質問主意書

第71回国会(特別会)

質問主意書


質問第四号

国内非鉄金属資源の確保等の鉱業政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和四十八年二月八日

田渕 哲也      


       参議院議長 河野 謙三 殿



   国内非鉄金属資源の確保等の鉱業政策に関する質問主意書

 本年一月二十六日、わが国の大手鉱山企業が四月一日をメドとして五鉱山を分離し別会社とし、二鉱山を閉山する旨の経営合理化方針を発表した。
 硫黄を含めたわが国の非鉄金属鉱山数は、昭和四十一年度の三一八が昭和四十七年度には一七五に激減し、特に銅、硫黄、硫化鉱鉱山の閉山が多い。閉山の理由は、鉱量減少、品位低下、作業条件の悪化、人件費上昇などの一般的理由と、銅の場合は、円切上げによる銅価の低水準化、公害費負担の増加、硫化鉱の価格低下と需要減等が列挙できるが、今回の五鉱山の別会社分離の提案のうちには、豊羽、釈迦内二鉱山のように、わが国の富鉱優良鉱山を含んでいる点は、きわめて重大である。非鉄金属資源の海外依存度が高く、かつ今後の需要増大も必至であるわが国にとつて、国内資源の安定供給の維持は、海外よりの買鉱交渉力の維持強化、並びに海外資源開発協力にのぞむ技術力維持のために欠くべからざる基本条件である。
 今回の上述二鉱山問題は、このような基本条件の存続をおびやかすおそれなしとしない。よつて、政府が今後とも、非鉄金属資源の合理的価格による安定供給の確保を、鉱業政策の目標として堅持する方針ならば、今後の施策の次の諸点について、政府の見解を明示されたい。

一、国内鉱山対策について

 国内資源は、供給安定度が最も高い供給源であつて、つねに一定量の供給を確保しうる利点がある。ただし、現在の国内産出価格は、LME(ロンドン金属取引所)価格を上廻つていて国際競争力は絶対的に弱い。よつて、一方において、乱高下をくりかえしているLME価格を、国際的な安定価格形成機構として再編していく国際協力が必要であるが、他方において、わが国内では、高品位豊鉱の鉱山を開発して低品位貧鉱と代えていく産業努力により、コスト低下を促進していく必要がある。
 よつて非鉄金属資源の国内探鉱の強化を中心として、国内鉱山のあり方につき、政府の施策を次のように強化すべきではないか。
1 全鉱山にわたり、国内探鉱長期計画(うち当面第一期の五カ年計画)を立案し、各鉱山ごとに全額国庫負担で探鉱(広域、精密並びに新鉱床)を実施すること。
2 全鉱山にわたり、鉱山ごとに企業会計のうちの独立会計として、その損益分岐点を明らかにし、これを国に報告せしめること。
3 鉱山の閉山または経営方針につき、国は行政勧告できることとすること。
4 坑内労働者に対して、石炭鉱業年金基金制度に準じて、非鉄金属鉱業年金基金制度を速かに創設して、老後の生活の安定と福祉の向上に資すること。

二、国内製錬所対策について

 国内資源の安定供給をわが国の鉱業政策の必須条件とするのであるから、国内製錬所の維持存続もこれにともなう必須条件である。ただし国内製錬所の経営は、円切上げにより輸入地金価格との競争力が低下し、さらに硫酸等の副産物収入減と公害防止費用並びに人件費の増大などの不利な条件が重加しているので、国内製錬所の今後のあり方につき、政府は今後の施策を次のように措置すべきではないか。
1 国内資源の製錬は、地域ブロックごとの共同製錬に完全移行するよう計画実施すること。
2 共同製錬に対し政府は出資して特に公害防止につとめること。共同製錬所までの国内鉱石国鉄輸送に対しては、政策割引運賃とし、輸送料金率の引上げにより、鉱山に対する国庫補助の効果を削減せざるようつとめること。
3 資源保有国に対する経済協力の一環として、現地製錬または中間地製錬の海外立地を速かに実現すること。

三、国際協力対策について

1 今後の非鉄金属国際価格は、資源保有国に対する政策的配慮をもつて、一定の安定した価格帯により、需要国側の必要量の長期買鉱体制の確立が必要である。すでに、鉛亜鉛については、国際鉛亜鉛研究会が常設されて、先進工業国十七国、発展途上国七国、共産圏国六国及び国際機関が参加して国際協力の実を挙げている。政府は、銅についても、この種の国際協力機構の創設と運営を関係諸国に積極的に提案すべきではないか。
2 政府は昭和四十七年四月より、海外鉱石引取促進のために、特例ユーザンスの制度を実施している。わが国は、米国、ソ連に次ぐ非鉄金属消費国であるから、開発途上国が多い資源保有国に対し、わが国の買鉱が重大なる影響力をもつ。
 よつて、今後とも特例ユーザンスなどによる海外鉱石引取りの円滑化、買鉱保障を最大限に活用することが望ましい。ただし、これを、単にわが国と資源保有国の二ケ国間の取引にとどめることなく、国際的な緩衝在庫制度の創設に拡大発展せしめることが、より望ましい。政府は、前項の国際協力と併行して、この新制度を関係諸国に対して、積極的に提案すべきではないか。

  右質問する。