の増員が必要である。
(1) 六八〇名の入所者がいる沖縄愛楽園は、外科医二人、内科医、基本科医、眼科医、薬剤師、皮膚科医各一人である。宮古南静園にいたつては医師が僅か二人という現状である。これらの医師数の実態をどう考えるか。不安のない医療体制を確保するために緊急に医師の増員を行なうべきと思うがどうか。
(2) 一般職種職員数は、沖縄二園とも本土類似園の約半数である。例えば、行二職についてみると青松園一〇一人に対し愛楽園は四七人である。
 職員数の不足は患者に対して無理な作業労働を強いることとなるので、早急に増員措置を要すると思うがどうか。
(3) 看護婦不足は入所者の治療生活に不安を与えている。例えば愛楽園では、もつとも看護婦を必要とする不自由棟、老人ホームに一人も配置されていない。
 早急に看護婦の増員をはかるべきと思うがどうか。
2 施設面においても本土園との格差ははなはだしく、既に老窮化している。
 沖縄二園の抜本的な施設改善のために特別予算措置を計画的に講ずる必要があると考えるがどうか。なお愛楽園の重病棟改築の見通しはあるか。
3 入所者の作業賞与金についても、沖縄の場合本土に比べて約一割安く支払われているといわれている。その理由は何か。また昭和四十七年度の愛楽園入所者に対する作業賞与金の基準算出法の根拠は何か。本土の場合と比較して明らかにされたい。
4 厚生省医務局の「沖縄分室」は人事、予算等の面で十分でないため現地に不満が多い。そこで沖縄の置かれた地理的状況及び医療、施設、患者の状況等を考慮し、一ブロックなみに「沖縄地方医務局」に昇格させる必要があると考えるがどうか。
 さし当り、現在の分室の機能強化の具体案を示されたい。

  右質問する。